1 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 15:59:49.74 ID:QOSCcfl40



——————ドサァッ!!



剛「っ!! ぐっ! ハァ、ハァ……! ぉ、おいっ!!」

チェイス「…………」バチッ…バチッ…

剛「ハァ、ハァ……! 嘘だろ……!! 何やってんだよっ!!?」

チェイス「…………これでいいんだ、剛」

剛「……!?」

チェイス「霧子が愛する者たちを守れるのなら…………本望だ……」

剛「っ!? ……っ……!!」



スッ……



チェイス「人間が俺にくれた……宝物だ……」

チェイス「…………俺とお前はダチではないが……」

チェイス「持っていてくれ…………燃えてしまうと……勿体ない……」

剛「……っ゛……!! ……っ゛……」

チェイス「……ッ!!」ガバッ!!

剛「うっ!? ————ッ!!!」



タッタッタッタ……!



チェイス「…………!!」バチッ! バチバチッ!



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1459061989
2 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:00:42.00 ID:QOSCcfl40


蛮野「ヘェッハッハァッ!!」

チェイス「……ヌゥン……!!」



ダンッ!! ガシィッ!!



蛮野「な!? うぐぅっ! はぁなぁせえぇぇぇ!!」

チェイス「……グッ……うぅ……!!」グググ…



バチッ! バチバチッ!!

バキバギィッ!!



蛮野「ぬうぅうああああアアアぁぁああアアァァァーーー!!!」

チェイス「ウオオオオォォォオオォーーー!!!」




チュドオオオオォォォンンッッ!!!






バチッ……バチッ……






——————パキンッ




剛「ハァッ……!! ハァ……ぁぁ……!! チェイスウウゥゥゥーーーッッ!!!!」




3 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:01:48.75 ID:QOSCcfl40



その日、一人の男が死んだ。

彼は、人間を守るために作り出された一体の機械だった。
しかし、機械故に、彼を生み出した存在や、彼自身の意思とは無関係に、人間を傷つけさせられたこともあった。
ある時は人のために、またある時は、人に牙を向く怪人のために、機械は立場を変え姿を変え、長く戦い続けた。

争い、傷つけ傷つきながら、機械は様々なものを目にし、様々なヒトに触れ、様々な心を知り、様々な事を学んだ。
それらは時に、彼自身の体や精神、或いはその両方を傷つけ、苦しみを伴う葛藤へと追い込んだ。
しかし、その体についていく傷も、目に見えない、形無き胸の痛みも、彼にとっては全てが新鮮で、尊いモノだった。


仲間を、友を守るために戦い、何度も傷を負った。誇らしかった。

車の免許を取りに行き、教官に何度か怒られた。楽しかった。

恋というものを知って、胸が切なくなった。嬉しかった。

失恋を知り、涙を流した。心地よかった。


それらは皆、人間ではない彼が、人間のような存在になった気持ちになれる、何よりも大切な【宝物】だった。

多くの宝物を手に入れた彼は、その内の形ある物2つを、最も大切な宝物に託して、この世を去った。
彼が守った宝物は、他の大勢の人達の、沢山の宝物を守っていくのだろう。


男は死んだ。この世界での彼の物語は、幕を閉じたのだ。





だが、死んだ後の彼は、どこへ向かうのだろう?



4 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:03:03.59 ID:QOSCcfl40





ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ————



チェイス「…………」パチリ

チェイス「…………」



ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ



チェイス「…………」



ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ————



チェイス「…………」ムクリ

チェイス「…………」ポチッ



ピピp


シーーーン……



チェイス「…………これが、目覚まし時計、というものか」シゲシゲ

チェイス「今は夜のようだが」

チェイス「…………なぜ俺はベッドで寝ている」

チェイス「……ここは、どこだ」チラリ

チェイス(どこかの家の一室、のようだが……どこの誰の家だ?)

チェイス(……いや、そんなことより……なぜ俺は)



チェイス「生きている……?」

5 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:04:44.84 ID:QOSCcfl40



チェイス(記憶が確かなら、俺はゴルドの攻撃でコアに致命傷を負った……)

チェイス(ボディが崩壊するまで時間もなかったので、爆発に奴を巻き込もうと、奴にしがみついて、そのまま……)

チェイス「……俺のコアは、消滅したはず……なぜだ?」

チェイス「……! 傷は——ッ!?」

チェイス(…………無い!?)


ガバッ!


チェイス「治って、いるだと……!?」

チェイス「……フッ! ハッ!」ビュンッ! シュバッ!

チェイス(体が問題無く動かせる……やはり完全に修復されている……!)

チェイス(あれほどのダメージ……メディックが居てもそう簡単に完治できるものでは無いぞ)

チェイス(そもそも、俺は自分のコアが完全に破壊された事を、感覚で理解している! 一度破壊されたコアを復活させることなど……)

チェイス(しかし……俺は現に今こうして……)

チェイス「…………とにかく、ここがどこなのか、ハッキリさせるのが先か」

チェイス(なぜ俺が生きているのかはわからないが、本当に、完全に破壊された俺のコアを復活させているのだとすると)

チェイス(俺を生かした者は、相当の科学技術を有している可能性が高い。あのクリムすらをも上回るほどの)

6 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:05:20.60 ID:QOSCcfl40


ガチャッ、ギィ……



チェイス「……廊下か。俺が居るのは、突き当り右の部屋、ということか」

チェイス(そんな科学力を持っている者が、何の目的で俺を生かしたのか……何か悪事に利用しようというのなら)

チェイス(……絶対に、思い通りにはならん)グッ

チェイス(もし善意で救ってくれたのなら……素直に礼を言おう)

チェイス「…………」スタスタ



クルッ



チェイス「…………」スッ



ギィ……パタン



チェイス「開けたら、閉める」ウン

チェイス(……! ドアに何か……?)





【 チェイスの部屋 】

7 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:06:47.50 ID:QOSCcfl40


チェイス「…………」

チェイス(名札……?)

チェイス「………………なんだこれは」

チェイス(チェイス……というのは、ほぼ間違いなく俺の事だろう。『チェイス』などと言う名前を持った者が他に居るとも思えん)

チェイス(とするとこの部屋は、予め俺のために用意してあったものということになるが……)

チェイス(一体何がしたいというのだ。俺をここへ連れてきた人間は)

チェイス「…………」テクテク

チェイス(……広めの廊下沿いに扉が1つ、2つ、3つ……俺が居た部屋を含めれば4つか)

チェイス(他人の家の部屋を勝手に開けてはならないと進之介が言っていたが、この状況ではやむを得ん。調べさせてもらうとしよう)



コンコンッ



チェイス「失礼する」



ガチャッ



チェイス「…………」



ガチャガチャッガチャッ



チェイス「……鍵がかかっていたか」

チェイス(俺の名前があった名札と同じ、木製の名札があるが、何も書かれていない……誰も使っていないということか?)

チェイス「他の部屋は……」



ガチャガチャッ



チェイス「駄目か」



ガチャガチャッ



チェイス「ここもか……」

チェイス(そうするするとここも恐らく……む?)

チェイス「ここだけ半開きになっている……鍵はかかっていないか」



キィィ……



チェイス(!! まずい!!)バタンッ

8 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:08:12.58 ID:QOSCcfl40


チェイス「…………危なかった」



チェイス「思わずノックをする前に開けるところだったな」コンコン

チェイス「失礼する」



ガチャリッ、キィィ……



チェイス「……誰もいない、か」

チェイス(中の状態は俺がいた部屋と殆ど同じだな。机とベッドとタンスと窓だけだが)

チェイス「……! ノートパソコンか」

チェイス「俺の部屋には無かったと思うが……」

チェイス「これを調べれば何か分かるかもしれんな」パカッ

チェイス「…………いや、待て」パタン

チェイス(前に進之介が言っていたな)





〜回想(特上課にて)〜




進之介「ただいまー。霧子ー、昼飯買ってきたぞ……っていないじゃん」

チェイス「霧子なら書類を届に出て行ったぞ」カチカチ

進之介「ん? おぉ、チェイス。来てた、の……かっ……!?」ガタタッ!

チェイス「今お前のノートパソコンを借りているぞ」

進之介「み、見りゃ分かるけど……!! 何してんの!?」

チェイス「人間についてより深く知りたいと思った。だからインターネットを使って情報を集めている」カチッ

チェイス「霧子が使ってもいいだろうと言っていたので、Y○HOOニュースを閲覧していたところだ」

進之介「あ、あいつそんな勝手に……」ソワソワ
9 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:09:57.09 ID:QOSCcfl40


進之介「……えっと、チェイス、その、デスクトップに置いてあるフォルダに触ったりしてない、よな……?」ソワソワ

チェイス「いや、ロイミュードの力を使わず、普通にパソコンを操作するもの初めてだったからな。良くわからず、いくつか適当にクリックしたが」

進之介「ちょっ……!! ほ、ほんとだ……沢山のウィンドウが開きっぱなしに……!?」

進之助「じゃ、じゃあフォルダを開いた先の更に先の先のフォルダとか開いたか!?」

チェイス「……? それは何という名前で登録している」

進之介「そ、それは……ぐっ……!」

進之介(しゃ……『写真』ってフォルダの中の、『その他』っていうフォルダの先の『失敗』っていう……)ヒソヒソ

チェイス「なぜ急に小声になる……? それならさっき開いたが」

進之介「嘘おぉぉおおぉ!!? すぐ手前じゃん……!!」

チェイス「手前……? この失敗写真データ集の中に何かあるのか?」

進之介「いや!? 別に!? 何もないけどっ!! っておい何して……!?」

チェイス「……画像データの中にフォルダが1つだけ……これのことか?『Otakara』とあるが……」

進之介「うおおおぉい!! 開くな開くな!! ちょ、ちょっとチェイス代われ!!」

チェイス「なんだ、どうしたというのだ」カチッ

進之介「あ」

チェイス「む……?」



ガチャリッ



霧子「ふぅ、ただいまチェイス。あ、泊さん、戻ってたんで——」

進之介「ふうぅんッッ!!!」バシーーン!!

チェイス「!!」ビクッ

霧子「ひうっ!? と、泊、さん? どうしたんですか……?」

進之介「ん? 何が?」

霧子「すごい勢いでパソコンを閉じましたよね……?」

進之介「そう? ノート使った後はいつもこんな感じだけど?」

霧子「そ……そう、ですか……」

進之介「そ、それよりほら、昼飯買ってきたからさっさと食べよう! チェイス! お前も食うかっ!?」

チェイス「いや、俺はもう少し調べものを——」カチャッ



ガシィッ!!



進之介「そう言わずに!! 食べるだろ!? 食べるよな!! 良し食おう!!」

チェイス「いや、別に俺は——」

進之介「良しじゃあこれ電源落とさないとな!!」ポチーッ!

進之介「霧子! これレンジで温めてくれッ!」

霧子「は、はい、わかりました……?」

10 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:12:57.11 ID:QOSCcfl40


チェイス「…………どうしたのだ進之介」

進之介(ここからは小声で頼む)

チェイス(…………俺がこれに触れるのは、不快だったか)シュン

進之介(いや別にそうじゃなくてな? あー……いいかチェイス、男はな、自分のパソコンには、こう、人に見せたくない物の一つや二つ保存してるもんなんだよ!)

チェイス(? 人に見せたくない物なのに保存するのか?)

進之介(そ、そうだ! 基本的に誰にも見せず、自分一人で楽しむものなんだ! つまりは、そう……宝物なんだよ!!)

チェイス(! 宝物……今のはお前の、宝物なのか)

進之介(そう! そうなんだよ!)

チェイス(ならば俺にも見せてくれないか)

進之介「そりゃ無理だ!! 駄目!! 絶対!!」ガタッ!

霧子「? なんですか泊さん?」

進之介「やべ……! いや、何でもない何でもない!」

チェイス(……俺は見てはいけないのか。お前の宝物ならば、きっと素晴らしいものだと思ったから、共有できればと……)シュン

進之介(……いやまぁ、男同士だし、共有できないこともないんだけど……)

チェイス(女では駄目なのか? 霧子もか?)

進之介(ダメダメダメぜっっったい駄目!! 霧子にだけは知られたくない!!)

チェイス(……男にのみ許される男の宝物、というわけか)フム

進之介(……うん、まぁそれでいいや……とにかく、俺はこれを誰にも、特に女性には見られたくないんだ。お前ならまぁ、少しはいいかも、しれないけど……)

チェイス(俺が見てもいいのか?)

進之介(お前がそういうものに興味もつのかわかんないけど、まぁ……そのうちな、そのうち)

チェイス(……そうか、なら、楽しみにしている)

進之介(お、おう。何にせよ、人のパソコンのデータを無闇に見たりするのは、良くないことなんだ。覚えとけよ)

進之介「ふぅ……じゃ、そういうことで、な!」

チェイス「了解した」

霧子「いったいなんの話をしてたんですか?」

チェイス「男の話だ」キリッ

霧子「???」

チェイス「ところで進之介」

進之介「? なんだ?」



チェイス「YA○OOの検索履歴にあった、『新作 人気 AV』のエーブイとは、なんの略語なのだ?」

進之介「」

霧子「」

11 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:13:56.73 ID:QOSCcfl40





〜〜〜〜


チェイス(あの後、何故か霧子は顔を真っ赤にして怒って出て行ってしまい)

チェイス(進之介は何とも言えない視線を俺に向けて膝から崩れ落ちていたな)

チェイス(消え入りそうな声で、検索履歴もやたらと言いふらしてはいけないことを教えてくれたが、結局どういうことだったのかよくわからん)

チェイス(……あれからさほど時間は経っていないはずだが……何故だろうな)

チェイス(随分と遠い昔のように思える……)

チェイス「……とにかく、これを使うわけにはいかんな。持ち主の許諾を得なければ」

チェイス「……他に何か——!」

チェイス「ベットが使われている形跡がある……! まだ温かい」

チェイス「部屋を出たばかりかもしないな。探してみよう」スタスタ



ガチャッ、クルッ、バタン



チェイス「……? この名札、良く見れば裏返しに……」スッ


クルン、カタン……




【 乾 巧の部屋 】



チェイス「…………かわい……うまい?」

チェイス「……いや、『乾』は『いぬい』で『巧』は『たくみ』、と読むのか」

チェイス「ここには巧という人物がいるようだな。とにかくこの人間を探すとしよう」



12 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:15:24.19 ID:QOSCcfl40


◇一階・ロビー◇



???「…………」

???「……わけがわかんねぇよ……」

???(いよいよ最期が近づいてきたから、誰にも言わずに、1人であの土手に行って……死んだはずなのに……)

???(なんで俺は生きてんだ……? 最近ずっと感じてた、死が近づいてる感覚も無いし、体調もスッキリしてる……)

???(何より、ここは何処だよ!? やたら広いくせに人が1人も居ねぇってなんなんだ……!)

???(……スマートブレインの残党の仕業か? 俺をまた何かの実験に使おうと……いや、ひょっとしてもう、使った後か?)

???(だがもしそうだとしても、ベルトが無ぇし、戦う術が無いんじゃどうしようも……)

???(……いや、1つだけあったか……できれば、アレにはなりたくないんだけどな……ヤバい状況になったら、仕方ないか)

???(今できることと言えば、この家を調べる位だが……)

???(扉が開くところはもう粗方調べ尽くしちまったし、他にどこをどう調べりゃいいんだか……!)

???「……おい!! 誰か居ないのかァ!!」





チェイス「ここに居るが」ヌゥッ

???「うっぉおおぉ!!?」ビクゥッ

チェイス「……どうかしたか」

???「いきなり後から声かけんな!! ビックリしただろうが!!」

???「っていうか人居たのかよ……! さっきあんだけ大声で探し回ってたってのに……!」

チェイス「探し回って……? お前は、この家の住人ではないのか」

??? 「いや、違ぇよ……って、それって……お前もか?」

チェイス「俺は気が付いたら2回の部屋のベッドで寝かされていた。俺はこの家に見覚えはない」

チェイス「お前が俺をここに連れてきたのではないのか?」

???「……俺も、目が覚めたら知らないベットで寝ぼけてて、慌てて飛び起きて部屋から出てみたんだが……」

???「玄関の扉は開かないし誰も居ないし……クソ、何が起きてんだ……!」

チェイス(……様子を見るに、嘘をついてるわけでもないようだ)

チェイス(脈拍や呼吸のペースが多少乱れているが、これは突然の事態に対する動揺によるものだろう)

チェイス「……お前は、乾巧という名前か?」

???「ッ!? なんでそれを……!!」

チェイス「やはり、あの部屋に居たのはお前か。部屋の扉に名札があった。お前の名前が書かれいてたが、気づいていなかったようだな」

巧「俺の名前が? どういう……」

チェイス「わからん。が、俺たちをここへ連れ来てた者は、俺たちのことを事前に知っているようだ」

巧「…………」

チェイス「……俺の名前はチェイスと言う」

巧「はぁ?」

チェイス「……初対面の相手とは、自己紹介を交わすのが人間のルールではないのか?」

巧「あ、あぁ……って、お前はもう俺の名前知ってんだろ?」

チェイス「…………」ジーー

巧「……た、巧だ……乾巧」

チェイス「よろしく」スッ

巧「よ、よろしく……」ギュッ
13 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:16:55.91 ID:QOSCcfl40


巧(なんか、変な奴だな……見知らぬ場所に連れてこられた割には随分冷静だし、やたら無表情だし……)

巧(しかも『チェイス』ってなんだよ……あだ名か?)

巧(……本当にこいつ俺と同じ状況の人間なのか? スマートブレインの一員だったりしないだろうな……!?)

巧(ここはストレートにいくか……)

巧「……お前、オルフェノクか?」

チェイス「……おる……ふぇのく……? とは、何だ」

巧「知らないのか?」

チェイス「あぁ。聞いたことはない。それは何だ?」

巧(……嘘をついてる、って感じがしねぇな……)

巧(俺と同じように、正体を人に知られるのが怖くて嘘ついてるにしたって、少しは動揺するはずだ……)

巧(純粋にわからねぇって顔……な気がする)

巧「……何でもない、忘れてくれ」

チェイス「? 何故だ。『おるふぇのく』が何なのか、教えてはくれないのか」

巧「悪いな。世の中には知らない方がいいことってのがあんだよ。……知らないなら、そのままの方がいい」

チェイス「……そうか」

チェイス「俺はたった今目覚めたばかりで、この家に何があるのか、わかっていない。何か変わった事は無いか」

巧「……変わった事って言ったってな……出口らしい出口は、全部鍵がかかってて開かないって事くらいだな」

チェイス「調べたのか」

巧「他にやることも無かったんでね。2階は俺が居た部屋以外は鍵がかかってた。今俺たちが居るのが、1階のリビングってとこか」

巧「あっちにキッチンがあって、確認してみたが、電気もガスも通ってるし、冷蔵庫には食材がぎっしりだ」

巧「でも、電子レンジもコンロも食器も、最近誰かが使った形跡は無い……新品みたいにピカピカしてやがる」

チェイス「……このテレビはつくのか」

巧「いや、まだ確認してねぇけど……」

チェイス「リモコンはこれか」ピッ



TV『……ザザ、ザザ……ザザザッ……』



巧「……どのチャンネルも映りません、ってか」

チェイス「…………」スタスタ



ガチャガチャッ



巧「? おい、何してんだよ」

チェイス「壊れていないか確認するだけだ」ガチャガチャ

チェイス「……配線に問題はないし、断線もしていない。単純に電波が来ていないようだ」

チェイス「恐らくDVDプレイヤーは見れるだろう。アンプの隣にDVDボックスが並んでいる」

巧「……DVDなんて見たって何にもならないだろ」

チェイス「……そうか。他には何か、変なモノは無いか?」

巧「いや、特には」

チェイス「…………」
14 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:18:39.59 ID:QOSCcfl40


チェイス(ますます不可解だな……。本来ならばこの状況、俺を連れてきた人物がなんらかの接触をしてきてもいいはずだ)

チェイス(だが、俺が目覚めてから出会った人間は、この乾巧ただ一人……俺と同じ、ここに連れてこられてた側の人間だ)

チェイス(……ロイミュードの俺と一般人を同じ場所に閉じ込め、何らかの実験でもしようと……?)

チェイス「わからん。何が目的だ……?」

巧「さぁな。もう数時間待って、何も事が起こらないようなら、適当に窓でもぶち破って外に出るしかねぇな」

チェイス「……! 乾、ここに来る前、お前は何をしていた?」

巧「! ……ここに来る、前……」

チェイス「何者かに襲われて気を失ったとか、見知らぬものと接触した、或いは誰かに付けられていた、といったようなことが無かったか?」

巧「いや、そういうような事は、無ぇけど……」

チェイス「誰かと争っていて負傷した、等ということも、無いのか?」

巧「…………別に、いたって平和だったぜ。……平和な、筈さ」

チェイス(……俺のように戦って致命的な怪我を負った、というわけではないのか)

チェイス(少しでも俺との共通点が見つかればと思ったのが……)

チェイス「なら、何をして過ごしていたか、覚えていないか?」

巧「…………」

チェイス「…………?」

巧「…………寝てたよ。一人でな」

チェイス「……寝ていた?」

巧「あぁ。土手で一人で、のんびり日向ぼっこして、寝てたんだよ。悪いかよ」

チェイス「いや、悪くはない。太陽の光をゆっくり浴びる事は、人間の体には必要だと聞く」

チェイス「……つまり乾は、その土手で昼寝をしていて、目が覚めたらここに居たと言うことか」

巧「あぁ、そういうことだ」

巧(……嘘は言っちゃいないぜ。俺の正体が化け物で、直前まで死にかけてた、なんて言ったところで、無駄に混乱させるだけだしな)

巧「そういうお前は、どこで何してたんだよ」

チェイス「あぁ……俺は————」




〜〜!!〜♪〜♪! 〜〜♪♪〜〜!!


チェイス「ム……?」

巧「ッ! 何だ!?」

チェイス「何かの曲のようだ」

巧「んなこたぁわかってる! 俺が言ってんのは、何で誰も居ないはずの2階から……」




巧「バイオリンの音が聴こえてくるのかってことだ!」



〜♪♪〜〜♪〜♪!! 〜〜♪♪〜〜



チェイス「行った方が良さそうだな」スッ

巧「あぁ……!」


15 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:19:58.12 ID:QOSCcfl40


◇2階・北西の部屋◇




???(A)「……んん……ぐ、うぅう……?」パチ

???(B)「……〜〜〜〜♪」キィッキッキッキィ〜♪

???(A)「……はぇ?」ポカン

???(B)「〜〜♪ おっ、ようやく起きたか。あぁいや、何も話さなくていい。今はこの超絶技巧の演奏に聴き入っていろっ!」



ドタドタドタッ!



???(B)「ん? 誰か上がってくるな。ここの住人か」キィキィキキキィ〜♪♪



<おい、ここ開いてるぞ!

<名札に文字が……! さっき見たときは何も……『城戸 真司』……?



バタンッ!!



巧「……! あんたら、いつからここに……!?」

チェイス「…………」

???(B)「妙な事を言うな。お前達が俺をこの家に連れてきたんじゃないのか?」〜〜♪♪

チェイス「いいや、違う。俺たちはこの家のことを何も知らない」

???(B)「そうか……なら俺と同じか。よくわからんが、とりあえず落ち着いて俺の曲を聴け」〜〜♪♪

巧「いや、何言って……」

???(A)「……えーっと、状況が……読めないんだけど……何、これ?」

???(B)「さぁ? 俺は何も知らん。それより静かにしてろー」〜〜♪♪

???(A)「え、えぇ……?」



〜♪♪〜〜♪〜♪!! 〜〜♪♪〜〜



巧(……意味がわからねぇ……わからねぇけど……)

巧「…………すげぇな、これ」

チェイス「…………」コクリ

???(A)「……おぉぉ……」



〜♪♪〜〜♪〜♪!! 〜〜♪♪〜〜……キイィンッ!♪



16 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:21:08.11 ID:QOSCcfl40



???(B)「……以上、音楽の神が生みし奇跡の子……『紅 音也』による『剣の舞』だ」フフン

???(A)「は〜……すっげぇなー! 指の動きについていけなかったよ!」パチパチパチ!

チェイス「俺は音楽には疎いが、今の技巧が素晴らしいものだということはわかった」パチパチ

巧「いや、お前まで何拍手してんだよ……」

チェイス「それはそうと乾、この部屋に入る前に、ノックをしていなかったぞ」

巧「はぁ?」

チェイス「人の部屋に入る前には、ノックをするのが人間のルールではないのか」

巧「今そんな事どうでもいいだろうが! ……紅音也、って言ったか」

音也「あぁ、いかにも! この俺こそ、100年に一度の超天才……」

音也「紅————音也だッ……!!」ドヤァァァ

巧「…………」

???(A)「…………」パチ、パチ…

チェイス「……そこのベットに居る茶髪の男性は知り合いか?」

音也「いや、全く。誰なんだお前」

???(A)「え!? あ、あぁ……俺は城戸s——」

音也「あぁ、やっぱりいい。男の名前なんぞ覚えても別に得にならんからな」シレッ

???(A)「そっちが訊いておいて何だその態度ー!? 俺の名前は城戸真司!! 23歳!! 仕事はジャーナリストで得意料理は餃子ッ!!」ガルル

音也「何だ同い年か。その割にはお前……なんかガキっぽい雰囲気漂ってるな?」

真司「なん、だとこんのやろぉ……!?」←猪木顔

巧「おいやめろよ。下らねぇことで喧嘩すんなって……ガキじゃあるまいし」

真司「う、ぐ……!」

音也「そーだそーだー、大人になれー! 大人の男になれないと彼女はできないぞ真司君!」

真司「余計なお世話だよこんちきしょう!? っていうかちゃっかり名前覚えてんじゃんか!!」

チェイス「落ち着け城戸。23歳という若さならまだ十分出会いの余地はある。今から大人になれば恋人の一人すぐにできるだろう」

真司「あんたは何のフォローをしてるんだよぉ!?」

チェイス「ところで乾、『大人の男』とは、何をもってして大人と判断されるのだ?」

巧「知るかよ! なんでソレ俺に振ったんだ……!」

音也「ハッハッハ! 中々愉快な連中だなお前ら!」


17 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:22:45.47 ID:QOSCcfl40



◇10分後、一階・リビング◇



音也「それじゃあ、改めて名乗らせてもらおうか。紅音也……23歳、職業は音楽家だ。ヴァイオリン1つで人の心を震わす天才ヴァイオリニストだ!」

真司「えっと、俺は城戸真司……同じく23歳。仕事はさっきも言ったけど、ジャーナリストやってるんだ」

真司「OREジャーナルって会社聞いた事無いかな? アクセス数はそれなりにあったと思ったんだけど……」

チェイス「いや、知らない」

巧「知らねぇ」

音也「知らんな。(っていうか『あくせす数』ってなんだ?)」

真司「そ、そっか……知らないか……まぁ、メジャーってわけでもないし、なぁ……」

巧「もう次いいか? ……乾巧。歳は18。職業はクリーニング屋……だった」

真司「『だった』? 今はやってないってこと?」

巧「……あぁ」

音也「じゃあ今は職無しのプーってことか。いい若者が嘆かわしいことだ……」ヤレヤレ

巧「……何かそれ、あんたにだけは言われたくないな……」

音也「で、そこの全身紫で統一された斬新ファッションのお前は?」

チェイス「……名はチェイスだ。生まれて2年以上経過してることは確かだが、正確な年齢は不明だ」

巧「……急に何変な冗談言ってんだ?」

真司「ハハハ、どうみたって2年どころか20前後は行ってるでしょー!」

音也「変わったギャグセンスの持ち主だな。ネタそのものは別に面白くないが、無表情で唐突に会話に盛り込んでくるそのスタイルは見込みがある」

チェイス「……? 冗談ではないのだが」

巧「わかったわかった。言いたくないならそれでいいだろ」

18 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:24:15.78 ID:QOSCcfl40


真司「仕事は? 何してんの?」

チェイス「あぁ、俺は仮め——!」

チェイス(……仮面ライダーは俺の『使命』であって、職業ではないな……)

音也「かめ……? 亀でも売ってんのか?」

チェイス「いや……仕事は今のところ無い」

音也「なんだお前もか! おいおい、ちゃんと職探ししてんのか? 日本が今景気がいいのは一時的なもので、その内ガタッと落っこちるって話なんだぞ?」

音也「今の内にまともな仕事見つけないと後悔するぞ?」

巧「……? 今ってそんなに景気良かったか?」

真司「むしろあんまり良くないよなぁ」

音也「? 何言ってんだお前ら。世間はもう誰もかれもが金持ちになった気分で騒ぎまくってるだろ。テレビで経済学者が、今の経済を皮肉ってたぞ」

音也「えーと……なんつったけ……バルブ?」

真司「バ、バルブ?」

巧「……おい、あんた、まさかひょっとしてバブルの事言ってんのか?」

真司「は!? そ、そうなの!?」

音也「おぉ! そうだそうだ! バブルだバブル! ……で、なんで『バブル』って呼ばれてるんだったか……?」

真司「……マジ?」

巧「……あんたタイムスリップでもしてきたのか? 一体いつの話してんだよ」

音也「? なんのこっちゃ?」

チェイス「……乾」

巧「あ?」

チェイス「バブル、とは何だ? 直訳して『泡』だと認識しているが……」

巧「お前もかよ!」

チェイス「生憎、俺は人間の歴史についてはあまり詳しくないんだ」

真司「いや『人間の歴史』って、そんな世界規模の話じゃないぞ? あくまで日本内の事で……まぁ、今時の若者なら知らない人もいるかもだけど」

19 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:25:20.78 ID:QOSCcfl40


巧「あぁー、バブルってのはだな……」

チェイス「うむ」

巧「…………あんた、城戸……さん、だっけ?」

真司「え? な、何だよ急に?」

巧「説明してやってくれよ」

真司「え!? 何で俺!?」

巧「あんた記者なんだろ? 俺よりその手の事を説明するのが上手いんじゃねーかなと、思って」

真司「そ、そう? そうかな? へへへ」

音也「で、本当は?」

巧「面倒だからパス」

真司「おいっ!?」

チェイス「では城戸。よろしく頼む」ズイッ

真司「あぁ、完全に俺が説明する流れなのね……」

真司「ゴホン……バブルっていうのは、昔の日本の経済状況の事を指す言葉なんだよ」

真司「なんか、アメリカとの関係が原因らしいんだけど、とにかく、当時の日本人の皆が、『日本全体が儲かってる』って錯覚ちゃったんだよね」

真司「土地とか株がすっげー高騰し続けてたんだけど、ある時それが上がるどころか下がり始めちゃったらしいんだよね。まぁ良くわかんないけど」

真司「儲かりまくってると思ってたのに、いつの間にか自分の会社が倒産してたー、なんて人が続出したんだってさ」

真司「この株と土地の高騰と暴落は、本当に短い間のことだったんだよね。ほんの数年だったって編集長が言ってたよ」

真司「で、その短い期間であっという間に崩壊した経済を、作ってもすぐに消えてなくなる泡とかけて、『バブル』って呼ぶようになったんだよ」

チェイス「……なるほど。良く分かった。そんなことがあったのだな」

音也「ほーん……」

巧「……俺もよく知らねぇけどさぁ、かなりザックリと説明しただろ」

真司「君がやれって言ったんでしょうに!? 仕方ないだろ! 俺普段経済関係の取材なんてしたことないし、記事だって全然書いたことないんだから!」

音也「そんじゃいつも何の取材してたんだよ」

真司「んーー、火事の対策についてとか」

音也「ほぉ」

真司「金色のザリガニの事とかぁ」

音也「……ん?」

真司「髪の毛が生えたカエルとか!」

チェイス「……カエルに毛が生えるのか?」

真司「本当はそんなのいないぜ!? でもいたんだよ! 新種だよ新種!! いやー凄かったよなぁあれ……!」

真司「頭に箒みたいに毛がしっかり生えてたんだよ! 金色のザリガニも同じ人が見つけたんだけど、あれもビックリしたなぁー!」

真司「ちなみに俺ね! 昔は『ザリガニ捕りの真ちゃん』って呼ばれてて————」



巧(……あぁ、段々わかってきた。この音也って方も大概だけど……城戸真司、こいつ……)

巧(アホだ)


20 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:26:30.49 ID:QOSCcfl40


真司「それでさ! 捕まえたザリガニを家に持って帰って、親に調理してもらうんだけど、これがまた美味いんだな〜!」

チェイス「そんなに、美味いのか?」

真司「そりゃもう! 味噌汁にしてもいいし、そのまま焼いてもいいし! もう、最高! って感じ!」

チェイス「……しかし、ザリガニは今絶滅危惧種と聞くが?」

真司「そうなんだよ〜……昔は沢山いたんだけどなぁ。最近じゃもう滅多に見ないよ! 人間が川とか自然を汚すからなー」

チェイス「そうか……それは残念だ……」


巧(そしてこのチェイスって奴も……こいつはこいつでなんつーか、かなり天然っぽいし……!)

巧(何でこんなどうでもいい話を興味津々に聴いてんだよ!)


音也「ザリガニかぁ……前に和食店で出てきたのを何種類か喰ったっけな」

巧(お前も話題に乗るのかよ……!?)

チェイス「……!」ガタッ

真司「マジで!? どうだった!?」

巧(食い付き半端ねぇな……)

音也「まぁ、それなりに美味かったぞ。と言っても、同じ甲殻類なら海老とか蟹の方が好きだけどな」

真司「まだそんなお店あったんだぁ! どこどこ!? どこの何て名前の店!?」

音也「さぁ? もう覚えてない。確か行ったのはその一回だったしな」

チェイス「…………」ストン

真司「なんだよ……期待させるなよ……」ズーン

巧(たかがザリガニで喜んだり落ち込んだり、忙しい奴らだな……)

巧(……放っとくいつまでもこの話になりそうだな……ったく、仕切ったりするのは慣れてねぇってのに……!)

巧「なぁ、いい加減本題に入ろうぜ。今話すべきなのは、俺たちが何でこんな所にいるのかってことだろ?」

真司「あっ! そうだった! ここは何なんだよ!? 何で俺、知らない家で寝てたんだ!?」

チェイス「今のところ、何者かが俺たちをこの家に連れてきたとしか、考えられんな」

真司「や、やばいなぁ……こんな所で油売ってたら、いくら編集長がいい人でも本当にクビにされかねないよ……!」

真司「…………あれ……?」

音也「? どうした?」

真司「……いや、なんか……忘れてるような気が……」

チェイス「忘れている……?」

真司「仕事クビになるとか、そんな話じゃなくて……もっと、本当に大事な————」


真司「————ぁ……」

チェイス「……?」

真司「…………」

巧「おい、どうした?」

真司「……あ、い、いや、なんでもないよ! うん、何でも、ない」

音也「…………」


21 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:28:41.54 ID:QOSCcfl40


巧「……とりあえず、ここに来る前、あんたら二人、何してた?」

真司「……それは……」

音也「俺か? フフッ、聞きたいか? 聞きたいか! そうだろうそうだろう! なら聞かせてやる……」

音也「俺と……俺の愛した女をめぐる……愛のための戦いの記憶を!!」シャラーン

巧「……なんでもいいからさっさと話してくれ」

音也「良しわかった!! あれは爽やかな晴天の日だった……」

巧「簡潔にな」

音也「俺はいつものように愛機のヴァイオリンを手に街を歩いてた……道行く女性とすれ違う度に、彼女達は俺を振り返り悟る……」

巧「おい、簡潔に——」

音也「自分の小指と俺の小指が……赤い糸で結ばれていると……!」

巧「聞けよ!」

音也「しかし、運命とは時に唐突に訪れ! そして残酷で、美しい……! 俺はあの教会の庭で、出会ってしまった……」

巧「聞けって!」

音也「小指だけじゃない……両手両足すべての指が赤い糸で結ばれた————『運命の女』とッ!!」スチャ




ヴァイオリン『〜♪♪〜♪〜〜♪!! ピンッ!』←(例の曲)




巧「……ッ……っ……!」イライラ

真司(なんか始まった……)

音也「まるで雷に打たれたかのような衝撃だった……一瞬時が静止した! いや、一瞬ではあったが永遠にも感じられる瞬間だった!」

音也「黒い服が良く似合う、絹のような美しい黒髪の……!」

音也「…………どこか、痛みと悲しみを感じさせる、不思議な眼をした女だった……」

チェイス(……今一瞬……遠い目をしたな)

音也「…………で、そいつの事をひどい扱いしてた腐れ外道元旦那をこの俺がぶちのめして俺と女はめでたく結ばれるも俺は息絶えました! おーしまいっ!」

真司「……ってうおぉーい!? なんか一番重要そうなところがすっごいザックリと片付けられてるんですけど!? さっきの俺のバブル説明の比じゃない!!」

巧「お前真面目に説明する気無ぇだろ!!」

音也「何を言うかこのたれ目小僧め。お前が簡潔に説明しろというからしてやったというのに、注文の多い奴だ」

巧「たれ目小僧って何なんだよ……! っていうか聞こえてたんじゃねーか俺の要求!」

22 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:30:24.18 ID:QOSCcfl40


チェイス「……紅、少しいいか」

音也「ん? どうした、やっぱり俺のノンフィクション大恋愛門物語が聞きたいのか?」

チェイス「それも非常に心惹かれるが、お前が最後に言った事で、気になることがある」

音也「腐れ外道元旦那の事か? あぁ、あいつは男の風上にも置けんクソ野——」

チェイス「その後の方だ」

音也「む、この俺がぶちのめして、の部分か。確かに、あの男はクソ野郎ではあったが力は本物だった。だから俺も命を削って力を得ることで——」

チェイス「もう少し後だ」

音也「フッ、せっかちな奴め。いきなりエピローグが知りたいとはな。そう、クソ野郎をぶっ飛ばし、俺は女と結ばれた。短い時ではあったが、満ち足りた——」

チェイス「満ち足りた時間だったが……お前は息絶えた。……そうなんだな?」

音也「…………お前も、もう分かったみたいだな」

チェイス「…………信じられないことではあるが、そうと考えれば、説明がつく」

巧「おい、何言ってんだ? 息絶えたって……なんの話を……」

真司「あー! なんか腹減ってきたなぁ! なぁ、皆でなんか食べない!?」

巧「はぁ?」

真司「幸い食材は沢山あるみたいだしさ! 俺、なんか作るよ!」ガタッ

巧「何急に飯の話なんてしてんだよ……! それよりこいつ等の言ってる事————」

真司「冷蔵庫冷蔵庫……うわ! 本当にぎっしりだな! 色々あるけどどうしようかなー」

チェイス「…………城戸」

真司「目移りしちゃうな〜! あ! 餃子の皮あるじゃん! っしゃあ! ひき肉もあるからこれ行けるぞぉ!」

音也「おい真司…………止せ」

真司「えーなんでだよ! 俺の餃子が食いたくないってのかよ!」ガサゴソ

音也「お前も分かってる筈だ。自分に何が起こっているのか、ここがどういう場所なのか」

巧「……!! どういう意味だ!? あんたら、ここが何なのか見当ついてるのか!?」

真司「……そりゃあ、やっぱ誘拐でしょ! あ、一般人相手にしたドッキリって線もあるかな!」ハハハ
23 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:32:05.72 ID:QOSCcfl40


チェイス「……城戸、気持ちわかる……だが、今俺たちの身に起こっている事は、紛れもない現実だ……!」

真司「…………めろよ……」

音也「目を背けるな。……今を受け入れろ」

巧「おい……おい!! どういうことだよ!! 何を話してんだよ!!」

真司「………やめろよ……」

チェイス「……乾、お前は、ここへ来る前、土手で寝ていたと言っていたな」

巧「それが何だよ!? 今の話と何の関係が……」

チェイス「本当に、それだけだったのか?」

巧「何、を……」

チェイス「……本当は……命の危機に陥っていたのではないのか?」

巧「ッ!!!」

真司「……やめろよぉ……!!」ワナワナ

巧「何で、そんな事が……分かるんだよ……!」

チェイス「……俺は、仲間達と共に、世界を破滅させようとする強大な悪と戦った」

巧「……!?」

音也「…………」

チェイス「だが俺は、敵に致命傷を受けた。助かる見込みはなかった」

チェイス「俺は捨て身の策で、自分もろ共敵を倒そうと、自爆した」

チェイス「……そして目が覚めたら、ここに居た」

巧「…………何だよ、それ……それじゃあまるで……!!」

チェイス「そうだ。ここは終点なのだろう……少なくとも、今ここに居る俺たちにとっては」

音也「……つまり俺たちは————」










真司「 や め ろ っ て 言 っ て る だ ろ !!!」



巧「ッ!!」

24 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:33:38.20 ID:QOSCcfl40


チェイス「……城戸……」

真司「やめようよ!! こんな話!! してどーするんだよ!? 俺たちここに居るじゃんか!!」

真司「こうして話してるだろ!? 息もしてるし心臓だって動いてる!!」

真司「生きてるだろ!! 生きてるんだよ!! そんなわけないんだ!! 俺だけ……俺だけ先にこんな所でっ!!」

真司「あいつは、まだ戦ってるかもしれないのに……!! たった、一人で……!!」

チェイス「…………お前にも、お前の事情が、戦いが、守りたい何かがあったのだろう」

チェイス「だが、終わってしまった俺たちには、もう、どうすることもできない……」

チェイス「後は、生きている人間たちの役目だ……!」

真司「うるさい!! 終わってなんかない!! 俺だけ勝手に終われないんだよォ!!」ガタァンッ!!

真司「……そうだよ、こんなことしてる場合じゃない……! 早く、戻らなきゃ……蓮が……蓮が危ないんだ……!!」ズンズン

音也「いい加減にしやがれ!! お前が必死に見ないふりをすれば、この事実が変わるのか!!」

音也「現実を見ろ!! ここは俺たちが元居た場所とは、『決定的に違う別の何か』なんだよ!!」

音也「もう俺たちは……あそこには帰れない……!!」

真司「違う……! 違う……!! そんな事、俺は……!!」

音也「俺たちは……もう————」











音也「————死んでるんだよ……!!」





真司「…………ぅ、ぅううあああぁぁぁあぁぁああッッ!!!」

真司「くそ!! くそ!! くそぉ!! くそおぉおぉぉ!!!」ガンッガンッガンッ!!

真司「くそ!! くそ……!! くそっ……! くそぉ……っ」ガンッガン

真司「ぐ、うぅ……く、そぉぉぉ……」ズル…ズル…

真司「…………蓮っ……ごめん……!! ご、めんっ……!!」ポロポロ…




巧「……何なんだよ……俺たちが……本当に、死んでるなら……一体……」

巧「どこだよ、ここ……」

チェイス「………………」

25 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:34:11.02 ID:QOSCcfl40






チェイス「あの世、ではないのか」






26 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/27(日) 16:35:12.80 ID:QOSCcfl40



ここまでで書き溜めが尽きているのも全部乾巧って奴の仕業なんだ。

チェイスが食事できること前提で話が進んでますが、まぁ、食べれた方が面白いかなと思って結局食べれる事に。
これも某飯テロSSって奴の仕業なんだ。

基本このSSは、作中で死亡した仮面ライダーがあの世(?)でグダグダーっと生活するだけの物です。
笑い有り涙有り、シリアス……時々ある、かも。変身? あるかなぁ。バトル? 書けるかなぁ。
色々と未定の見切り発車。


舞台となるこの家、というか世界にはまだまだ死人が増えます。
ただし最後の最後まで悪党として死んだライダーは来ません。多分。
浅倉とか蛮野とか。後キャラ描写の少ない劇場ライダー。サイガとか。

登場するキャラに偏りがあるかも。

出せるかどうか不明ですが、こいつも死人ライダーじゃね? って奴が居たら書き込んでみて下さい。忘れてるかもしれないので。
出せるかどうか不明ですが。


更新は不定期です。

後、 >>1はゴースト未視聴です。最近やっとドライブを見終わりました。
ゴースト見てない理由は、【仮面ライダー】のキーワードで自動録画してたはずが1話から10話位まとめて消し飛んでたので。
ポンコツブルーレイ絶ってぇ許さねぇ!!

62 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 19:36:19.06 ID:Tatc61Xu0

どうもです。8時になったら投下します。


今回は初期メンバーのチェイス、巧、真司、音也による、互いの身の上話会って感じです。

新キャラはまだ来ないです。ついでに言うと次回もこの4人だけかも。


>>29
>>40さんの言う通り、最終回のすべてが無かった事になった世界と、実際にライダーが全滅した世界は別扱いという解釈で書いてます。

>>39
そういえば最初期にそんな描写あったけ……何かめっちゃお菓子食べてるロイミュードもいましたね。
すっかり忘れてたや。
63 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:01:30.99 ID:Tatc61Xu0



◇20分後……◇



チェイス「…………落ち着いたか?」

真司「…………まだ、呑み込み、きれないけど……」

真司「………………理解は、してる……」

チェイス「…………そうか」ポンポン

真司「っ……何?」

チェイス「……落ち込んでいる人間を慰める時は、背中を軽く叩いてやるのが、人間のルールだと認識している」

チェイス「……間違っていたか?」

真司「……ハハ、まぁ、必ずしもそうする場面ばっかじゃないと思うけど……」

真司「今は……嬉しいかな……。……ありがとう」

チェイス「……どういうたしまて」

音也「…………」

巧(……一瞬笑ったけど、本調子には程遠いだろうな……)

巧(……さっきまでのバカみたいな明るさが嘘みたいだ……まぁ、当たり前か……)

巧(本当にひどい顔してるぜ……死んでるみたいなツラだ)

巧(…………死んでる人間が、死んでるみたいなツラ、か……)

巧「……全っ然笑えねぇな……」ギュッ

音也「……で、お前はどうなんだ、巧。受け入れられるか? この現状を」

巧「…………られる、られないの問題じゃないだろ。……あんた達の言ってる事が本当なら、色んな疑問が解消するしな」

巧「……俺は死んだ。もう覆りようがない、確かな事実なんだ。受け入れるさ」

音也「……そうかい……しっかし、18歳だったか? 随分若い歳で……災難だったな」

巧「お互い様さ。あんただって、まだ23だろ? ……やり残した事とか、無かったのかよ? ……夢、とか」

音也「……そうだな。まぁ、自分の息子が成長していく様を間近で見れないってのは、心残りではあるが……成長した姿は見れたからな。良しとするさ」

巧「成長した姿は見れた……? 逆だろそれ。ってか子供いんのかよ……」

音也「あぁ、いるとも! 俺に似ず、引っ込み思案で、遊び心を良く分かってない奴だったが……」

音也「……音楽を愛する気持ちは……俺と、そっくりそのまま……同じだった……」

巧「…………」

64 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:03:14.64 ID:Tatc61Xu0


音也「俺が音楽の天才……ってのはまぁ、自他ともに認める事実だが、理解されてばかりってわけじゃ無かった」

音也「どっちかっつーと、理解されない方が多かったな。最初の頃は特に……」

真司「…………」

巧「……? なんだよ、急に……」

音也「まぁ聞けよ。……俺はよく恋をした。女を口説いて、女と遊んで……沢山の女と恋をしてきた」

音也「だがどういうわけか、どれも長続きしなくってなぁ……俺が冷めちまうか、他の女に行っちまうか、女が俺に嫌気がさすか……」ポリポリ

音也「いつもそのどれかだった……女相手でこれだ。男が相手となれば、更に面倒くさい事が起こる」

音也「この性格だからな。男には鬱陶しく、目障りに映るんだろう。何かとしょっちゅう喧嘩を売られた」

音也「んで、俺も『俺に盾突く男が嫌い』だったから、売られた喧嘩はいつも買ってた。殴る殴られるの大乱闘さ」

チェイス「…………」

音也「女を求めて、食って飲んで遊んで、音楽を嗜み、男と喧嘩して、寝て起きて……ただその毎日だった」

音也「俺はそんな日々に満足していた。己の欲望に忠実に生きる……これほどの幸せはない! ってな」

音也「……でも、なーにかが違うって、俺の中の【音】が叫んでた」

音也「……ひょっとすると俺は、本当にその女達に恋をしていたわけじゃ、なかったのかもしれない……」

音也「ただ、『俺の【音楽】』を……誰かに、知ってほしかった」

チェイス「……音楽を……知ってほしい?」

音也「言ったろ。俺は天才だが、理解されてばかりじゃなかった。……だから、理解者が欲しかったんだろうよ」

音也「死んじまった今だからこそ思うが……あの時までの俺は、きっと孤独だったんだなー」

音也「……そんな時……一人の女と出会った。そいつは、今までの女とどこか違った」

音也「凛とした態度と、それと反対にどこか脆そうな、危いものを感じる瞳と……」

音也「決意と、強さと、誇りに満ち溢れた……音楽を奏でてる女だった……」

チェイス「……その女性も、音楽に携わっていたのか?」

音也「いや、違う。そうじゃない。俺がここで言ってる【音楽】ってのは、その人間が、知らず知らずの内に、心で奏でている音のことだ」

巧「……心で、奏でる音……」

音也「人は皆、音楽を奏でている……それは、自分の仕事だったり、夢だったり、或いは恋だったり。その人それぞれで、本当に色々だ」

音也「それらは皆、仕事という名の音楽だ。夢という名の……恋という名の音楽だ。人間の芸術だ……」

音也「楽し気な音楽を奏でている奴もいれば、喜びに溢れた音楽、激しい音楽、悲しい音楽……中には音楽とも呼べない雑音を鳴らしてる奴もいる」


真司(…………心の音楽……か。俺は……どんな音を、奏でてたのかな……? 奏でることが、できてたかな……)
65 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:05:16.48 ID:Tatc61Xu0


音也「話がそれたが……そういう意味で、聞き惚れる音楽を奏でる女と出会った」

音也「接していく内に、その心の美しさが、俺の胸に染み込んでいった……おそらくあれが、本当の意味での、最初の恋だった」

音也「そいつを手に入れようと躍起になっていたら、他の色んな奴に出会った。例によって、俺に盾突く男とも出会った」

音也「だが、喧嘩をして終わりには、ならなかった。気付けば俺は、その男をダチみたいに思ってた。友情っていうのを感じたのも、あれが最初かもなぁ」

音也「俺はその女と出会って、いつの間にか孤独じゃなくなってたのさ」

チェイス「……その女性が、先ほど言っていた、お前の運命の女、ということか」

音也「………………」フルフル

巧「……違うのか?」

音也「……残念ながらなー。最初は、運命の女だと信じて疑わなかった。あいつも俺の事を、そんな風に思ってくれていた」

音也「だがある日、俺は出会っちまった。本当に運命を感じる、別の女にな」

音也「その女もまた、綺麗な音を奏でていた……だが、同時に悲しい音でもあった」

真司「……その人の、どこがそんなに良かったんだ……?」

音也「…………俺の音楽を、理解してくれた」

巧「! …………」

音也「初めてだった。今まで誰も理解したことはない、俺の音楽に込めた思いを、その女はあっさりと指摘してみせた……」

音也「気持ちが抑えられないくらい高揚するのが分かった。俺はもう、その女に心を奪われてた」

チェイス「最初の女性は、違ったのか?」

音也「……あいつも、俺の音楽を愛してくれてはいた……」

音也「だが、愛してはいても……本当の意味で、『理解』はしていなかった。その事に、運命の女と出会って、気付いてしまった……」

チェイス「…………だから、後から現れたその女性の方を、選んだのか」

音也「……あぁ」

チェイス「……最初の女性には、何の非も無いように聞こえるが」

音也「……そうだな」

チェイス「……既に愛を誓った相手を置き去りにして、別の相手を選んだというのか」

巧「ちょ、おま、何言ってんだよ……」

チェイス「…………すまない、紅。忘れてくれ」



巧(……何だ……? 無表情は無表情だけど……まさかこいつ……)

巧(微妙に……怒ってる?)


66 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:06:54.06 ID:Tatc61Xu0


音也「構わんさ。お前の言う通りだからな……あいつからしてみれば、自分じゃどうしようもない理由で捨てられたようなもんだ……」

音也「でもな、愛ってのは理屈じゃねぇんだ……一度生まれた感情は……消そうと思って消せるもんじゃない……」

音也「別の女に惚れてるのに、あいつと共にいることなんて、許されない。それこそあいつを、本当に傷つけることになっちまう」

チェイス「……最初の女性のことは、愛せなくなったのか?」

音也「それは違う。……断じてな。あいつに対しての愛が消えたわけじゃない。昔も今も、大切な女だ……これからも、ずっとな」

巧「……でもよ、そうは言っても、その人は、その……一人になっちまった訳だろ? ……悲しませたり恨まれるのが、怖いとか、思わなったのか?」

音也「そりゃ当然思ったさ。最初にそういう話になった時、あいつ……ひどい顔して、部屋から飛び出して行っちまったっけ……」

音也「あいつを悲しませたのは……どうしようもない事実だ」

真司「…………」

音也「……なのにな……なのにだぞ?」

チェイス「……?」

音也「…………あいつ、俺を恨まなかったんだよ」

チェイス「……! 何故だ?」

音也「一言で言えば……あいつが、それだけ強い女だったってことだな。……最後に話したとき、あいつの作るオムライスのレシピを訊いたんだが……」

音也「あいつ、……『最後の隠し味に愛情を入れるんだ』なんて言ってやがった」

音也「泣いてないフリはしてが……まっすぐ前を向いているのが分かった……」

音也「その時、改めて思ったのさ……こいつと出会えて、こいつを本気で愛せて、良かった
ってな」

チェイス「………………」
67 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:09:46.23 ID:Tatc61Xu0


音也「…………長くなったが、要するに俺は、『悔いはない』って事が言いたいのさ」

音也「色んな事があったが……心の底から愛せる女に、二人も出会えて……友に恵まれ……未来に生まれる息子に出会うことまでできた」

音也「俺みたいな風来坊には、勿体ない位に……充実した、23年間だった……これ以上望むものはない……」フフッ

巧「…………ハッ、結局、ただの惚気話かよ」

音也「何だお前、今頃気付いたのか?」

巧「……こいつ……! ったく、ただ悔いなく死ねたって事を伝えるのにどんだけ長ったらしい浮気自慢垂れ流してんだか……」

音也「あぁん!? 浮気じゃねぇし!! ちゃんとケジメはつけたのっ!! ……ほとんど、向こうから切り出してくれたもんではある、が……」

巧「ケッ、どっちにしろ自慢には変わりないだろ。なぁおい、お前からも何か言って————」




チェイス「…………」ダバァー




巧「!!?」

巧(な……!? 泣いてる……!? ガチ泣きしてるぞ! 無表情で!)

チェイス「すまない、紅……お前を誤解するところだった。お前は、純粋にその二人を……愛していたのだな……」ボロボロ

音也「お、おう…………で、何でお前、そんなに泣いてらっしゃるので……?」

チェイス「お前の生き様に心撃たれた……俺の『愛』に対する価値観は、まだ未熟だったということも分かった……」ボロボロ

チェイス「愛の形は……音楽と同じく、人それぞれなのだな……」ズビー

音也「そ、そうか……フハハハハ! もっと言えもっと言え! 俺を称えるがいいぞハッハッハッハ!!」

チェイス「それに何より……その最初の女性の気持ちが、痛いほどに理解できた……」ズズッ

音也「ん……? ってことはなんだ、お前失恋経験があんのか! そうかそうか! ならこの俺に話してみろ、愚痴でもなんでも聞いてやるぞ!」

巧「あんたはただ面白そうだから聞きたいだけだろ! おい、お前も少しは涙ぬぐうとかの動作しろよ!? 鼻水垂れてんじゃねーか、ほらティッシュ! 」

チェイス「すまない……」ヂーン!

68 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:10:58.92 ID:Tatc61Xu0


真司「…………なんか、いいなぁ……」

音也「ん?」

巧「…………」

真司「音也が……羨ましいよ。全然違うよ……俺と……」

真司「俺は、悔いがない……なんて、とても言えないや……」

真司「悔いだらけだよ……何も成し遂げられなかったし……やり残したこともある……置いてきたモノだって、沢山だ……」

真司「……心配な人達が……大勢いるのにっ……!」

音也「…………そうかい」

巧(……城戸の奴……なんかさっきから、自分が死んだこと自体より……それによって、『自分以外の何かが守れなくなってしまう』事を気にしてる、のか……?)

巧(……自分の事はいつも二の次ってタイプか……確かにこの紅音也とは、正反対だな……)

真司「何でだろうな……? 同じ歳なのに、音也が……凄く、強いっていうか、逞しく見えるよ……」

音也「…………」

真司「……音也は……やるべきことをちゃんとやって、死ねたんだよな……」

音也「……まぁ、そうだな」

真司「……じゃあさ、自分がやるって決めた事を……全然成せないまま死んだ奴は……どうすればいいのかな……?」

チェイス「……城戸……」

音也「…………わからん。俺の口からは、何も言えん」

真司「……ハハ、そっか。そりゃそうだよな……」

巧「おい紅……!」

音也「俺とお前とじゃ、経緯も立場も、今の胸の内の状況も違う。俺の言葉は響かんだろう」

巧「っ…………」

音也「ただ俺は、考えても仕方ないような事は、考えないように生きていた」

チェイス「…………」

69 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:12:57.19 ID:Tatc61Xu0


音也「俺たちは死んだ。もう、生きている連中には会えないし、何もしてやれる事は無い」

音也「……だから俺はせめて、生きている奴らが、思い描いているだろう過ごし方をしようと思う」

真司「……どういう、ことだよ……?」

音也「生きている人間が、死んだ人間に望むことは何だと思う?」

真司「え……?」

音也「天国での平穏な暮らしさ。生きてる人間達にとっちゃ、俺たちは、もう傍にいない、永遠に会えない遠い人だ」

音也「だからせめて、あの世では笑って過ごして、たまに自分たちの様子を空から眺めている……なんていう風に、想像したくなるもんだ」

音也「間違っても、悲しみに震えている死後を想像したがりはしない。だろ?」

巧(…………真理……啓太郎……海堂……三原……)

音也「だーかーらっ! 俺様はここで自由気ままに食って飲んで遊んで暮らすと決めているのだァーハッハッハ!!」

音也「ん? あんまり生きてた頃と変わらんな! はははは!」

チェイス「……なるほど。確かに、その通りかもしれんな……」

真司「…………やっぱり、音也は強いよ……うん……」

真司「俺なんかじゃなくて……音也みたいな奴がライダーになってれば……戦いも、止められたかもなぁ……」

チェイス「! ライダー……だと?」

真司「……あっ……」

巧「『戦い』……って、何のことだよ」

真司「い、いや、あのっ別になんでも————」

音也「おいおいおい真司くぅ〜ん? 俺たちは死人同士だ、死人の仲間だっ! 恐らく俺たちはこれから先もここでずーっと暮らす事になるんだぞー?」

音也「隠し事は無しだ! つらい記憶があるなら今の内に吐き出しとけぇ!」セナカバシンッ

真司「痛い!?」

チェイス「……城戸、俺も紅に賛成だ」

真司「! ……チェイス君……」

チェイス「お前が何故、自分の過去を秘密にしたがるのかはわからないが……それは、今のお前にとって、誰かに知られては、不都合がある事か?」

真司「……それは、何というか……」

チェイス「そうであるならば、俺は無理に尋ねる気はない。人間には誰にでも、知られたくないものがあると聞く」

チェイス「だが、だれかに話をするだけでも、心が軽くなるという事も、人間にはあると聞く」

チェイス「それに……紅が言うように、俺たちは、死んだ者同士の仲間だ。叶う事なら……俺はお前とも、紅とも乾とも……」

チェイス「…………ダチに、なりたいと、思っている」

真司「……!」

音也「ほう」ニヤリ

巧「…………」

チェイス「ダチになる相手の事は、ちゃんと、知っておきたい。それがどんな事であろうとだ」

チェイス「……お前が背負って来たものを……俺にも、分けてはくれないか?」

真司「…………っ……くッ……ッ!」ゴシゴシ

音也「あーーあーー! 泣ーかしたー泣ーかしたー! せーんせーにーゆーてやろー!」

巧「あんたはちょっと黙ってろ」

チェイス「……すまない、泣くほど嫌らなば、この話は……」

真司「ち、違う違うっ……! ただ、ちょっと、嬉しくて……! ずっと、張り詰めた思いで戦ってたから……!」グスッ
70 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:14:35.14 ID:Tatc61Xu0


チェイス「……話してくれるのか?」

真司「ッ……あぁ、いいよ。ただ、とても信じられないだろうけど……」

巧「……何が、あったんだよ?」

真司「…………皆さ、どんな願いでも一つだけ、叶える事ができるとしたら、何を願う……?」

巧「どんな願いでも? ……急に言われてもな」

音也「そうだなぁ、俺ならやっぱり、絶世の美女を1000人ぐらい呼んで俺の演奏会を開くことだな! 勿論、俺を除く男子禁制な!」

巧「勿論の意味が分からないんだが……」

チェイス「……俺は……仲間達の幸せな日々だ」

音也「まーたそんなお前ー、優等生すぎるぞー? もっと自分の欲求に従えぇい!」

チェイス「? 従っているつもりだぞ?」

巧「無欲だなお前……」

チェイス(……特に、剛には幸福に生きてほしい……今まで、ずっと辛かった筈だからな……)

チェイス(全てを忘れて、霧子や進之介達と静かに過ごしてくれていれば……十分なのだが)

真司「そっか……みんな割と、素朴な願いだな」ハハ

真司「……じゃあさ、もし叶えたい願いが、そんなレベルのものじゃなくて……本っ当に、『何を犠牲にしてでも』叶えたい願いだったら?」

巧「あ……?」

チェイス「……どういう意味だ?」

真司「…………例えば、意識不明の恋人を助けたいとか、自分の不治の病を治したいとか……さ」

音也「そりゃあまぁ、叶えられるなら、叶えたいんじゃないか?」








真司「…………それが、殺し合いの末に手に入る権利だったとしても?」



チェイス・巧・音也「「「……!?」」」





真司「今から話すのは……一人の願いを叶えるための……」




真司「大勢の人間の、願いと命を踏み躙った……『仮面ライダー』と呼ばれる人間達の……最悪の戦いの話だ……」


71 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:16:02.77 ID:Tatc61Xu0


◇1時間後……◇





巧「…………なんなん、だよ……それ……」

チェイス「………………」

音也「……っ……!!」ギュゥ



真司「…………で、そうして俺は死んで、蓮は……あの後どうしたのかは分からないけど……」

真司「多分、戦いに行ったんだと、思う……。……これで、話はおしまい」

真司「……やっぱり、信じられないでしょ?」

巧「…………あんたの、話してる時の顔が演技だとするならな……もしそうなら、俳優になれるぜ城戸さん……」

音也「信じる他無いのは、分かってる……お前がこの状況で嘘をついてる可能性は、限りなく低い……」

音也「だがっ……! いっそ嘘であってほしいぜ、こんな……!! 信じたくもねぇッ、こんなイカれた話っ!!」

音也「狂気の沙汰にも程があるだろうが……!!」グググ…

真司「……そうだよな……そう思うよなぁ。だから、俺も必死になって、誰も犠牲にならないでいい方法を探しながら……」

真司「ずっと、戦ってた……モンスターと戦って、ライダーと戦って……友達と、戦って……」

真司「……でも……ダメだった。自分自身の考えに、答え……みたいなものは出せたけど……結局、死んだら……終わりだもんな……」



————ダアァンッ!!!



真司「ッ!!」

音也「……!」

巧「……チェイス……」



チェイス「…………何だと、いうのだ……!」ブルブル

チェイス「何故だ……!? 何故そいつ等は……城戸の言葉に耳を貸さない……!?」

チェイス「神崎四朗や、浅倉猛という男は元より……! どんな理由であれ、自分の願いのために他人の命を犠牲にするなど……人間のルールに反するッ!!」

チェイス「自分達のやっている事に、少しも疑問を抱かなかったのか……!?」

72 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:17:20.71 ID:Tatc61Xu0


真司「…………疑問を抱くような良心を、最初から持ち合わせてない奴もいれば……」

真司「疑問を抱いてるような余裕が無かった奴もいるし……疑問を抱いても、見ないフリをするしかなかった奴もいたんだよ……」

チェイス「しかし! そもそも神崎四朗の目的が妹に命を与えることなら! ライダーバトルに参加している人間が、ただの使い捨ての駒だという事は明白だ!!」

チェイス「その事実を知らないライダー達にしてもッ! 願いを叶えてくれる保障など無い事になぜ気づかないのだ!?」

巧「おいチェイス! 落ち着けよ……!」

真司「……気付てる奴だっていたさ。気付いてないまま戦ってる奴の方が、少ないかもしれない」

真司「でも、それでも戦うことしかできないから、皆、戦ってたんだ……」

真司「手塚が言ってたよ……『神崎士郎の言葉に賭けるしかない奴だけが、ライダーになれる』……って」

チェイス「……っ……!!」




チェイス(何故……何故だ……!? 『ライダー』という言葉を聞いて……もしや城戸も、進之介や剛のように……)

チェイス(誰かの幸せのために戦う、『仮面ライダー』を知っているのかと思えば……!!)

チェイス(これは何だ!? こんなにも優しさと正義に溢れた男がっ!! どうして、こんなに重く冷たい業を背負わされている!?)

チェイス(……同じ名前を冠する……戦う戦士だというのにっ……!!)

チェイス(経緯が違うだけで……これほどまでに……違ってしまうものなのか……!?)ギリィ…


73 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:18:32.04 ID:Tatc61Xu0



真司「皆が皆……自分の願いを叶えるために、戦ってた……だけど、そんな中に、何の願いも抱いてない、俺が割り込んだ」

真司「人を守りたかった……誰も死なせたくなかった……」

真司「……でも、中身の無い俺の言葉が、皆の心に届くわけがなくて……」

真司「編集長に諭されて……蓮と一緒にモンスターと戦って……小さな女の子一人を助けて……やっと、答えらしいものが出たけど……」

真司「何もかも……手遅れだったんだ……」

音也「…………ッ……」

真司「……俺、結局何ができたのかな……? 俺が戦ってた事って、なんか……意味あったのかな……!」

真司「俺があの戦いに居たことは……いい事じゃなかったんじゃないかって……!!」

巧「!! 城戸さん、それは……!!」

真司「だって俺……! 死なせないって誓った奴ら……皆、死んじゃっ、てっ……!!」ジワ…

真司「手塚に、だって! 逆に、助けてっ、貰って!!」ポタ…

真司「優衣ちゃんだって、目の前で、消えちゃったし……!!」ポタポタ

真司「俺、ほんとバカだからさ!! 俺じゃない、誰かならっ! もっと、うまくやれたんじゃって……!!」ポロポロ

真司「もっと沢山、守れたんじゃないかって!!」ポロポロ

真司「…………今じゃ、そんな事ばっかりが……頭ん中をぐるぐるぐるぐる……!! ずっと……!!」ボロボロ…





チェイス「  違  う  ッ  !!!!」




真司「!!」ビクッ


74 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:20:06.59 ID:Tatc61Xu0


チェイス「お前がその戦いに居たことが、良くないことだった……!? そんなはずはない!!」

チェイス「お前が救ってきた命は、沢山あったはずだ!! 最後に助けた少女は、お前が居なかったらどうなっていた!?」

真司「っ…………」

チェイス「お前ではなく、他の誰かなら!? お前のような強い意志と優しさを持った人間が、そうそう居るものか!!」

チェイス「お前だったからだ!! 他の誰でもない……城戸真司という男だからこそ、守れた物があったのではないのか!?」

真司「……だけどっ……!」

音也「…………」

チェイス「秋山蓮と言う男は! お前が居たからこそ、他のライダーのように、手を血に染めずに済んだのではないのか!!」

真司「……でもその代わりに……蓮の恋人は助けられなかったかもしれない……!」

音也「なら、お前が止めずに、誰かを殺し続けて、願いとやらに近づいていくそいつを、黙って見てれば良かったってのか?」

真司「……音也……それ、は……」

チェイス「…………」

音也「もしそうなっていたら……そいつはきっと、死んでいただろうな」

音也「……心が、な」

真司「……心、が……?」

音也「確かに、お前は沢山の命が消えていくのを見たかもしれん……だが、本当にそれだけだったか?」

音也「お前の言葉と行動に、微塵も反応しない奴らばかりだったのか?」

真司「それは……」

音也「お前の友だった蓮は? 子供の医療費を肩代わりするような北岡は?」

音也「……血も涙もない人間しか居なかったか?」

真司「……違、う……」

音也「だろうな。……そいつらは、お前が居たから、願いは叶えられなかったのかもしれんが……」

音也「お前が居たから……心まで死なずに、済んだんじゃないのか?」
75 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:21:38.88 ID:Tatc61Xu0


真司「…………そう、なのかな……俺は……守れて、いたのかな……?」

巧「……十分だと思うぜ。そんな異常な環境で、人の心を変えるなんて……俺だったら、できない……」

巧「変えようと努力しようと、思ったかどうかすら……微妙だ……」

巧「正直に言って、尊敬するよ……あんたみたいに、最初から最後まで、誰も傷つけない戦いを選び続ける人間なんて……」

巧「この世に一握りしかいないだろうに……」

巧「……俺から見れば、あんたはヒーローと変わらねぇよ……」

真司「っ!! それは違う! 俺はヒーローなんかじゃない……あの戦いに居た人間に、正義なんて無い……!」

巧「っ……! 何でだよ……!! 何でそんな風に考えちまうんだよ!! あんたが、あんたの生き方が、正義じゃないってんなら……!!」

巧「……ッ……俺はいったい…………どうなっちまうんだよっ……」

チェイス「乾……?」

巧「…………あんたが認めなくったって……他の誰もが『違う』と言ったって……!」

巧「俺はあんたを…………!」





巧「正義の味方だと……思うよ……!!」




真司「!!! …………ぅ、っぐ、う……!」

チェイス「……お前はただ、自分の信じる『人間のルール』に、必死に従って生きた」

チェイス「俺がこう言っても、お前は否定するかもしれんが……」

チェイス「お前は本当に良く……頑張った……!」

音也「……安心しろ。ここに居る3人とも、お前の行いを否定する奴はいない……いい加減によ、許してやっていいんじゃないか?」

音也「……お前自身の事を」

真司「…………ぐっ……ぇぐ……ひっぐ……! あ……とう……!!」ボロボロ

真司「……あり、がとうッ……!!」ボロボロ

音也「…………」ポンポン

巧「…………」

チェイス「…………どういたしまて、だ……」


76 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:22:58.52 ID:Tatc61Xu0



◇10分後……◇



音也「……さて、巧。お前は何があった」

巧「えっ……いや、俺は、別に話すことは……」

チェイス「お前は今、城戸が正義でないなら、自分はどうなるのか……と言っていたな」

巧「……覚えて無くていいことを……」

チェイス「お前の事も、聞かせてくれないか。……どうして、命を落とすことになったのか」

巧「………………」

巧(…………とんでもねぇ話聞かされた後だしな……俺の話が信じられないってことは、無いだろうし……)

巧(……この流れで俺だけ話さないってのもな……)

巧(これから一緒に過ごしてく連中なら……確かに、自分の事を隠したままにするのは……無理があるし、辛いよな……)

巧(……話して俺への態度が変わったら……まぁ、その時はその時だな。それが普通だろうし……)

巧「……城戸さんの話と同じくらい、信じられないような話だぞ?」

音也「今更驚くことなんてそうそう無い。いいから話してみろ」

真司「……巧君も、俺の話っ、聞いてくれたから……次は俺が、聞き手に、なりたい……な」グシグシ

チェイス「…………」コクリ

巧「……わかった。……ただ、最初に言わせてくれ」





巧「……俺を嫌いになる準備、しとけよ」

真司「え……」

チェイス・音也「「…………」」
77 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:24:44.70 ID:Tatc61Xu0


巧「……何から話せばいいんもんかな……」

巧「………………俺はな、ガキの頃に……一回死んでるんだよ」

音也「一回、死んでるだと……?」

巧「……火事が起きてな。でも俺は生き返った……人間を超えた……進化した生命体として」

チェイス「! ……乾、それはひょっとして、最初にお前が俺に訊いてきた……」

巧「……あぁ。その生き物が生まれる条件は……死んだ人間だ」

巧「本来の、寿命を迎える以外の、何かの理由……事故とか、病気とか。そういう事で死んだ人間が、低確率で蘇生して、覚醒する……」

巧「……それが……『オルフェノク』だ」

真司「……オル……フェノク?」

巧「この話は……そのオルフェノクに覚醒した人間達と……」

巧「そのことで、人生を狂わされて……それでも必死に生き抜いた皆……俺の仲間達の話で……」

巧「…………俺の……罪の、記憶だ……」




◇1時間後……◇




巧「…………そうして、木場は死んだ。王は倒したけど……失ったものは……多すぎた」

真司「……っ……」

音也「…………」

チェイス「……それでお前は、どうなった……?」

巧「…………スマートブレインの人体実験の影響もあったし……赤いファイズの形態になるのも、どうもリスクがあったみたいだったからな」

巧「その上、元々オルフェノクに覚醒した時期自体、大分昔だ……寿命なんて、ほんの数日分しか残ってなかった……」

巧「……王を倒して、何日かして、真理と啓太郎と俺で、土手に行ったんだ……啓太郎がさ、晴れてるから日向ぼっこしに行こうよ、なんて言って……」

巧「3人で川の字になって、太陽を浴びてたんだが……手を日にかざしたら、灰が零れ落ちた……」

音也「……オルフェノクの、死の予兆か……」

巧「……もう限界だって分かった…………でも、この灰まみれの手を透けたあの太陽は……本当に綺麗で、暖かくてさ」

巧「隣にいる真理と啓太郎が、毎日平和に、これを見られる世界を守れたなら……俺達のやってきた事に、価値はあったのかもなって、思ったりもした」

巧「でも……やっぱりどうしても考えちまう……その平和が……」

巧「仲間と……俺が殺してきたオルフェノク達の死によって成り立っているものなんだと思うと……」

巧「気持ちが……黒く塗りつぶされて行くんだ……」

チェイス「…………」
78 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:27:02.65 ID:Tatc61Xu0


巧「……敵も、仲間も……沢山の『人間』が死んだ……」

巧「人間を超えただの……新しい生物の頂点だの、怪物だ、化け物だって言ったってよ……」

巧「そんなのはただ……身に余る力を手に入れただけの……だたの人間だ」

巧「皆……ただの人間だったんだ……!」

巧「……だけど……その力を得ちまった人間は……普通の人間を襲う……黙って見てたら、何も悪くない人たちが殺される」

巧「…………だから、俺は殺した。自分と同じオルフェノクを……同じ人間を……この手で……」

巧「人間を守るために、人間を殺したのさ……守ることと戦う事ってのは、どうして矛盾すんのかなぁ……」



チェイス(……これが……乾の過去……乾の、罪の記憶……)

真司(……俺が正義じゃなかったら、っていうのは……こういう事だったのか……)

音也(……たかが18のガキが背負うようなもんじゃないぞ……ったく、神様ってのはどうしてこうも残酷なんだろうなっ……)



巧「……こうしてる今でも、時々……両手から灰が零れ落ちてる感覚がすんだよ」

チェイス「!!」ガタッ

真司「な、それって!?」

巧「……! いや、違うぞ? 俺の体が灰になってるわけじゃないからな!」

真司「そ、そっか……なら良いんだけど……」

チェイス「……驚かすな」ストン

巧「…………俺が言ってんのは、さ……」





巧「……倒したオルフェノクの、灰の感触が……消えてくれないって、事なんだよ……」ギュッ…



チェイス・真司・音也「「「………………」」」



巧「……俺の話は終わりだ。ご感想は?」

音也「…………」

真司「…………」

チェイス「…………」

巧「…………」

79 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:28:47.21 ID:Tatc61Xu0


巧(互いに顔を見合わせて……何も言わないか……)

巧(まぁ、そりゃあそうだろうな。化け物である上に、人殺しだからな……)

巧(…………なんとかして、明日にはここを出るか。外に何があるか、わからねぇけど……)

音也「…………」チラッ

真司「…………」コクリ

チェイス「…………」ウム

チェイス「…………乾」

巧「…………何だよ……」

音也「ちゃんと前を見ろ」

巧「……チッ……何だよ……」ジロ

チェイス「悪ぶるな。そんな事をした所で、俺達はお前を悪者だなどと、微塵も思わん」

巧「……は?」

真司「多分、っていうか確実に、俺達の考えてる事、同じだからね……」

音也「そういうことだ。分かったらちゃんと椅子に座れ。体をこっちに向けろいっ」

巧「な、なんだよっ、何が言いたいんだよ……」

音也「ったく、分からん奴だなぁ。おい真司、こいつの最初の発言に対する答えを言ってやれ」

真司「合点承知! ……あのね、巧君。俺たちは……」




真司「君を嫌うなんてこと、絶ーーーっっ対、ありえないから!」ニッ

巧「……!!」

チェイス「うむ」

音也「良ーく言った! 大儀である! 褒美にお前が寝るときにお休みの演奏をしてやろう!」

真司「それはいらない」

巧「……話聞いてたのか!? 俺はオルフェノクっていう怪人で————」

音也「それが何だ? お前散々『オルフェノクはただの人間だ』って言ってたろーが」

巧「怖いとか、思うだろ普通!」

音也「悪いが俺は生前、人間の魂を食らう狼男とダチになった男だっ! そんな俺が人を襲わない化け物をわざわざ怖れる理由が無〜い!」ヘラヘラ

真司「なんだそりゃ。……巧君は悪い人間じゃないわけだし、ましてや、そのオルフェノクの姿を見てもないし、怖いとは思わないなぁ」

真司「仮にその姿を見たとしても、俺は怖いなんて思わないよ。巧君だって分かってれば。言葉も通じて優しいって時点で、ミラーモンスターとは雲泥の差だよ!」

巧「や、優しいって、俺のどこがだよ!」

チェイス「お前が優しくなかったら、倒したオルフェノクや、死んでいった仲間達の事で、思い悩んだりはしないのではないのか」

巧「…………人殺しなんだぞ」

真司「……巧君達には、それしか手段が無かっただけだろ? 巧君の選択が正しいとは、言えないのかもしれないけど……」

真司「俺みたいに、誰も殺したくないって言って、放置するのが正しいのかと言われれば、それも違うでしょ」

音也「誰もやりたがらない、でも誰かがやらなきゃならない事を、お前は自分から背負い込んだ……」

音也「誰にでも、できることじゃないだろ」

チェイス「お前も城戸と同じだ、自分を責めすぎるな。お前がそれ程までに、罪の意識を抱くことはない」

巧「っ………………」
80 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:29:54.44 ID:Tatc61Xu0


チェイス「……乾」

巧「…………気持ちは、嬉しいよ。そう言ってくれると……少しは、気が楽になる」

巧「……だけど、俺が罪の意識を捨てる事は、無い。それは絶対に無い。捨てていい物じゃない……」

巧「これは、俺が一生……って言ってももう死んでるけど……背負っていくべきものだ。戦う事の罪は俺が背負うって、あの時誓ったんだ」

チェイス「…………」

巧「だから、俺はこのまま、この痛みを背負い続ける。誰に許してもらっても、俺はこの荷物を降ろす気はない……」

真司「巧君……」

巧「でも……その気持ち自体には、一応……礼は言っとく。…………ありがとな」

音也「……あまり思い詰めすぎるんじゃねーぞ? 吐き出したい時は俺に言え」

真司「俺にもね! 何も言ってやれないかもだけど……愚痴ぐらいは聴くからさ!」

チェイス「俺もだ」

巧「……っ……おう……」フイッ

81 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:31:19.55 ID:Tatc61Xu0


チェイス「では、今度は俺も話そう」

音也「おっ、やっとお前かぁ。俺的にはお前が一番良く分からんからなー。何考えてんのかが読めん」

巧「……そうだな。お前泣くときも顔の形変わらないくらい表情硬いもんな……」

チェイス「努力はしているのだがな……」

真司「悪い人間じゃ無いのは分かるんだけどねー。さっきも俺の話聴いて怒ってくれたし」アハハ

チェイス「悪くないように努めているし、人間でもないぞ」

巧「……んでもってこの、突然妙な冗談言ってくるノリな」

音也「謎なギャグセンスを飛ばす割に終始無表情で、無駄に真面目っぽい……まるで螺子が外れたポンコツロボットだな!」ハハハ!

チェイス「……不用意に相手が傷つくような発言は、控えるのが人間のルールではないのか」

音也「ハハ、そう怒るな。悪かった悪かった」

チェイス「確かに俺はロボットだが、心もあるのだ。傷つくこともある。それと螺子は外れていないし、ポンコツではない。いたって正常に作動している」

音也「悪かったってーそうムキに…………? お前今なんつった?」

チェイス「『確かに俺はロボットだが、心もあるのだ。傷つくこともある。それと螺子は外れていないし、ポンコツではない。いたって正常に作動している』……」

チェイス「と、言ったが」

真司「い、一字一句正確に……」

音也「…………ロボットだぁ!?」

巧「いや、冗談に決まってんだろ! ……冗談だよな……?」

チェイス「冗談ではない。本当だ。正確にはロイミュードという名称だが」

真司「……ま、まっさかー! どっからどう見ても普通の人間じゃんかー! (ヾノ・∀・`)ナイナイ」

音也「だよな。本当にロボットだってんなら、なんか証拠見せみぃ! デキネェダロ!」

チェイス「わかった」テクテク

音也「えっ」



チェイス「…………」ガラッ

チェイス「…………」カチャカチャ



巧「……おい、なんかキッチン行って食器漁りだしたぞ……」

音也「何始める気だ……?」

真司「……なんか、嫌な予感するんだけど……」

82 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:32:14.41 ID:Tatc61Xu0


チェイス「…………む、これがいいか」チャキ



テクテク



真司「何か持って戻ってきた……?」

巧「……!? ステーキナイフ、か……?」

音也「……おい、お前、それどうする気だ……」

チェイス「見ていろ」ペタッ

音也「……左手をテーブルに置いてー?」



スッ……



音也「右手のナイフを振り上げー……ってうおおおぉぉーいッ!!?」

真司「ちょちょちょちょ!! 何やってんの!? 指でもツめる気かよ!?」ガシッ!

巧「何なんだお前は!! 何がしたんだ!?」

チェイス「……ロイミュードの体内は鋼で形成されている。このようなナイフで傷を負えば、内部の鉄製の機器類とぶつかり火花を起こす」

チェイス「それを見れば信じるだろうと思ったのだが……」

巧「お前キャラ作り必死すぎだろ!! どんだけロボット設定で行きたいんだ!!」

真司「分かったから!! もう分かったから!! 君十分キャラ立ってるよ!!」グググ…!

音也「大体お前ロボットだとしても自傷行為してその後どうする気だ!! 治せるのかそれ!!」

チェイス「……確かにそうだな。失念していた」パッ

真司「し、失念していたって……」ヘナヘナ

巧「お前、大丈夫か……!? 本当にどっかやられてんじゃねーのか!?」

チェイス「すまない……その内メディックに治してもらえば良いなどと考えていた。彼女らには、もう会えないというのに……」

真司「誰さメディックって……」ゼェゼェ

83 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:34:09.82 ID:Tatc61Xu0


音也「お前なぁ……! さすがにこれは引くぞ!? 証拠見せろっつったらお前、普通こう、ロボットにしかできない事だろうが!」

チェイス「……と、いうと?」

音也「……ロケットパンチとかぁ、ジェットで空を飛ぶとか……目からビームとか! できねーだろ!? よってお前はロボじゃない!」

巧「おい! 下手な事言うなよ! こいつ腕ぶった切って『ロケットパンチだ』とか言いかねねーぞ!」

真司「さすがにそれは……無いよね!?」

チェイス「……ロケットパンチ……ジェットで空……目から————!」

チェイス「目からビームは出せないが、映像なら出せる。それで構わないだろうか?」

巧「ほら見ろ! なんかまたやる気だぞ……!」

真司「目から映像……!? どゆこと!?」

音也「……ははーん分かったぞ! 『俺の目を見ろ。お前が映っているだろう』的なジョークだろ! 分かったからもうロボごっこは終わりだ!」

チェイス(……記憶データ、オープン。現在から遡って……先ずは、3カ月ほど前の時でいいだろうか……)

チェイス(記憶映像の読み込み開始……完了。空間ディスプレイ出力準備……完了。投影開始まで……2、1……)




チェイス「……!」カッ!!




ピカァッ!!




音也「のわあぁ!?」ドテッ

真司「へ……!?」

巧「は……はぁ……!?」




ブウゥン……




映像『……「ただいまー。霧子ー、昼飯買ってきたぞ……っていないじゃん」「霧子なら書類を届けに出て行ったぞ」』

映像『「ん? おぉ、チェイス。来てた、の……かっ……!?」ガタタッ! 』

映像『「今お前のノートパソコンを借りているぞ」「み、見りゃ分かるけど……!! 何してんの!?」』




音也「」クチアングリ

真司「な、な、な、なん……!?」

巧「……マ、マジか……」
84 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:36:13.10 ID:Tatc61Xu0


チェイス「これは俺の記憶だ。俺の見たものを、そのまま映像としてし出力している」

音也「……ハッ!? ってことは何だ……お前、そんな、まさか……モノホンの、ロボットさん!!?」

チェイス「……最初からそう言っていたのが」

巧「……うっそだろぉ……スマートブレインにだって、こんな人間みたいな……」

真司「…………す、すげぇぇーーー!!! こ、この飛び出す映像も凄いけど!! ロボット!! ロボットだよ本物だぁ!!」

巧「ちょ、おい、城戸さん……」

真司「そっかぁーー!! チェイスっていうのはロボットとしての名前だったのかぁ!! いや疑ってごめんなっ!? でもすごいなぁ……!!」

真司「いやロボットってもう、それだけでかっこいいよなぁ!! あっ! 生まれて2年は経ってるって、チェイスがロボットだったからなんだな!!」バシバシ!

チェイス「背中を叩かないでくれ。映像がブレてしまう」

真司「ったくなんだよそうならそうと初めからはっきり言ってくれればいいのにぃー!! 水臭いぞー!!」ユッサユッサ!

チェイス「初めからはっきり言っていたぞ。キッチンの水が臭いのかは知らないが、揺らさないでくれ、映像が安定しない」グラグラ

巧「…………」

巧(マジのロボットだと分かった途端にこのはしゃぎ様……やっぱこの人、アホだ……)

音也「……だ……だいぶ、驚かされちまったが……オホン! まぁ、なんだ……映像付きでお前の話が聞けるなら、かなり解りやすくなるだろうな!」

音也「おい真司、揺らすのやめろ! あ、それとお茶入れてこい! 喉が渇いた!」

真司「おまっ、ついでのように人をパシりにするなよ! 」ピタッ

チェイス「何でもいいから見てはくれないか。今一時停止している」

真司「ちょ、映像出したままこっち向かないで! 眩しい!」

巧(一時停止できんのか……便利だなおい……)

音也「ほれ、さっさと行け! 4人分な! オラオラ行け行けッ!」ゲシゲシ

真司「痛! 脛っ、脛蹴るな! 分かった分かったよ! 次はお前行けよ!?」シブシブ

巧「……お前、人間の食い物とか大丈夫なのか?」

チェイス「問題ない。飲食によるエネルギー補給は可能だ。味覚も人間と同様にある」

音也「……で、この一時停止の画面に映ってるこいつ……誰?」

チェイス「…………この男は、泊 進之介という。俺に、沢山の人間の心とルールを教えてくれた……」




チェイス「……刑事で、仮面ライダーの、戦友だ」


85 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/29(火) 20:40:48.96 ID:Tatc61Xu0

今回は以上です。

……チェイスの話が終わってないのは私の責任だ。だg(ry
チェイスの過去は次回3人にお披露目です。

この4人は多分このSSにおけるメインみたいな扱いになります。
色々話すうちに他の死人キャラとも違う結束力みたいなものができていく予定。

音也の考えや過去について割と突っ込んだ考察してます。
苦手な人には、スイマセンでした。
110 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 19:44:02.54 ID:lY2+9QkX0


こんばんわ。8時に投下します。


>>92
うわぁーやっちまってたか……
なんとなーく何かが違うような気はしてたんですが、気付いた時は既に投下中だったという……
それと神崎士郎が神崎「四朗」になってましたね。スミマセン。


>>93
……奇行に走るチェイスとそれに慌てふためく3人の構図が書きたすぎて失念しとった……
000の形態は後々登場させるので許してくだちい。


>>100
何でこの4人かっていうと、死んだライダーで >>1が好きな奴って誰が居たっけー
ってふと思いついたのがこの4人だっただけで、バランスとか全然考えてませんでした。
自分でも書いてみるとわかる謎の調和性。ぶっちゃけ書いててチョータノシイネサイコー! って感じです。
112 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:01:08.43 ID:lY2+9QkX0


音也「刑事で……」

巧「仮面ライダー……って、それ、城戸さんの言ってた……!?」

チェイス「いや、それとは別物だ。城戸の言っていた仮面ライダーとは、偶々名称が同じだけで、そのあり方は根本的に違う」

チェイス「……俺の知っている仮面ライダーとは……人間の今と未来、夢と幸福を守護する者……」

チェイス「その身を粉にし……人間に、恐怖や絶望、痛みや悲しみを与えようとすると悪と、日夜戦い続ける……希望の象徴だ」

巧「……それが……仮面ライダー……?」

音也「……まるで映画のヒーローだな」

チェイス「…………そうだ。その通りだ。進ノ介も、剛も……まさしく、人間達にとって……そして、俺にとって」

チェイス「……英雄そのものだった……」

巧「……………」

音也「……この、なんか焦ってるような顔した、アホっぽい奴がかぁ?」

チェイス「……進ノ介はアホではない。刑事の仮面ライダーだ。強く気高い男だ。アホではない」

音也「うわっ、こっち向くなっつの! 前が見えん!」

巧「……お前は、その刑事で仮面ライダーの……泊進ノ介と、どう出会ったんだ?」

チェイス「……最初に出会った時は、敵同士だった」

巧「! 敵……?」

音也「うひー、目がチカチカしやがる! ったくもー……」

音也「……で、何で敵だったんだ? お前見かけによらず、お巡りさんの厄介になるようなやんちゃロボだったのか?」

チェイス「……そうだな。あの時は本当に、迷惑をかけてしまった」

チェイス「……続きは城戸が戻ってから続けよう。……城戸には、辛い話になるかもしれんが……」

巧「? なんでお前の話が——! あぁ……そういうことか……」

音也「……同じ名前の仮面ライダーが、片やヒーローで片や殺し合いの参加者じゃな……」

巧「……でもまぁ、大丈夫じゃないのか? ある程度は吹っ切れたみたいだし……」

巧「また落ち込むようなら、俺達が適当にフォローすりゃいいだろ」

音也「……クク、自然にそういう意見が出てくるお前も、御多分に洩れずお人よしだな?」

巧「っ……ほっとけ!」

音也「さて、そんじゃお茶を待つとしますか。ふぅーよっこらせっ○す」ギシッ

巧「おいやめろ」ギシッ

チェイス「……よっこら○っくす……とは、何だ?」ギシッ

巧「限りなくどうでもいい知識だから、お前は知らなくていい」

音也「いいか? これはな、『よっこらせ』という掛け声の、最後の『せ』の部分と『セッ——」

巧「やめろっつてんだろ!?」

113 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:02:34.82 ID:lY2+9QkX0


真司「おい音也っ! 淹れたきたぞお茶!」カタカタ

音也「おぉ、ご苦労ご苦労! ほら、早く並べろ」

真司「自分で取ってくださる!? ここに置いとくからっ!」カチャン

音也「お前なぁ、客にお茶出して、盆ごと置いて自分で取れなんて言う家政婦が居るか?」

真司「客って何!? 俺家政婦じゃないんだけど!?」

真司「いいじゃんかよ! 俺もう今座っちゃったよ! 手を伸ばせば届くだろ!」

音也「チッ……まったくもう! 真司のくせに生意気ねっ!」グイー

真司「おん前っ……! やーめた! お前にはあーげなーい!」ヒョイッ

音也「あっ! てめぇ大人げねーぞ!? 俺を誰だと思ってんだ! 紅音也様だぞ!!」

真司「お前が音也様なら俺はスーパー真司様様だもんね! バーカ!!」

音也「俺がバカァ!? ならお前は究極馬鹿、アルティメットバカだなブゥァアーーカ!!」

真司・音也「「ぐぬぬぬぬぬ……!!」」

巧「いや、あんたら二人とも馬鹿だよ……同レベルの……」

チェイス「…………」クルッ




ピカァッ!




真司「うわぁ! また眩しい!?」

音也「おい! 目が悪くなったらどうする!?」

チェイス「……紅。お茶を持ってきてくれた城戸には、素直にありがとうを言うのが、人間のルールではないのか」ピカピカ

音也「あ、はい……」マブシイ

チェイス「城戸、飲み物を持ったまま、無暗に暴れるのは、良くない事ではないのか」ピカピカ

真司「ス、スイマセン……」マブシイ

チェイス「……バカと言ったら、自分がバカなのではないのかっ!」ピカピカ

真司・音也「「…………ごめんなさい」」

巧(…………生まれて数年しか経ってないロボットに正論を言われて、小学生レベルのケンカを止める23歳……)

チェイス「……話を始めていいだろうか?」

音也「お、おう……」

真司「……あ、音也、お茶……」コトッ

音也「えっ、あぁ……すまん、な」

真司「……2人も、どうぞ」コト、コト

巧「……サンキュー」

巧(……めっちゃ湯気立ってら……)フーフー

114 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:03:45.35 ID:lY2+9QkX0


チェイス「ありがとう。では、話そうか」

チェイス「……事の発端は、今から1年半程遡る。……雨が降りしきる日の事だった」

チェイス「人類の滅亡を企む人口生命体、『ロイミュード』が、世界の各地で、徒党を組んで襲撃を開始した」

チェイス「この事件は後に、『グローバル・フリーズ』と呼ばれ、今でも人々の間で、未曽有の大事件として記憶に残っている」

真司「人口生命体が……人間を襲撃!? 世界規模で!? そんな話、聞いた事も……!」

巧「ロイミュードって……さっきお前が自分の事そう言って……!」

チェイス「そうだ。俺は、その時人間を襲撃したロイミュード達とは、違う目的で造られたロイミュードだが、本質は彼等と同じだ」

音也「……なるほど。それが、お前がやんちゃしてた事と関係するってわけか」

チェイス「うむ……俺は元々、そのロイミュードによる襲撃に対抗するために、『クリム・スタインベルト』と言う科学者によって生み出された存在だ」

チェイス「つまり、『対ロイミュード用ロイミュード』……と言ったところか」

チェイス「俺はクリムの開発した強化ユニット、プロトドライブシステムによって変身し、ロイミュード達に戦いを挑んだ」

チェイス「結果、各地のロイミュードを、完全に倒し切る事はできなかったが、撤退させることに成功し、人類滅亡の計画は未然に防ぐことができた」

チェイス「……だが、その時点でのクリムが開発したシステムは、プロトと名の付くだけあり、まだ未完成だった」

チェイス「グローバル・フリーズを生き残ったのも束の間……復活した敵の中でも、特に強力なロイミュードに、俺は倒されてしまった」

チェイス「……そいつの名は『ハート』……ハート・ロイミュードという名だ」

チェイス「どのように戦い、俺が負けたのか、今の俺には記憶が残っていないが……」

チェイス「本当に強いあいつの事だ。その時の俺は、手も足も出なかったのかもしれない……」



真司(…………なんだろ……自分がやられちゃった事を話すに、しては……)

真司(なんだか……嬉しそうに話してるような……?)




チェイス「ハートに敗北した俺は敵に拉致され、『ブレン』というロイミュードに洗脳を受けた」

巧「せ、洗脳って……」

チェイス「……機械的に言い直せばハッキングだ」

巧「……いや、別に言い直さなくていい。分からなくて言ったわけじゃないからな?」

チェイス「……そうか、では続ける。……そうして、俺は敵の側になってしまった」

チェイス「本来の敵を守り、本来の守るべきものに銃口を向けた……」

音也「…………」

チェイス「だが、今にして思えば……ブレンの洗脳を受けておいて、良かったと思う」

真司「えっ? なんでだよ!?」

チェイス「……敵がこちらに抱いている思いや、敵の背負っているもの、そして、敵が守りたいものの価値は……」

チェイス「その敵の立場になって、初めて分かるという事だ」

チェイス「……もし俺が、あの時ロイミュードの側についていなければ……ハートが……ブレンが……メディックが」

チェイス「どういう理由で人間を打倒しようとしているのか、知る由も無かっただろう」

チェイス「……何が好きで、何が嫌いで、何が楽しく、何が嬉しく、何が恐ろしく、何が悲しいのか……」

チェイス「何も知らぬまま……知ろうともしないまま……戦っていただろう」

チェイス「クリムに言われるがまま……自分が正義で、ロイミュードが悪と断じていたはずだ……」

チェイス「そして、この手にかけていたかもしれない……」

チェイス「今は……そうなってしまわなくて、本当に良かったと思う」

115 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:05:20.15 ID:lY2+9QkX0


チェイス「……俺を最初に『仮面ライダー』と名付けて呼んだのもブレンだったが……今思えば、これも運命的なものを感じる……」

真司「!? 仮面ライダー……!?」

音也「お前が知ってるのとは違うぞ。偶然同じ名前だっただけらしい」

巧「その名前……敵に付けられたのか」

音也「ってか、お前もその仮面ライダーだったのか」

チェイス「あぁ。最初は、ロイミュード達にとっての危険因子の名称として、外見の特徴を端的に表したものとして使われているだけった」

チェイス「だが……数奇なめぐりあわせにより……いつしかそれは、悪と戦う、心に熱き正義を宿す戦士達の総称として、人々に呼ばれるようになったのだ」

真司「……悪と戦う……正義の、仮面ライダー……」

チェイス「……話を俺の洗脳以後の事に戻すが、それから俺は、仮面ライダーだった頃の記憶を失い……」

チェイス「代わりに、ロイミュードのリーダー、ハートの意志に従わない身勝手なロイミュードを粛清する、死神として動いた」

チェイス「ここからは新しい映像を交えて説明しよう。長くなると思うが、よく聞いて欲しい」

チェイス「……特に城戸、お前には、しっかりと理解してもらいたい」

真司「……!」

チェイス「……死神としての役目を続け、半年ほど経った頃だった」

チェイス「俺はついに、この男と出会った……」パパッ



映像『……「危ない!?」ドガガガガガッ!! 「キャアァッ!?」』

映像『「くっ……! ……!?」チェイスの声「…………仮面ライダー、か」』

映像『「!!」チェイスの声「……俺の仲間を……やったな」』

映像『ガションッ! ギュンギュンギューン! ドドッドド! BLAKE UP! バチバチバチ……! ガシュイィン!!』

映像『「お前は……!?」 チェイスの声「俺はマシンチェイサー……ロイミュードの番人……同時に……」』

映像『チェイスの声「死神だッ……!!」「……!!」』

巧「! こいつは……!」

真司「……赤い戦士……もしかして、これが……!」

チェイス「……そう……俺のいなくなった後も、調整を重ね、ついに完成したドライブシステムと……」

チェイス「クリムが必死の思いで探し、厳選し続け、選び抜いた……新しい、正式なシステムの資格者……」

チェイス「……泊進ノ介……仮面ライダー、ドライブだ」


116 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:06:49.15 ID:lY2+9QkX0



◇1時間後……◇



映像『チェイスの声「…………これでいいんだ、剛」』

映像『「!?」チェイスの声「霧子が愛する者たちを守れるのなら…………本望だ……」』

映像『「っ!? ……っ……!!」

映像『チェイスの声「人間が俺にくれた……宝物だ…………俺とお前はダチではないが……」』

映像『チェイスの声「持っていてくれ…………燃えてしまうと……勿体ない……」』

映像『「……っ゛……!! ……っ゛……」』

映像『ガバッ!! タッタッタッタ…! バチッバチバチ!』

映像『「ヘェッハッハァ!!」チェイスの声「……ヌゥン……!!」ダンッ!! ガシィッ!!』

映像『「な!? うぐぅっ! はぁなぁせえぇぇぇ!!」チェイスの声「……グッ……うぅ……!!」』」

映像『「ぬうぅうああああアアアぁぁああアアァァァーーー!!!」』

映像『チェイスの声「ウオオオオォォォオオォーーー!!!」』




——————ブツンッ




映像『ザザザ……ザザ、ザザザッ……』



シュイィン……



チェイス「…………これが、俺の全てだ。あの自爆で、蛮野が倒せたかどうかは分からないが……」

チェイス「……剛は強い。きっと大丈夫だと、俺は信じている」

音也「…………そうか」

巧「……お前、すげぇよ……なんつうかその……本当に、ヒーローやってたんだなぁ……」

音也「……最初は人間のために戦って、次はロイミュードのため……そしてまた人間のために戦い……」

音也「最後にゃ両方のために戦って、友のためにその命を投げ出した……か」

音也「あっちこっち行ったり来たりはしたみてーだが……お前結局、他の誰かのためにしか、戦ってなかったわけだ」フッ

チェイス「…………言われてみれば、そうだな」フム

音也「表情が無くとも、そんじょそこいらの人間よか、よっぽど熱い魂があるじゃねーか」ニヤリ

音也「お前も、お前を造った博士も、文句なしのあっぱれな男だな……」

真司「…………っ……」

117 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:08:45.04 ID:lY2+9QkX0



チェイス「……城戸……」

真司「…………っ……」グスッ

チェイス「っ……確かに、俺が知る仮面ライダーと、お前が見た仮面ライダーは、まったく違うかもしれない……」

チェイス「だが、お前は……お前だけは……神崎の仕組んだ戦いに参加した中では……」

チェイス「……俺の知る意味での仮面ライダーを……名乗っていいはずだ」

チェイス「…………う、うっ……」グスグス

チェイス「……だから、もうこれ以上……そんな悲しい顔はしないd————」




真司「うわああぁぁぁぁああぁーーーっ!!!」ダバァーーッ!

音也「うおっ!?」

巧(……おいおい……)

チェイス「す、すまなかった城戸! やはりお前の気持ちを考えて、仮面ライダーの事は伏せるべきだったか……!!」

巧「……いや、これはそういう事じゃないんじゃないか……?」

真司「…………チェイスゥッ!!」ガシッ!!

チェイス「……!?」ビクッ

真司「…………お前は……お前って奴は……!!」










真司「なんて優しい心のロボットなんだあぁぁあぁあぁぁあ〜〜!!!」びえぇぇ!!





巧「ほらな……」

音也「あー……」

チェイス「……!? ……???」
118 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:11:46.07 ID:lY2+9QkX0


真司「うぅおぉぉおぉ……!! も、もうっ! 感動したっ!! 何もかもがっ、カッコイイよチェイスゥ!!」ユサユサッ

チェイス「……か、かっこいい? 俺がか?」グラグラ

真司「ラ、ライダーとしてっ! もう一度やり直すときの、決意とかっ! 失恋してもっ、『寧ろ痛みが心地いい』とか……!!」グスグス

真司「友達を助けるためにぃっ! 命、投げ出したりッ、最初から最後まで全部だよぉ!!」エグッエグッ

真司「おっ俺、ロボットの、こういう話の映画とか、弱いんだよぉおぉぉ!!」ヒック

真司「人間に憧れるっ、切実な気持ちとかっ! ロイミュードの仲間と、人間の仲間との間で、葛藤してるのとか!!」ヒックヒック

真司「もうっ……!!全っ部どストライクすぎるんだよ〜〜〜っ!!」オーイオイオイ

チェイス「どストライク……とは、どういう意味だ? 後、肩が痛いぞ」グラグラ

真司「もうね、もうね……!! チェイスね……お前ねっ……! 偉いッ!!」バンッ!!

チェイス「うぐっ……! ……俺は……偉い、のか?」

真司「そうだよ偉いよ!! 迷って迷って……それでもちゃんと答えを出して、自分の決めた、仮面ライダーのルールを貫き通して……!!」

真司「お前は偉い!! 偉いんだよおおぉォォ〜〜〜〜っ!!」ワシャワシャワシャワシャ!!

チェイス「……何故俺の髪を乱しいるのだ?」グワングワン

音也「……撫でてるつもりなんだろ」

巧「おい、止めてやらなくていいのか、これ」

音也「俺は嫌だ! 面倒くせぇ!」

巧「……はぁ……おい城戸さん! 程ほどにしろよ! チェイスが困ってんだろ。ってかあんた今日泣いてばっかだな!」グイッ

真司「えぐっえぐっ……ゴ、ごめんなチェイス、ちょっと興奮しちゃって……」ズルズル

チェイス「いや、別に構わない」←髪グシャグシャ

119 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:12:55.22 ID:lY2+9QkX0


チェイス「……それより、気にしてはいないのか?」

真司「グスッ……? 何が……?」フキフキ

チェイス「だから、お前の知るライダーと俺の知るライダーの違いについて……なのだが……」

真司「ヂーーンッ!! ぷぇっ! ……別に、そこまで重く考えてはいないよ。むしろ嬉しいかなぁ」

音也「!」

巧「……嬉しい?」

真司「あぁ! だってさ、同じ『仮面ライダー』の名前でも、誰かのために、人を守るためだけに戦う人たちもいるって知れたんだ」

真司「……さっきまで、もう俺にとっての仮面ライダーっていう名前は、嫌な記憶を思い出させる、悪い言葉でしかなくなりかけてた」

真司「だけどっ! チェイス達が歩んできたライダーの在り方を知って……なんていうか、俺の中のこの名前に、別の、いい価値が生まれたんだ!」

真司「もう、俺は死んでるけど……ここで暮らすうちは、俺はいい意味での……仮面ライダーらしく過ごすよ!」ニヒッ

チェイス「……!! ……そうか。それなら良いんだ」

音也「…………」フッ

巧「へっ……泣くのは今ので最後にしてくれよ?」

真司「う、うるさいな! 感受性が豊かなんだよっ!」

巧「クハハハ……! …………」

チェイス「……どうした乾?」

巧「っ! いや、別に。何もないぞ」

チェイス「……? そうか」





巧(…………仮面ライダードライブ……泊進ノ介……泊、進之介……)

巧(仮面ライダーマッハ……詩島剛……詩島霧子……剛……)

巧(…………妙だなぁ……知ってる訳ねーってのに……どっかで聞いたような、会ったような……)

巧(……ま、気のせいに決まってるか)

120 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:15:01.41 ID:lY2+9QkX0


真司「……でもさー、今更疑うわけじゃないんだけど、チェイスの話って、本当なんだよな?」

チェイス「本当だが?」

巧「何だよ、なんか気になるのか」

真司「うん……だってさ、俺、東京に住んでるんだけど、グローバル・フリーズなんて事件、知らないんだよ」

真司「そんな大規模な事件が起きてるんなら、絶対知ってるのに。オルフェノクの話もそうだよ。噂位知ってていいはずなのにさ。おかしいだろ?」

チェイス「…………」

巧「…………」

音也「……お前、今更言ってんのかよ」

真司「え? えっ?」

巧「今の今まで分かってなかったのか……」

真司「な、何が?」

チェイス「……城戸、お前が死んだ年は……西暦何年だ?」

真司「え? 2002……ん? いや違うか、2003年だよ」

チェイス「……俺は2015年だ」

真司「え!?」

巧「俺は2004年な」

真司「え、えぇ!?」

音也「やっぱり俺が一番の古株か……俺はな、1986年だ! つまりお前らよりずーっと早く生まれてるんだほら敬え!」

真司「……えええぇぇぇっっ!!?」

真司「ちょちょ、え!? どういうこと!? じゃあ、ここに居る皆、死んだ時代はバラバラって事!?

巧「時代だけじゃないな、多分。なんつったけ……」

巧「パラ……パラソルなんちゃら……いや違うとは思うけど、そんなような言葉あるだろ?」

巧「いくつもの世界がどーこーってヤツ……要は、住んでた世界そのものが違うんじゃねーか?」

チェイス「俺は、巧の経験したオルフェノクと人間の抗争について、まるで知らない。いくらスマートブレインや警察機関が隠ぺいしたとしても……」

チェイス「お前の言う通り、多少なりとも何らかの噂が残っていてもいいはずだ。だが、そんな情報は全く聞いたことが無い」

チェイス「ましてお前の、ミラーモンスターが現実世界に大量出現した件など、絶対に何かしらの情報が残る」

チェイス「だが実際には、俺はそんなものを知らない」

巧「お前の年の直後に死んでる俺も知らないぜ。鏡に人が消えるなんて噂があったら、真理や啓太朗が真っ先に話題に出しそうだ」

音也「第一、世界が滅びかけるような摩訶不思議大事件が、地球上でそうポンポン起こってたまるかってんだ」

音也「俺達は互いに、まったく違う『別の世界』からここに来た。恐らくな」

真司「えぇぇ……!? い、いやでも、そんなあの世ってある!? 普通じゃないよ!」

巧「普通じゃないって城戸さん……逆にどんなのが『普通のあの世』なんだよ? そんなの、俺達人間が勝手に想像してただけの事だろ?」

音也「これが実際のあの世なのかもしれんぞ? 時間も、世界の概念も飛び越えて送られる……何が起こるかわからんスリルがあるな!」

巧「スリルって……あんたは呑気だな……」

真司「マジかぁ……パラソルワールドだったかのか……」

巧「だからパラソルは違うって」

121 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:17:59.86 ID:lY2+9QkX0


音也「何にせよ、恐らくまだまだここに来る死者はいるはずだ。というかいてくれ。野郎4人で共同生活とかさすがにきっついわぁ!!」

音也「できれば美しい女が同じく4人は欲しい! あ、これはお前らに分けるために4人なわけじゃないぞ?」

音也「お前らが放つむさ苦しい匂いを浄化して相殺するためだ。1人もやらん!!」

巧「何の話をしてんだ!? いらねーよ! っておい、第一あんたにはその運命の女がいたんだろ? 本当に浮気じゃねーか!」

音也「馬鹿を言うな! あいつとはしばらく……いや、ひょっとするともう永遠に会えん。つまりは終わってしまった恋だ。いくら俺に愛があろうがな」

音也「だから俺はまた新しい恋を探すのだ! 真夜との愛を超えるものがそうそう見つかるとも思えんが、恋は常に迷路だからな!」

音也「砂漠の荒野からたったひとつの宝石を探し当てた時、俺の世界はまた……美しい草原へと変わるのだァー!!」

巧「いやどっちにしろ他の女に行くんじゃその人にとってみりゃ浮気————」

音也「巧……世の中に、こんな言葉があるのを、知っているか?」

巧「はぁ?」

音也「それは、それ」スッ

音也「これは、これ」ススッ

巧「……あんたって奴は……! 話してると頭が痛くなってくるぜ……!!」ズキズキ

音也「真夜は俺と言う男をちゃんと理解している。自分のせいで俺があの世で寂しくしてるなんて知ったら、それこそ悲しむ!」

音也「新しい人生を……いや、人死を満喫して欲しいと、あいつは願っているはずだ! だから俺はその通りにするだ〜け〜さぁ〜〜♪」

巧(人死って何だよ……死後って言えよ……!)

真司「……にしても、不思議なめぐりあわせだよなぁ」

チェイス「? 何がだ?」

真司「だってさ、仮面ライダーなんて、同じ名前の変身する奴が2人もいて、変身して戦うのに限れば、巧君もファイズに変身するでしょ?」

真司「んでもって、皆人を襲う悪い奴と戦ってて、これって偶然?」

チェイス「……偶然、とするには……あまりに共通しすぎているな」

巧「……偶然じゃないのかもな。ひょっとすると、そういう奴らのための、あの世だったりしてな」

真司「ってことは……巧君は差し詰め……仮面ライダーファイズってわけだなっ!」

巧「止せよ……なんかそれ、落ち着かねぇ」

チェイス「そうか? とてもいい響きだと思うが。仮面ライダーファイズ」

巧「やめろって! なんか恥ずかしいんだよ!」

音也「お!? 恥ずかしいか!? そうかなるほどじゃあもっと言ってやろう!」

巧「おい!」

音也「仮面ライダーファイズゥー仮面ライダーファイズ! 仮面ライダーファイズの乾巧をよろしくお願いいたします!」

巧「てめっ……! やめろって!!////」

チェイス「何故恥ずかしがるのだ? 仮面ライダーは希望の象徴。人々の命と尊厳を守ろうとしたお前はまさしく希望だ」

チェイス「仮面ライダーファイズの名を与えられるのは、名誉な事ではないのか? 仮面ライダーファイズ……お前に驚くほどしっくりくるというのに」

巧「お前はなんでそうこっ恥ずかしい事を平然と……!////」

音也「おーおー照れてる照れてるぅー↑!」

122 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:19:37.69 ID:lY2+9QkX0


巧「チッ……! って、そういうあんたも、俺達の共通点が絶対だってんなら、アンタも何かに変身して戦ってたんじゃないのかよ!」

真司(あ、うまく話し逸らそうとしてる)

音也「ん? 何言ってんだ。そう話しただろうが」

真司「えっ?」

音也「ん?」

チェイス「……俺達は聞いていないが」

音也「おいおい、一番最初に話したのが俺だからってもう忘れちまったのか?」

巧「……あんたが話したのは、ほぼ運命の女云々だけで終わってんだが」

音也「……?」





音也「………………」ポク、ポク、ポク、ポク…





音也「!」チーン!



音也「おーおー! そうだったそうだった! すまんすまん! 俺の戦いの伝説をまだ聞かせていなかったなぁっ!」ポン!

音也「じゃあ聞かせてやろう!! 耳かっぽじって正座してお聞きっ!!」

巧(あ、やべぇ、まずいスイッチ入れちまったかもしれねぇ……)

123 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:21:23.22 ID:lY2+9QkX0


音也「全てはあの日から始まった……俺が最初に愛した女、麻生ゆりとの出会いg————」

チェイス「音也」

音也「——発端だった……ってなんだ。せっかく人が話をしようって時に水差すな!」

チェイス「勿論お前の話はとても聞きたいのだが、時計を見てくれ」

音也「時計?」

チェイス「……現在、午後の10時半になろうとしている」

真司「じゅ、10時半!? うげぇー! すっかり時間の事忘れてた!」

巧「ぶっ通しで話てたからなぁ……っぐ〜ぁあ……! ずっと座ってたから腰がいってぇ……!」

真司「あ、そうと思ったら、本当に腹減ってきた……死ぬ……」ぐぎゅ〜〜…

チェイス「かなり遅くなってしまったが、食事にした方がいいだろう」

音也「ぬぅ……まぁ、そういうことなら仕方ねぇ。話は食いながらにしてやる!」

真司「良し、じゃあなんか作るか! 何によっか!」

音也「お前最初、餃子が得意とか言ってたな? 良し、それでいこう」

真司「今から!? いや、それは流石に準備に時間が……もっと簡単な物でお願いします……」

チェイス「俺も手伝おう、城戸。何を作るんだ?」

真司「お、ありがとう! チェイスも料理できんの?」

チェイス「…………いや、考えてみたら、経験が無い。すまない、やはり俺には手伝えそうな事は……」

真司「ありゃ、そうなの? まぁ大丈夫だって! 寧ろ、今やって覚えとこうぜ? 練習連取!」

チェイス「……俺がやってもいいのか?」

真司「おう! 料理なんて、経験無くても手順道理にやればそれなりにできるし!」

チェイス「……そうか。では、手伝わせてもらおう」

音也「よし! なら俺は隣で作業が捗る曲の演奏を————」

真司「お前は手伝えっ!」

巧「……俺もなんかした方がいいか?」

真司「巧君、料理したことは?」

巧「……いや、あんまり……」

真司「そっかぁ。んー、じゃあ、今日は待ってるだけでいいよ。さすがに包丁握ったことない人が、キッチンに2人並ぶのは危ないしな」

真司「それより、なんかリクエストある?」

巧「……熱すぎなきゃなんでもいい」

音也「ふむ……良し決めた! オムライスだ! 俺はオムライスを喰うぞっ!」

真司「オムライスかぁ。じゃあそれにしよう! ……音也は本当に手伝えよ!? 言い出しっぺだぞお前!」

124 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:24:05.91 ID:lY2+9QkX0



チェイス「城戸、急がないと本当に遅くなってしまうぞ」ジャキッ

真司「え!? 何でもう包丁持ってるの!? 危ないから! 今は置いといて!」

チェイス「……すまない。……ところで、城戸」

真司「ん?」

チェイス「いつの間にか、呼び方が『チェイス』と呼び捨てになっているが……」

真司「え? あ……! ごめんごめん! 話してる内に、なんか気づいたら呼び捨てちゃってたよ……」

チェイス「いや、それ自体はむしろ嬉しい。俺を呼び捨てているということは……城戸は俺を……ダチだと、思ってくれているのか?」

真司「え?」

チェイス「……砕けた呼び方ほど、相手を信頼している事の表れだと、インターネットに書いてあったのだが……」

真司「……なーに今更言ってんだよ! 俺達はとっくに友達だって! 『チェイス』っ!」

チェイス「……!!」

真司「うっし、じゃあ始めようか! とりあえずチェイス、冷蔵庫から卵と鶏肉と、ケチャップとマヨネーズ出してきてくれ」

チェイス「了解した」ガチャッ

音也「さーて……それじゃ俺様もやるとしますか! フライパンとフライ返しはどーこかなー!?」ガラッ

真司「あ、音也はそれよりご飯炊いてくれよ。お米どこかな?」






チェイス(…………剛、お前は今、元気にしているか?)

チェイス(……もし、何かも間違いで、再びお前に出会えたら……真っ先に、お前に教えてやりたい……)








チェイス(…………俺にも、ダチができたことを)ホロリ…



125 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:26:03.57 ID:lY2+9QkX0


巧「…………はー……」

巧(何とも妙な事になっちまったなぁ……)

巧(……こいつらと過ごすのは、まぁ……嫌ではねぇ。嫌じゃねーけど……)

巧(…………やっぱり、会いてぇなぁ……真理……啓太郎……)

巧(……チッ、やめだやめだ! 過ぎたことをクヨクヨ考えんな!)

巧(……生きてる連中が望んでいるような過ごし方をする……か。悔しいけど確かにその通りだ……)

巧(俺があいつらの笑顔を望んでたように……あいつらも……俺の笑顔を望んでるなら……)

巧(そうするしかねぇよな。……それに、幸いなことに)






真司「じゃあチェイス、まず卵割ってみるか。このボールに開けるんだ」

音也「おいおい、ど素人にいきなり卵割りなんてできるかー? 難しいぞー?」

チェイス「……何故だ? 包丁を使えば簡単なのではないのか?」ジャキッ

真司・音也「「いやいやいやいやいや!?」」









巧(こいつ等と一緒にいれば……笑えそうだし……な)フッ


126 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:28:12.66 ID:lY2+9QkX0



◆——チェイスの日記——あの世での生活、初日目——◆



俺に宛がわれた部屋の机の中に、使われていないノートが何冊かあったため、日記というものを付けてみることにした。

最初は何が何やら全く意味不明だったが、ここはどうやら、死んだ仮面ライダー、もしくはそれに匹敵する、強く優しい心を持った戦士が
死後に送られる世界である可能性が高いようだ。

自分が死んでしまい、生きている仲間達とはもう会えないという事実は辛いが……
同時に、同じく人のために戦い、その命を散らした気高い3人の男と出会えた。

仮面ライダー龍騎の城戸真司、仮面ライダーイクサの紅音也、そして……本人はそれで呼ぶなと嫌がっていたが……
やはり彼、乾巧には、仮面ライダーファイズの名が相応しい。



今日は悲しい日でもあるが、それ以上に嬉しい日でもある。
ついに俺に、ダチができたのだ。それもいっぺんに3人もだ。言うまでもなく、上記の3人の仮面ライダーだ。
剛が知ったら、喜んでくれるだろうか? もしそうだったら、俺はもっと嬉しいのだが。


それと、初めて料理というものをした。勝手がわからない事だらけだったか、真司と音也の3人での作業はとても楽しかった。
『猫の手』の意味が解らず、招き猫の真似をしたら音也にひどく笑われた。
その音也はというと、様になっている包丁捌きでパセリという植物を細切れにしていた。少し悔しかった。

音也のレシピに真司の一工夫を加えて完成した『おむらいす』はとても美味しかった。
巧は最初「やっぱり結局熱いじゃねーか」と3分ほどおむらいすを睨み付けていたが、それが過ぎると恐る恐るスプーンで取って食べていた。
一口目を食べた時の表情を見るに、気に入ってくれたようだ。俺も苦労した甲斐があった。

そんな巧を見て真司と音也の2人が笑っていた。何がおかしいのか尋ねると、巧は『猫舌』というものらしい。
巧の舌はざらざらしているのだろうか。

127 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:30:13.40 ID:lY2+9QkX0


食事の最中、音也が自分がなぜ死に至ったのかを話してくれた。
彼はファンガイアという、人間の命を食らいながら人間社会に溶け込む怪人と戦っていたそうだ。

彼の話で最も驚き、そして心打たれたのは、本来ファンガイアの王でなければ使用できない
闇の鎧なるものを3度に渡って使い、見事王を打倒した事だ。
人間が使用すればたった1回の変身で命を落とすと言われるそれを、音也は愛の力で耐えたのだという。

俺はこの話に感動したのだが、真司と巧の2人は、しきりに「話を盛りすぎだ」と言っていた。
音也の嘘なのだろうか? 俺は本当だと信じたい。とてもいい話だから。



食事が終わった後、3人に下の名前を呼んでも構わないか尋ねたところ
真司と音也は快く、巧は少し迷っていたが、名前で呼ぶことを許してくれた。
今それぞれを名前で表記しているのもそのためだ。

これがきっかけで、他の3人も、互いの名前を読び捨てで呼ぶことにしたようだ。
巧だけは、真司には「さん」をつけて呼ぶと言っていたが。
音也がそれについて、なぜ自分は「さん」じゃないんだと騒いでいたが、真司ほど尊敬に値しないかららしい。



……何を書けばいいのかわからず色々書いてしまった。
書きたい事はまだあるが、今日はこれまでにしておこう。



……ここが本当にただのあの世なのか、それとも別の何かなのかはわからないが
この3人に出会た事は、俺達をこの場所に呼んでくれた神に感謝しよう。



明日も、実に楽しみだ。



◆—————————◆
128 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/03/31(木) 20:31:40.12 ID:lY2+9QkX0


今回は以上です。

また新キャラが出ませんでしたが、次は絶対出します。

138 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/01(金) 00:57:50.87 ID:13PLR6r+0
>>136

嘘つくのもあれなんで、正直に言いますが、ほぼ確実にそのまさかですね。
満足さんと吸血鬼の人戦でエタったあれですよね。よーく知ってます(白目)

その節はどうも、結局期待を裏切ってしまいすみませんでした。
アレに関しては申し訳ありませんが、再開することは無いと思います。
あのスレは自分的に、もう半分トラウマみたいになっちゃてるもので。
安価スレも多分二度とやらない……ってかできそうにないです。怖くて。
安価は安価で楽しい時もありましたが、それだけリスクもでかいですね。
やっぱり自分で最初から最後まで展開を決められる方が向いてるようです。

当時は色々精神的に不安定な状態にありまして……だというのに勢いであんな事始めちゃった結果がアレですわ。
今は安定して元気だし、前回、前々回のふわっとしたプロットと違い、大事な軸は現時点でしっかり考えてあります。
安価でもないし、エタる事はまず無いかと。

しっかしビビったー。なぜバレたし。
文章の雰囲気とか「……」使いすぎとかですかね。
思えば謎空間に歴代キャラ集めて、なんやかんやで仲良くなって、一緒に料理とか作っちゃうのもまんまアレと同じですね。
これ書いてて今気づいた。

あーービビった。携帯から確認して沢山米来たわーいとか思ってレス見て深夜に即返信するくらにはビビった。

…………また長文キメェとか言われそうな文字量になってやがる……真司のファイナルベント喰らってきます。

153 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 17:59:51.18 ID:OoXK47E20

先日はお見苦しい書き込みをしてしまい、誠にすまんこってす。
エタに関しては本当に大丈夫です。克己ちゃんに誓ってエターナル化はあり得ませんので。

短めですが、6時20分頃に投下します。


>>139
自分で改めて見返して、確かにくう疲や初カキコどもに通ずるものがあって草生えた。
これが様々なスレで改変されたりして貼られるのか…………悪くないな(錯乱)

>>142

うおぉマジすか……あんなできそこなった未完SSをですか……
嬉しいような申し訳ないような……再開は……うーん……
少なくともこれを完結させてからじゃなきゃ考えようがないですね。
これが終わって、万が一気が向いたらってことで……すまぬ。
155 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:22:03.55 ID:OoXK47E20



◆————————◆




現代社会において、人は死ぬと『あの世』へ行き、天国か地獄に行く、という話を信じている人間が、どれだけ居るかは定かではない。

あの世の有無の答えなど、誰にも分からない。あの世にいる神様と、死んだ者にしか分からないのだろう。


しかし、例え神が居なかろうが、あの世が無かろうが、【我々】は存在している。

今は居らずとも、かつてそこに居た彼等の事を、彼等の、眩い輝きを放つ魂の存在を【我々】は知っている。



あらゆる世界で、大勢の戦士達が、志半ばで散っていった。

彼等の中には、誰もが認める善人も居れば、利己的な動機で行動する人間も居たが、そこにそれほど大きな違いは無い。

彼等はただ、何かを守るために、ひたすらに一生懸命だっただけなのだ。

己にとっての【宝物】のために生き、戦い、死んだのだ。

そんな彼等の、必死に生きた彼等の物語は、命を失ったからという理由一つで、今幕を下ろしている。

それは、いったいどれだけ意味があることなのだろうか。




我々は思い出さなくてはならない。彼等の雄姿を。



我々は忘れてはならない。彼等の背負った悲しみを。



我々は語り継がねばならない。彼等が守ったものの価値を。





【物語】は終わらない。終わらせない。終わらせてはならない。



彼等にはその魂を、輝かせ続けていいだけの、権利がある筈だから……。





◆————————◆


156 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:23:22.22 ID:OoXK47E20



◇2日目の朝:2階・チェイスの部屋◇




ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ————



チェイス「…………」パチッ

チェイス「…………」ムクリ

チェイス「…………」ポチッ



ピピp…………



チェイス「……明るいな。朝と夜の概念もあるようだな……」

チェイス「…………」ゴソゴソ

チェイス「…………」テクテク



ガチャリッ、クルッ、パタン



チェイス「…………」テクテク



コンコン!



チェイス「巧、起きているか」



<…………寝てる……



チェイス「起きているな、入るぞ」ガチャッ


巧「……んだよ、こんな朝っぱらに……まだ8時じゃねーか……」

チェイス「もう8時、だ。早寝早起きは、健康を維持するための人間のルールではないのか?」

巧「……チッ……ったく……わかったよ……起きりゃいーんだろぉ……」モゾモゾ

チェイス「起きたら洗面所で顔を洗うといい。歯も磨いた方がいいだろう」

巧「わかってるっての! お前は俺の母親か……!」

チェイス「母親ではない。ダチだ」

巧「へいへい……」フアァ…

巧「…………」

巧(……夢じゃない、か……)



157 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:24:48.31 ID:OoXK47E20



テクテク……ピタッ



コンコン!



チェイス「真司、朝だ。起きろ」



<……ぐがぁーー……ぐおぉー……



チェイス「…………」ガチャッ

チェイス「……真司、起きろ」

真司「……zzz……そっか……男……ために練習……」

チェイス(……この部屋の目覚まし時計は……これか)



カチカチカチ、カチカチカチ、カチカチッ

ポチッ



ジリリリリリリリリリリッッ!!!



真司「うびゃあああッ!!? ご、ごめんごめん嘘だって! そんなに怒らなくても……あれ?」

チェイス「起きたな。顔を洗って来い。巧は先に行った」

真司「……チェイス? ……あ、そっか……ここあの世だったっけ……」

チェイス「顔を洗ってこい。巧は先に起きている」

真司「あ、うん……ふあぁ……! 朝ごはん作んなきゃな……」ノソノソ




チェイス「後は音也だな……む……?」




♪〜〜♪♪〜ウデヲオオキクノバシテセノビノウンドウカラ!




チェイス「……?」

158 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:25:55.33 ID:OoXK47E20


コンコン!



チェイス「音也、起きているのか?」


<ん? おう、起きてるぞ!


チェイス「……何か、しているのか?」


<あぁ、これか。お前もどうだ! 目が覚めるぞ!



チェイス「?」ガチャリ



ラジカセ『手足の運動です! 1! 2! 3! 4! 』

チェイス「……何をしているのだ。……踊っているのか?」

音也「何だお前、ラジオ体操もっ、知らんのか? 曲に合わせてっ、ほっ、簡単な動きの、体操をするんだ、よ!」

チェイス「このラジカセはどうした?」

音也「初めからっ、俺の、部屋にあったぞ。中身をっ、確認しないでっ、再生してみたら、これだったっ、わけだ」グググ…

チェイス「…………楽しいのか?」

音也「別に楽しくは、ねぇなぁ! 普段やってる奴も、健康のためにっ、やってるだけで……」グイッ

音也「楽しいからやる奴は……ただの物好きっ、だろうな!」グイッグイッ

チェイス「そうなのか。……ならなぜ今やっている?」

音也「条件反射、もとい、気まぐれだな!」ノビー

チェイス「……俺もやってみてもいいだろうか」

音也「好きにしろっ! 俺の動きを、見ながら、音声の指示に従って……やってみろ!」


159 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:27:18.74 ID:OoXK47E20



◇一階・食卓◇



真司「ふいー……さっぱりした! あ、巧おはよ!」フキフキ

巧「あぁ。……ここもちゃんと、朝とかあるんだな」

真司「つくづく俺達の考えてたあの世と違うよなー。さてと、朝ごはんの準備しよっと」

巧「手伝おうか?」

真司「そうだな、じゃあ今朝は頼もうかな。って言っても朝ごはんだから、簡単な物しかしないけどね」

巧「目玉焼きとかか?」

真司「後はまぁ、定番のベーコンとかソーセージとか? 軽くサラダも作って……インスタントのスープとかあると嬉しいんだけどな」

巧「……上の戸棚とかは?」

真司「あぁ、まだ見てないな。後で探すか。さぁ冷蔵庫にベーコンはあるかなーっと……」ガチャッ

真司「んー、ベーコンベーコン……お! あったあった! しかも厚切り! ……あれ?」

巧「……なんだよ?」

真司「昨日ここにあった餃子の皮とひき肉が無い……誰か場所変えたかな?」

巧「俺は触ってないぜ」

真司「……あっれー? おっかしーなー。どこにもないや……? 何でだろ」

真司「……まぁその内見つかるかな。卵4つとベーコン4枚っと」バタン

真司「後はレタスにミニトマトかなー。あ、キュウリも使おっと」ガラッ

真司「あ、パンとお米どっちがいい?」

巧「俺は……パンだな」

真司「ん、了解。上の2人にもどっちがいいか聞いた方がいいよな……巧、聞いてきてくれる?」

巧「あぁ、分かった。……チェイスは何してんだ?」ギシッギシッ


160 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:29:19.61 ID:OoXK47E20




巧「おい、音也。パンと米どっちがいいかって真司が……」ガチャッ



ラジカセ『両足飛びの運動です! はい! ……』



音也「いっち、にー、さんし!」ピョンピョン

チェイス「5、6、7……」ピョンピョン

巧「…………何してんだお前ら」

チェイス「ラジオ体操だ。巧は知らないのか?」

巧「いや知ってるよ! そうじゃなくて何でラジオ体操なんか……しかも第2まで……」

巧「……お前ら、朝はパンと米どっちがいいんだ?」

音也「パン!」フリアゲ!

チェイス「俺もパンで構わない」マゲノバシ

巧「2人ともパンな。……終わったら来いよ?」

音也「うーい!」スッスッ

チェイス「分かった」ビュンッ


ゴンッ!


音也「ぐぇ!?」

チェイス「……すまない、大丈夫か?」

巧「……もっと離れてやれよ」



◇15分後……◇



真司「よーし完成! 手伝ってくれてありがとな!」

巧「……目玉焼きは1個失敗したけどな。黄身が割れた」

真司「まぁ初めてなら仕方ないよ。食っちゃえば同じ同じ!」

音也「おーい! まだかー! 腹減ったぞー!」チンチン

巧「うるせーよ! 今朝は下りてきたかと思えば本当に真横に立って演奏だけしやがって……食器を叩くな!」

音也「捗っただろう?」フフン

真司「邪魔だったっつーの!!」

チェイス「すまないな。任せてしまって」

真司「いいっていいって! ほら、食べよ食べよ!」



パンッ!



真司「いただきますっ!」

音也「いっただきまーす!」

チェイス「いただきます」

巧「……いただきます」

161 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:30:36.23 ID:OoXK47E20



カチャカチャ……



真司「んぐんぐ……うん! 我ながら美味いな!」ホクホク

チェイス「……うむ、美味しいぞ。パンもいい焼き加減だ」モグモグ

音也「おい、俺の目玉焼き潰れてんぞ」

巧「食っちまえば同じだよ。気にすんな」

音也「……それとなんか俺のパンだけ妙に焦げてるっぽいんだが」

巧「あぁ、それな。わざとだよ」

音也「んだとぉ!? 何のつもりだこの野郎!!」

真司「自分の胸に手を当てて考えろ!」

音也「…………」スッ

音也「…………清く正しい心しか感じないぞ!」

巧「やっぱ焦がして正解だったな」

音也「俺の何がそんなに気に入らないってんだ!? ったく、まあいい、俺はどっちかと言えば焦げ目の方が好きなんだよざまぁみろー!」バクッ

真司「知ってるか音也。焦げってな、発癌物質なんだぜ」

音也「!!? お、お前ら、俺のこの健康極まりない体になんてものを!!」

真司「ぎゃはははざまぁーみろー!」

チェイス「…………俺達は死んでいるのだから、癌どころか普通の病気も何も無いのではないのか」

巧「…………」

真司「…………しまった!?」

音也「ふはははははは!! 俺の勝ちだなバカ真司ぃ!!」ムシャムシャ

巧「……やっぱ焦がすだけじゃ生ぬるいな」モグモグ

真司「うん……次はパンに直接色々塗りたくってやるか。潰した納豆とか」ズズ…

音也「聴こえてんぞバカと猫舌めが!」ムシャムシャ





真司「ふぅ……食った食った! ごちそうさまー!」

チェイス「ごちそうまでした」

音也「まぁまぁな出来だったが、卵は味が薄めだったな。次から塩胡椒はもっと使えよ?」

巧「お前マジで次は何かやってやるからな。覚悟しとけよ」

162 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:31:30.35 ID:OoXK47E20


チェイス「……今日はこれからどうする?」

巧「……どうにかして外に出てみようぜ。窓の外を見るに、庭しかないってわけじゃなさそうだし」

真司「となると……やっぱりもうどこか無理やり壊しちゃうしか、無いかな」

音也「だろうな。だがもしこの家を拠点にするなら、あまり目立つところをぶち抜くのは気が引けるな……」シーシー

チェイス「もう一度、一通り開くかどうか試してはみないか」

巧「無駄だって。昨日俺が散々あっちこっち行って試してもビクともしなかったんだぜ?」

真司「どうする? どこを壊す?」

音也「玄関……は無理だな。人ひとり通れる窓が開いてるわけではないし、下手に扉の方を弄ってドアノブがイカレでもしたらそれこそアウトだ」

巧「一番やりやすいのは、このリビングのでかい窓だけど……壊すと風通しが良くなるってレベルじゃないしな」

音也「となると、あまり誰も使わない部屋、壊れても特に支障のない部屋の窓ってとこか」

真司「……じゃあ、あそこで決まりだな!」

巧「だな」

音也「ん? なんだそんな所があんのか?」

真司「あぁ! 誰も使わない、壊れても支障のない部屋!」

巧「つまり……」




真司・巧「「お前の部屋」」

音也「お前らぶっ飛ばすぞ!?」

163 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:32:38.30 ID:OoXK47E20


巧「なんでだよ、誰も困らないじゃんか」

音也「俺が困るだろうが!? 今俺が使ってるだろうがっ!?」

真司「使わなくなるんだよ。これから」

音也「これから!?」

巧「お前はアレだ、そこのソファで寝ればいいだろ。ふかふかだぞ」

音也「俺のプライベート問題はどうなる!?」

真司「じゃ、なんか窓壊せそうなもの探そうか」ガタッ

巧「さっき音也の部屋に行ったとき銀のオブジェがあったからそれでいけそうだぜ」ガタッ

音也「最初から最後まで俺の物を犠牲にする気か……!!」

真司「じゃあそれで行こうか。チェイス、音也の部屋行くぞー」

チェイス「……いいのか? 音也」

音也「いいわけあるか!! お前も止めんか!! つーか何で2階から出ようとしてんだ!? 2階からどうやって外に出る気だ!!」

真司「大丈夫だって! ちゃんと屋根のすぐ向こうに塀が見えたし、それを伝っていけば出れる出れる!」

音也「いっそお前らなんか足滑らして落ちてしまえ!!」ウガー!

真司「巧、今の聞いた?」ヒソヒソ

巧「あぁ、こいつ同じ死人の仲間が怪我すりゃいいと思ってるぜ」ヒソヒソ

音也「……もう怒ったぞ? 怒っちゃったぞ俺? ……ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」ダッ!

音也「紅流秘奥義……!! 脛集中脚ッ!!! アタタタタタ!!!」ゲシゲシゲシゲシ!

真司「ちょ、痛!! 痛たたたた!! 何が紅流秘奥義だよ、ただの脛への蹴りじゃんか!! あ痛ーっ!?」

巧「ほんの冗談じゃねーか! 大人げねーぞ! いってぇ!?」

音也「謝れ!! 謝れオラッ!!」

真司「ぐぬぉ……!! こうなりゃ徹底抗戦だもんね!! 行くぞ巧!!」

巧「……いや、俺もういいや。なんか飽きた」

真司「え!? 何だよここで離脱!? ちくしょう!!」

音也「そらそら謝らんともっと激しくなるぞー!?」

真司「……!! そこだ!! ゴールデンボールキッk(ry」

音也「それはマジでやめて」

164 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:33:58.81 ID:OoXK47E20



ドタバタギャーギャー!!



チェイス「…………」テクテク

チェイス「…………」クイッ



ガチャリッ……



チェイス「……! 皆、玄関が……」



真司「お前なんか禿げて髪の大事さに改めて気づけバーカ!!」グイー!

音也「痛だだだだ!? てめっ、コノヤロ!! 髪はやめろ髪は!!」ギギギギ

チェイス「…………」

巧「……おーい、そろそろ終われよー」

音也「まだだ!! 負けられない戦いがここにある……!!」ヘッドロック!

真司「戦わなきゃ生き乗れないぃぃ……!!」ジタバタ

チェイス(…………記憶データ、オープン。戦闘中に視界を光源に覆われた状況を検索……完了)

チェイス(空間ディスプレイ出力準備……完了。投映開始まで……2、1……)



ピッカァァ!!



真司「ぬわあーーっ!?」

音也「またこれか!?」

チェイス「話を聞いてくれないか」

巧「これ便利だな。色んな意味で……」

チェイス「…………玄関の扉が、普通に開いている」

3人「「「!!」」」

チェイス「外に出れるぞ」

巧「……本当だ……簡単に開いたぞ」カランカラン

真司「な、何で急に?」

音也「ゼェ、ゼェ……や、やれやれ……俺の部屋は守られたか……」

チェイス「行ってみよう。ひょっとすると、俺達の他にも誰かいるかもしれない」

165 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:35:43.86 ID:OoXK47E20



◇探索開始◇



真司「中も綺麗だったけど、外観も綺麗な家だなここ……」

巧「割と気温が暖かいな……春みたいだ」

音也「当然っちゃ当然だが、太陽もしっかりある……本当にここがあの世なのか、ちょっと心配になってきたぞ」

チェイス「……あの建物は何だ?」

巧「……ちょっと遠くにあるみたいだが……でけぇな」

真司「……ドーム……かな?」

チェイス「近くには俺達が居たような民家なども幾つかあるようだが……どうする?」

音也「取り合えずは、あのドームに行くべきだと俺は思うぞ。あれだけ目立つ建物なら、他の死人も行ってるかもしれん」

真司「うん……俺もあそこに行った方が、何かしら分かりそうな気がする。もしかしたら、この世界の管理者……みたいな奴が居るかも」

巧「異議なしだ」

チェイス「……決まりか。ではまず、あのドームへ向かってみよう」ザッザッ





<ちょっと待って! どこへ行く気なんだ!?

<ここで貴様らとのんびりお喋りなんぞしていた所で埒が明かん! 俺は俺で勝手に動く!





音也「うん?」

真司「!! 人の声だ!!」

巧「……!? 今の声は……!!」

真司「行こう! 人がいるならまずはそっちからだ!」ダッ

巧「まさか……!」ダッ

チェイス「……了解した」タタタッ

音也「……両方男の声だったが……はたして美女はいるかなぁー!?」ルンルン

チェイス(……後に聞こえた方の声……どこかで聞いたような……?)


166 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:37:02.19 ID:OoXK47E20



◇チェイス家から北の一軒家、庭◇




ガチャンッ! カランカラン!



優男風の青年「ダメだ! こんな所で1人で行動するなんて危険だ! 何があるかもわからないのに!」

赤と黒の服の男「この家で貴様らと共に居たところで、事態が進展するのか? 要らぬ心配をしている余裕があるなら自分の心配をしろ」

優男風の青年「どうして君はそう……」

黒づくめの男「放っておけ。そいつがそうしたいのならそうさせればいい」

優男風の青年「なっ、あなたまでそんな……!」

グレーの上着の男「それに……実際ここに居ても、何も得られないのは事実だ。単独行動はともかく、動ける内に動いた方がいい」

優男風の青年「……わかりました。ならせめて、君は僕らと離れずに行動して!」

赤と黒の服の男「お前達が俺について来たいのなら勝手にしろ。行先は俺が決める」

グレーの上着の男「……! 誰かこっちに向かってくる!」

優男風の青年「え!?」

赤と黒の服の男「! 敵か……!!」

黒づくめの男「ッ……!」




タッタッタッタ……!




チェイス「!! お前達は……」

音也「…………男4人……いやまだだ!! まだ中にいる可能性もある!!」

167 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:38:51.15 ID:OoXK47E20


巧「ハァ、ハァ、…………ッッ!!!」

巧「……お前……!!」

優男風の青年「き、君は……!! 乾君!?」





巧「……木場……!! お前なのか木場!!」ダッ

木場「乾君っ……!!」





真司「………………なん、で…………だよ……」

真司「…………俺っ……言った、じゃんか……」

真司「お前は、なるべく……生きろって……! 言ったじゃんかよぉ……!!」





黒づくめの男「…………城、戸……?」

真司「……何でだよ……!! 蓮っ!!」ダッ

蓮「っ…………」





チェイス「…………」ジッ…

赤と黒の服の男「…………何だ貴様は」

チェイス「…………お前は、バナナの男か?」

赤と黒の服の男「!? 貴様、俺を知っているのか……!」

チェイス「以前、メガへクスとの戦いで共闘したバナナの戦士と、お前は同じ声をしている」

赤と黒の服の男「……メガヘクス……?」

チェイス(……! そうか、あれはメガへクスにより複製された存在……ここにいるのが複製の元になった人物ならば、知るはずがないか)

チェイス「……俺の名はチェイスだ。お前の名を、聞かせてもらえないか」

赤と黒の服の男「……戒斗」

戒斗「駆紋 戒斗だ」





音也「…………」

グレーの上着の男「…………」

音也「誰、お前」

グレーの上着の男「…………相川 始だ」

音也「ふーん。で、この家の中に女性はいるか?」

始「いや、ここにいる4人で全員だが……」

音也「……チクショーーーッ!!」

始「……俺は名乗ったのだから、お前も名乗るのが礼儀じゃないのか」

音也「紅音也。23歳の超天才でーす」テキトー

始(……何なんだこいつは……)

168 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/02(土) 18:40:03.30 ID:OoXK47E20



ここまでです。うーん、短い。いっそ投稿間隔広げてがっつり書き貯めた方がいいかな……?


と言う訳で新たに、555から木場勇治、龍騎から秋山蓮、剣から相川始、鎧武から駆紋戒斗の4人が登場します。


始さんは劇場版ベースで、それ以外の3人はTVベースです。
……ベースってだけでその要素しかないわけじゃないのだ。

210 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 00:56:14.37 ID:7ZZz/cPM0

こんばんわ。深夜ですがいきなり投下しちゃいます。

相変わらず量が少なく、話もちょっとしか進みませんが。


211 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:00:52.47 ID:7ZZz/cPM0



木場「乾、君……本当に、乾君なのか……?」

巧「あぁ……しっかし、お前も来てたとは驚いたぜ。……まぁ、俺が居るんだもんな……先に逝ったお前が居たって、不思議じゃないか……」

木場「!! ここは、やっぱりそういう場所なのか…………それじゃあ、君は……!」

巧「……何とか踏ん張りはしたんだがな……あんまり持たなかった。王を倒して、お前が死んだあの日から……大体1週間くらいってとこか」

木場「…………ごめんっ……本当に、すまなかった……!!」

巧「! 何謝ってんだよ……」

木場「君がこうなってしまったのは、俺の責任だ……!! 俺が、君にあんな仕打ちをしたせいで君の体はっ……!!」

巧「……俺はお前を責める気なんて無い。……お前は、人間とオルフェノクに対する自分の考えに……決着を付けたかったんだろ」

巧「…………お前が長田の死を受けて、あの時点で導き出した答えがそれだった……俺が必死だったように、お前も必死だった」

巧「……それだけさ……」

木場「それだけって……!? 俺が君を死なせたようなものなのなんだぞ!? ……俺の事が……憎くないっていうの……?」

巧「お前は色々重く考えすぎなんだよ。俺は今更その事をどうこう言う気はないんだ」

巧「本人が気にしちゃいないって言ってんだ。お前も気にすんな」

木場「……そんな……だけどっ……!」

巧「しつこい男は嫌われるぜ? ほら、この話は終わりだっ」パンッ

木場「…………ごめん……ごめんっ……」

巧「……ハァ。お前な、こういう時はそういう台詞より、もっと喜ばれる物があるだろ?」

木場「え……、……!」

木場「……あり、がとう……?」

巧「おう。……こんな形でも……こうしてお前にまた会えて……すげぇ、嬉しいよ……木場」

木場「!! っ……乾……君っ……」


212 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:02:07.50 ID:7ZZz/cPM0




真司「何でだよ蓮っ……!! 何で、お前まで、死んじゃったんだよォ!!」グスッ

蓮「…………」

真司「バカ野郎……!! バッカ野郎っ!!」ポロ…

蓮「…………馬鹿はお前だ。馬鹿」

真司「なっ……! 何だよ! 開口一番に言う言葉がそれかよ!!」グスッ

蓮「お前の馬鹿は死んでも治らないと思ってはいたが、本当に治ってないらしいな……」

真司「お前は……! 人がこうしてお前の事で泣いてるってのに……!」グシグシ

蓮「それが馬鹿だと言うんだ」ハァ

真司「バカバカってお前なぁ……!!」

蓮「……俺のような人間のために、お前が泣く必要がどこにある……」

真司「え……?」

蓮「…………俺は、戦ったぞ」

真司「!! …………」

蓮「戦って……勝った。……願いを、叶えた」

真司「…………そっか」

蓮「…………」

真司「……その割に、なんでそんな顔してんだよ……」

蓮「……俺が……憎くないのか」

真司「……は?」

蓮「……あの時……お前が息絶える直前に言った事を……お前がやっと見出した答えを……俺は否定したんだぞ」

蓮「…………裏切られたとは、思わないのか」

213 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:04:28.43 ID:7ZZz/cPM0



真司「……そんなこと思わないよ」

蓮「!」

真司「……確かにあれは、俺が出した答えだけど……願いでもあるんだ。ライダーとして、戦うための願い……」

真司「お前や北岡さん……他の皆と同じ……譲れない、俺の軸」

蓮「だから……! それを俺は、オーディンとの戦いを選んで————」

真司「そして蓮の軸は、恵理さんを助けることだった」

蓮「ッ……!!」

真司「俺は、ミラーワールドを閉じることが、叶えたい願いだ。でも、俺はだからと言って……」

真司「……蓮が、恵理さんを助けたいと思った気持ち自体を否定する気なんて、絶対無いよ」

真司「だって、それは蓮にとっての、俺が叶えたい願いと同じ……譲れないもので、大切な物なんだから」

蓮「…………城戸……」

真司「それと同じさ。お前はなにも、俺の思いまで否定したわけじゃないだろ?」

真司「……蓮は、自分の叶えたい願いを……ライダーとして、叶えようと必死に……戦い続けた。必死に頑張った」

真司「そして勝ち取った……それは、凄い事じゃんか」

真司「……俺はずっと迷ってた。人に言われる事に左右されて、ふらふらふら……そして結局、最後に負けた」

真司「負けた俺には、お前をとやかく言う権利なんて無い」

真司「……大丈夫だって。……ちゃんと、分かってるからさ」

蓮「…………」

真司「……ってそんな事より! 何でお前まで死んでるんだって! 願いを叶えたなら、それこそ生きてなきゃおかしいだろ!」

真司「恵理さん助けても、お前が死んでちゃ意味ないじゃんかよ……!」

蓮「…………相変わらずお前は……底抜けのお人よしだな」

真司「ぐ……!? へ、へーん! そんなのもう言われ慣れてるもんねー!」

蓮「何より馬鹿だ」

真司「……そっちはまだムカつくかな……!」コノヤロウ

蓮「……フッ……」

真司「!…………へへっ……」ニヘラ





チェイス(…………あれが、巧が言っていた木場勇治と、真司が言っていた秋山蓮か……)

チェイス(巧が友と再会できたのは喜ばしいが、真司の方は……複雑、だろうな……今の話を聞くに、2人の間にわだかまりは無さそうだが……)
214 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:06:45.65 ID:7ZZz/cPM0



戒斗「……それで結局、貴様は何者だ。俺が貴様と共闘しただと? メガへクスなどと言う敵と戦った覚えはないぞ」

チェイス「……今のお前に説明しても、混乱するかもしれないが……」

チェイス「今から俺の話す事は、真実だという事を前提に聞いて欲しい」

戒斗「内容によるな。何か下らんことを企んでいると判断すれば、それ相応の処置をとらせてもらう」

チェイス「……最初に確認するが、お前は……命を落としたのか?」

戒斗「…………体に致命的なを傷を負い、力が抜け、意識を失った事がそうだとするなら、そうだろうな」

チェイス「やはりか……ある時、地球にメガへクスと呼ばれる機械生命体が侵略してた」

戒斗「! 何……?」

チェイス「奴等……いや、奴と言った方がいいのか。奴は地球に存在するありとあらゆる物質や生物を機械に変換し、取り込もうとした」

戒斗「……それはいつの事だ」

チェイス「……2014年の、終わり頃だったと記憶している」

戒斗(……俺が、御神木の元で舞と最後に話をした、少し後か……)

チェイス「奴は他人の記憶を読み取り、その記憶内に存在する人物のデータを元に、機械生命体として、本物さながらのコピーを作り出す力があった」

チェイス「その力で奴は恐らく、既に故人となっていたお前を忠実に模したコピーを生み出したのだろう」

戒斗「……なるほど……それで貴様は、俺と共闘した事がある、と」

チェイス「……今の説明だけで、理解できたのか? まだ、コピーのお前が敵に生み出された事までしか言っていないが……」

戒斗「予想はつく。大方そのメガへクスとかいう知性の無い鉄くずが、何も考えず手駒として俺を作ったものの……」

戒斗「思考回路まで忠実に再現した事で、コピーの俺の怒りを買って反逆された……そんな所だろう」

チェイス(……当たっている……)

戒斗「人の模造品を武器として戦いに挑もうなど、まさにプライドどころか自我すら無い弱者がやりそうな事だな……フンッ」

チェイス「……俺の話を信じてくれるのか? 人間からすれば、かなり荒唐無稽な話だと思うが……」

戒斗「荒唐無稽な出来事など、今まで散々目の当たりにしてきた上に、現在進行形で出くわしている」

戒斗「今更機械怪人が地球侵略をしたからと言って、そう驚きはしない」

215 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:07:56.51 ID:7ZZz/cPM0


チェイス「そうか……理解が早くて助かる。……お前は今、そこの家から出てきたようだが、あの3人とはいつから共に?」

戒斗「昨夜からだ。死んだはずだというのに、目が覚めてみれば、知らない家でどこの誰とも知れん奴等と過ごす事になるとは……」

チェイス「……ダチはできたか?」

戒斗「……何を言っているんだ貴様は」

チェイス「俺にはダチができた。同じ家に俺を含め4人で閉じ込められていたが、3人全員とダチになれたぞ」フンス

戒斗「…………それを俺に言って貴様は何を求めている」

チェイス「お前は誰ともダチになっていないのか?」

戒斗「下らん……志を共にする仲間ならともかく、じゃれ合うだけの友など必要ない」

戒斗「まして奴等と友だちごっこなど不可能だ。まず俺が拒否するし、奴等も拒否するだろう」

戒斗「……約1名、そういった事を望んでいた奴がいるがな」チラッ





巧「……そういやお前、あの時のスーツ姿じゃないんだな。髪もオールバックじゃねぇし」

木場「え? あ、あぁ、そうだね……どうしてかな?」

巧「さーな。ま、何にせよ今の方がいいぜ。アレはお前にゃ似合ってなかったしな」

木場「はは、酷いなぁ……俺が会社勤めとかしてたら、いつもあんな感じだったはずだよ?」

巧「お前はサラリーマンなんて向いてないだろ。ファミレスの店員とかの方がしっくりくるな」

木場「ぷっ何だよそれ……あははっ」

216 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:09:09.59 ID:7ZZz/cPM0



戒斗「…………」

チェイス「…………彼の事か?」

戒斗「終始俺達の中を取り持とうとしていたが、鬱陶しい事この上なかった」

戒斗「どうせ自分が不安だから、繋がりが欲しくて必死だったのだろうが……俺にそんなもの求めるのがそもそもの間違いだ」

戒斗「……どうやらお仲間が見つかったようだしな。もう小うるさい説教も聞く必要もない。清々した気分だ」フン

チェイス「……清々したというより、ホッとしている表情に見えるが」

戒斗「…………誰が、ホッとしていると?」

チェイス「お前がだ」

戒斗「……なぜ俺が安心しなければならない。俺が何に不安を抱いていたと言う気だ貴様は」

チェイス「木場勇治の事が心配だったのではないのか?」

戒斗「寝言は寝て言え」

チェイス「木場勇治に巧が……今彼と話している人物だ。……乾巧が近づいたとき、彼が巧の名を呼ぶまで、ずっと警戒していただろう」

戒斗「……チッ……」

チェイス「だから俺は、お前は彼を気にかけていたのだと思った」

戒斗「……もし仮にそうだったとして、貴様は結局何が言いたい」

チェイス「……いや、ただ悪い人間では無さそうで、ホッとしただけだ」

戒斗「…………わけのわからん事を……」

217 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:11:03.42 ID:7ZZz/cPM0



音也「…………」

始「…………」

音也「なんか、仲間外れだな。俺達」

始「……何がだ?」

音也「俺達だけ、知り合いも何かしらの接点がある奴も、誰もいないようじゃないか」

始「……その方がいいに決まってる。俺はこんな所で、仲間と会いたくなどない」

音也「まぁ、そりゃそうなんだがな……ん、と言うとお前もやっぱり死人か?」

始「…………そうだな。恐らくは、そうなのだろう。やはりここは、死者の住む世界なのか」

音也「どうもそうらしいな。まぁ、取り残された者同士、仲よくしようじゃないか! ははは!」ポン

始「……お前、軽い男だな」

音也「良く言われる! さて、まずは好みの女性のタイプでも語り合おうか! どんなのが好きなんだ。ん?」

始「……本当に軽い奴だな……」

始(俺の周りには居なかったタイプだな、こいつは……。もっとも俺自身、そんなに人間関係が広い方ではなかったが……)

音也「俺の好みはとにかく、美しい事だな! 外見だけではなく心も美しいことが条件だが!」

始「…………」

音也「ほれ、何黙ってんだ。次はお前の番だぞ」

始「……俺はお前と女性の好みについて話す事を了承していないんだが……というか、今のでお前は終わりなのか……」

音也「いいだろう別に〜! 減るもんじゃなだろさっさと吐け! こういう話題から始まる男の友情もあるんだぞ?」

音也「それともなんだ、マニアックすぎて人に言えない好みなのか?」

始「人聞きの悪い事を言うな」

音也「なーら教えてみろ! 大丈夫だ、俺は守備範囲が広い! 多少変わった特徴でもそう引いたりはせん!」

始(…………剣崎とは違う方向で、なかなか面倒そうな奴だ……答えないといつまでも付き纏いそうだな……)

219 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:12:02.14 ID:7ZZz/cPM0



始「…………強いて言うなら、明るくて、元気な子だ」

音也「ほう! 確かに明るい事はいい事だな! 元気なのも、こちらが活力を得られそうだしな!」フム

始「誰にでも、分け隔てなく優しくて……感受性が豊かで……笑顔の良く似合う子だな……」フッ

音也「なるほどなるほど…………お前それ、実際に居る女だろう?」ニヤニヤ

始「……まぁ、そうだが」

音也「惚れてたのか? どんな関係だったどこまで行った!?」ウリウリ

始「別にそんなんじゃない……大切な存在……生きがいだった事は確かだが」

音也「そりゃあもう惚れてるって事だろうが〜! 鈍ちんめ! 年は幾つだ、上か下か!?」ニヤニヤ

始「そんなんじゃないと言ってるだろう……年は下だ。……あれから4年だから……14歳か」フッ

音也「えっ」

始「……何だ?」

音也「…………あ、あぁいや……まぁ、その、なんだ……い、いいんじゃないか?」

音也「好みは人それぞれだからな! そいつにしか分からん価値があるんだろう! はははは!」

音也(……しまったな、こいつはそういう趣味の持ち主だったか……)

音也(『あれから』と言うのが何を指してるのかは知らんが、4年経って14歳って事は最初は10歳……ひえー……)

音也(俺とは一生相容れそうにないな……と言うより、世間と相容れんのでは……)ウーム

音也「…………あー、お前……」

始「……?」

音也「……色々あるだろうが……頑張れよ! 法を犯さん程度に……!」d グッ

始(…………物凄く、失礼極まりない勘違いをされている気がする……)イラッ


220 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:14:24.13 ID:7ZZz/cPM0


巧「……って、ここでお前とだけ駄弁ってても仕方ないな。他の奴等にも紹介しとかねーと」

木場「……えっと、乾君、彼等は……?」

巧「んー……まぁなんつうか、新しい……友達って言っていいのかな。同じ共通点がある仲間っていうか……」

木場「! まさか、オルフェノク?」

巧「いや、そうじゃねーんだけど……その、何か巨大な何かと戦って死んでいった、戦士、みたな……」

木場「……それが共通点?」

巧「あぁ。それ以外はてんで違うな。ただの人間が2人とオルフェノクの俺と……あっちに居るあいつはロボットだ」

木場「ロ、ロボット!?」

巧「2人の人間の方も、とても信じられないような人生送ってたみたいだぜ」

巧「……おい! 真司さん!」

真司「! おう、巧! ……やっぱり、そっちは巧の知り合い?」

巧「あぁ。話してた木場だよ。木場、この人は城戸真司ってんだ。アホだけどいい人だぜ」

木場「そ、そう、なんだ……? ……木場勇治です。よろしくお願いします、城戸さん」ニコリ

真司「君が木場君かぁ! 話に聞いた通り、優しそうな顔してるなぁ〜!」ウン

木場「あはは……どうも。……乾君、この人たちには、どこまで……?」

巧「ほぼ全部話した。俺とお前がオルフェノクだって事もな」

木場「え……!?」

巧「……悪いな、勝手に話しちまった。お前が来るとは思ってなかったから……」

木場「あ、いや、俺は別に……でも、良かったのかい? そんな事……」

巧「あぁ。話して良かったって思ったよ。本当に皆、いい奴等だぜ」フッ

木場「……そうか。君がそういうなら、大丈夫かな」

巧「あぁ。特にこの真司さんは、普段はアホだけど、お人好し度は半端ないぜ」

真司「貶してんのか褒めてんのか分かんないだけど……」

蓮「クックク……! お前、こんな所ですら、もう馬鹿が知れ渡ってるのか……」クツクツ

真司「うっせぇ!」

221 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:15:42.33 ID:7ZZz/cPM0


巧「……そっちの黒いのは誰だ?」

真司「あぁ、俺が話した秋山蓮だよ。……俺の後に、死んじゃったらしい」

巧「……そっか……」

蓮「……おい城戸、お前いったいどこまで……」

真司「あー……ごめん、ライダーバトルに関する大体の事は……言っちゃったんだ……」

蓮「お前っ……何を考えてあんな事を他人に……!」

真司「で、でも!! こいつら皆いい奴なんだ!! ちゃんと蓮が悪い奴じゃなくて、色々あって戦う事を選んだ事も言ったから、蓮を悪く見る事は……!」

蓮「そんな事まで勝手に……! ……ハァ、馬鹿が……」

真司「……ごめん……」

蓮「……もういい。既に知られてるものは仕方ない。……それよりお前ら、死者が集まる場所だという事以外に、ここについて何か分かってる事は?」

真司「それが、まだ外に出たばっかりで……今は調度、あのドームに行こうとしてたんだ」

蓮「……ここは本当にあの世なのか? 家の中にいた時も思ったが、現代的すぎるだろう……」

木場「でも、俺たち全員、死んでる事は確実に共通しているし……」

木場「天国……なのか地獄なのか、なんとも分からないけど、死後の世界なのは間違いないんじゃあ……」




チェイス「いづれにせよ、あのドームに向かうべきだ。何らかの疑問が解決される可能性は、少なからず有る」

巧「おぉ、チェイス、戻ってきたか。……そいつは、知り合いか……?」

チェイス「いや、知り合いと呼べるような関係ではない。俺が一方的に、少し知っていただけだ」

戒斗「……貴様らは?」

真司「俺は城戸真司。蓮とは知り合いなんだ! よろしく!」

巧「……乾、巧」

222 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:16:56.95 ID:7ZZz/cPM0


戒斗「……木場、貴様はこいつらと行動するんだろう?」

木場「まぁ、うん。そうだね」

戒斗「なら、俺が居る必要も無いな。じゃあな」

木場「えっ!? 何言ってるんだよ! 君も一緒に行動しようよ!」

戒斗「必要ない。俺は俺で勝手に動くと言った筈だぞ」

巧「お前なぁ……人が親切に言ってるんだから素直に聴けよ! 反抗期かよ!」

戒斗「俺は一人でも危険に陥る事などそうそう無い。さっさと行け」

巧「……こいつ……」

木場「そんな事言っても……!」

蓮「放って置けと言ったろ。こいつがここまで言うからには、余程自分に自信があるんだろう」

真司「お、おい蓮!」

蓮「周りでぞろぞろ動かれるより、1人で居た方が、かえって安全な場合もある」

蓮「こいつ自身がこうと決めているんだ。俺達がとやかく言って世話を焼く必要もないし、焼かれる方がこいつには迷惑……」

蓮「選んだ道の先でどうなろうと、自分の選択した結果なら文句はない……そうだな?」

戒斗「その通りだ。……お前は最初の3人の中では、一番話が分かる奴だったぞ。さらばだ」クル

真司「あっ、お、おい! どうすんだよ蓮! あいつ行っちゃうぞ!?」

蓮「だから奴がそうしたいならそうさせろと言っているだろ……」

木場「危険すぎるでしょう!? 腕に自信があるのか知らないけど、これと言って武器になりそうな物なんて何も持ってないし……!!」

巧「…………」




ザッ!!




真司「! チェイス……!」



戒斗「…………何の真似だ」

チェイス「……一人で行かせるわけには行かない」

223 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:17:55.40 ID:7ZZz/cPM0



戒斗「俺に同行者など必要ない。邪魔だ、退け」

チェイス「お前が良くても、俺が良くない」

戒斗「……これだけお仲間が居るのに、俺が居なくなるのは怖いとでもいう気か?」

チェイス「そうだ」

戒斗「…………1人欠けただけで、それが不安になると言うのか?」

チェイス「そうだ」

戒斗「……話にならんな。俺のコピーと『共闘』したというから、それなりの力を持っているのかと思ったが……」

戒斗「守ってもらわなければ先に進めない、臆病者だったとはな。俺のコピーにも、守ってもらってやっと立っていたのか?」ギロ




真司「お前っ……!! チェイスは臆病者なんかじゃないぞ!!」

巧「……チェイス! もうそんな奴ほっとけ! 行こうぜ!」

チェイス「もう少し待ってくれ」



チェイス「……俺が怖いのは、守ってもらえなくなる事ではない」

戒斗「……何……?」

チェイス「……お前が俺達と行動を共にしてくれなければ、俺は……」








チェイス「お前を守れない」



戒斗「……!?」

224 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:18:59.19 ID:7ZZz/cPM0



チェイス「俺はそれが怖い。俺はお前をまだよく知らない。だが、お前が俺のあずかり知らぬ場所で危機に陥る事になれば……」

チェイス「俺は、お前をここで引き留めなかった事を、後悔するだろう」

チェイス「俺は後悔をしたくない。どんなときでも、自分の納得のいく選択を選びたい」

戒斗「…………貴様は、俺が弱いとでも言いたいのか?」

チェイス「そうではない。……実際にお前は、俺の心配が無用なほどに強いのかもしれない。だが……」

チェイス「この世に絶対的な強さなど無い。万が一と言う事も有りうる。だからこそお前は、ここに居るのではないのか?」

戒斗「!! …………」

チェイス「俺は、今こうして言葉を交わし、同じ境遇にある人間が傷つく事に悲しまずにいれるほど、都合の良い心を持っていない」

チェイス「…………俺を弱い男だと、思っても構わない。……構わないから、共に来てはくれないか」

チェイス「…………頼む」ペコリ

戒斗「…………」




真司「チェイス……お前……」

木場「…………」

巧「…………」

蓮「…………」




戒斗「…………」








————それが俺の弱さだとしても……拒まないっ……俺は……泣きながら進むッ!!




225 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:20:15.21 ID:7ZZz/cPM0



戒斗(……弱さを認め、肯定し……本当の意味で強くなる……か……)

戒斗(……もっともこいつの言う弱さは……そもそも弱さではなく、強さなのだろうがな)

戒斗(…………『優しさ』、という名の……)

戒斗(……優しい者ほど、先に倒れていった……しかし……)

戒斗(奴等は決して、本当に弱かったわけではなかった……その優しさに、意味が無かったわけではなかった……)

戒斗(一人一人の優しさが、他の命へと連なり……最後に、葛葉の勝利と言う形へ変わった)

戒斗(人類は……俺という魔王から、未来を奪い返した……)

戒斗(…………やはり、認めざるを得んようだな……葛葉……)

戒斗(お前の言う……本当の強さとやらを……)



戒斗「……いいだろう」

チェイス「!」

戒斗「赤の他人の安否で一々不安になる、お前の考え自体は気に入らないが……その意志は、固く強い」

戒斗「ここでお前の申し出を蹴るのは簡単だが、それはお前の強さを否定する事になる」

戒斗「……今はお前の……その強い心に従ってやる」

チェイス「……俺は、心が強いのか?」

戒斗「俺は強い者を弱いと評価する事も無ければ、弱い者を強いと評する事も無い」

戒斗「俺が強いと言ってるんだ。お前は強い。この俺が認めてやったんだ……もっと堂々としていろ」クルッ

チェイス「…………」

戒斗「何をしている。あのドームに向かうつもりだったんだろう。さっさと行くぞ。そっちに居る2人も呼んで来い」

チェイス「……わかった」




真司「……あいつ、説得しちゃったよ……あの扱いづらそうな奴を……」

木場「……いい人……いや、いいロボットだね。……本当にロボットなのかい?」

巧「……人間よか、よっぽどできた人格してるだろ?」

蓮(……無表情で思考が微妙に読めないが……あいつも、城戸と似たタイプか)


226 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:22:33.31 ID:7ZZz/cPM0


戒斗「……おい」

チェイス「何だ?」

戒斗「……お前はなぜ、そうまでして他人を守りたがる? まして拒絶すら示す相手に、手を差し伸べた……?」

チェイス「…………」

チェイス「人間を守るのが……俺の、仮面ライダーの使命だからだ」

戒斗「……仮面……ライダー、だと……?」

チェイス「人間の平穏と尊厳を守る、希望の戦士の名だ。俺はこの名に相応しくあるために、人間を守り続ける」

チェイス「お前も、誰かにとっての、希望の戦士だったのではないのか?」

戒斗「…………違うな……断じて違う。俺が誰かの希望だと? フンッ……ありえん話だ」

戒斗「……寧ろ、全ての人間にとっての……『絶望』といったところだな」スタスタ

チェイス「…………」

チェイス(……全ての人間にとっての絶望……? この男は、人間の希望を奪うような事をしたのか?)

チェイス(……とにかく、音也ともう1人を呼んで来よう)



◇————◇



真司「よーっし! それじゃあ、8人皆でドームに向かうって事で、いいんだよなっ?」

始「あぁ、それでいい」

木場「俺も賛成だよ。現状、あそこが一番目立つ建物だし、調べれば、何かしら出てきそうだからね」

蓮「まぁ、異議は無い」

戒斗「……同じく」

蓮「……ところで、相川」

始「……何だ」





音也「————だからだな、女の魅力と言うのは最終的に母性に集約されるわけで、そうなれば当然それなりの人生経験がある方が魅力に溢れてるわけだ!」ペラペラ

音也「身体的にも、出るとこ出てる方が色々できるし、どんなものも大きいに越した事は無い! そうだろう? つまり……」ベラベラ

蓮「…………お前はさっきからこいつと何を話してるんだ」

始「……俺が聞きたい……」ゲンナリ


227 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/06(水) 01:24:08.36 ID:7ZZz/cPM0



ここまでです。

次回はまた何人か増えるかも……?

240 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/04/23(土) 17:23:48.34 ID:MS9xXBOn0

気付けば3週近く放置してたのか……近々親族の葬儀があるので、投下はまだできそうにないです。来週の木曜日までにはなんとします。

唐突にワンピ熱が再燃しアラバスタ編からアニメ追いかけてて執筆が遅れてるのは私の責任だ。ごめんなさい。
どうでもいいけど、ライダーでワンピ世界生き残れそうなのって誰だろ。
一瞬クロスとか過ぎったけど、 >>1が一番好きな龍騎やファイズで良くてグランドライン前半ってとこよね……。

274 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 00:49:32.03 ID:LcOHqeCL0

チョーオヒサシブリネ! サイテー!
こんな時間に失礼、 >>1です。

わかってる、みなまで言うな……

前回の投稿の少し後にちょっとしたゴタゴタがありまして、SS書いてる場合じゃねぇ!
ってな事になって、それは先月の終わりごろに解決したんですが、じゃあいざ書こうかなと思ったら、おろ? 全然捗らねぇやべぇ、と。
仕方ないからまだ見てなかった仮面ライダーチェイサーを見たり、空島編を見たりしてインスピレーションを回復させとりまして。
最近になってようやくそこそこ感覚が戻ってきて、投下の目途が立ったのでこうして報告に来た次第です。

生存報告は次からできる限りします。まぁそんな報告必要ない位のテンポにできるのが一番ですが。

予定通り行けば明日の、というか今日の夜7時ごろには投下できますので
まだ待っていてくれてた天使は >>1の罪を数えながらライダーキックの準備をどうぞ。
282 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:02:29.20 ID:LcOHqeCL0

時間ですので上げてきまーす。
284 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:04:02.76 ID:LcOHqeCL0



◇移動開始から約10分◇



蓮「……しかし、本当に妙な場所だな」

チェイス「死後の世界なのだから、すぐ前まで生きていた俺達からすれば、『妙』で当たり前では?」

蓮「……お前は……」

チェイス「チェイスだ。ロイミュードという、所謂ロボットだ。人間ではない」

蓮「…………」チラッ

真司「はは……信じられないかもしんないけど、本当だぜ。目から映像出すの見たし」

蓮「……ロボットにまで、死後の世界のルールが適応されるのか?」

チェイス「それは……俺も気になっている。ロイミュードは人間をベースにして作られている」

チェイス「故に限りなく人間に近い存在ではあるが……機械である事に変わりはない」

チェイス「その俺が、人間のお前達と同じように、死んであの世にたどり着く事があるのか……疑問だ」

巧「でもこうしてここに居るんだから、ロボットも対象だったって事じゃねーのか?」

始「……そもそもここが、本当にあの世なら、だがな……」

戒斗「……あまりにイメージとかけ離れているからな。それが所詮、人間の勝手な想像によるものだと分かってはいても……」

戒斗「ここは現世との違いがほとんど無さすぎる。物に触れた時の感触……聴こえる音……全てが同じだ」

戒斗「……今歩いているこの風景に関して言えば、不可思議ではあるがな」

始「右を見れば見渡す限りの草原と田んぼ、その向こうには大きな山と森……」

始「左を見れば、同じ草原の奥に砂浜を挟んで海……正面のドームとのアンバランスさも相まって、もはや意味不明だな」

巧「俺達が居た家があった場所から少し歩いただけで、ここまで景色が変わるなんてな」

木場「……やっぱり、あの世で間違いんじゃないかな? 俺達全員、死んでいるのは確実に共通しているし……」

木場「何人もの死んだ人間が同じ場所で生き返って……なんて、そっちの方がありえないと思うけど」

真司「だよなぁ。もしも、ここが地球上の何処かであの世じゃないとしても、こんな凄い自然の中に巨大ドームがある変な場所なんて、どこにも無いよな」

戒斗(…………海とドームを除けば……昔の沢芽に、少しだけ似ているか……)

285 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:05:14.62 ID:LcOHqeCL0


音也「ま、何でもいいだろ! 俺達は今こうして、言葉を交わし物を食べ、己の意志で行動できる……現世の肉体が死んでも、俺達の魂はここに在る」

音也「難しく考えんでも、気ままに楽しくやってりゃいいんだよ!」ケラケラ

木場「ははは……気ままに楽しく、か……何だかんだで、大事な考えかもしれないですね」

始「それも悪くはないが……まずはここが、本当に俺達にとって害の無い場所なのか、判断がつくまで気は抜けんぞ」

音也「んも〜、お前警戒しすぎだろぉ! 息苦しくならんのか? 肩の力抜いてみー」

始「……お前は不用心すぎるし力を抜きすぎだ」ハァ

巧(……出会って十数分でバカを見抜かれてるな……いや、見抜くとか以前の問題か)

音也「んだとぉ! 人をバカを見るような目で見ながら何を言うか!」

始「…………お前がバカじゃなかったら、ここに居る全員がノーベル賞でも取れそうだな……」フー…

音也「んなこたぁない! 俺はバカじゃないしむしろ天才だが、バカと仮定したとしても1人はバカのままだろう!」

巧「誰がだよ?」

音也「真司に決まってんだろ」

木場「……? あ、あれ? 城戸さんは?」

蓮「! 城戸! どこだ!?」

真司「え? ここだけど?」ヒョコッ

蓮「…………橋の下に降りて何をしてる……」

真司「いやー、かなり綺麗な水してるからさっ、もしかしてザリガニとかいるんじゃないかなーって!」ワクワク

蓮「…………」

巧「……あのなぁ真司さん……」

音也「見ろ。俺は絶対にこいつほどバカじゃないぞ!」

始(……どっちもどっちだろうに……)

チェイス「……ザリガニがいるのか?」

真司「かもしんない! ほらこれ見ろよ! すっげぇ水が透き通ってるだろ!?」パシャパシャ

チェイス「…………」ザッ

巧「いやお前まで行くなよ!?」ガシッ

蓮「さっさと戻れ城戸! 置いていくぞ馬鹿がっ……!」


286 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:06:28.18 ID:LcOHqeCL0


◇数分後◇



チェイス「着いたな」

真司「うっわー、やっぱでっかいなーここ……」オー

木場「東京ドーム並みですね。……人は……見当たらないけど」

巧「この雰囲気だと、中にいる可能性も望み薄だな……」

蓮「どっちにしろ中には入るんだ。行くぞ」

始「慎重に進むぞ。何か待ち構えている可能性も考慮しなければならない……」

音也「んで、どこから入る?」

戒斗「正面だ。わざわざ別の入り口を探す方が面倒だ」

始「人の話を聞いていたか……?」

戒斗「俺が1人で行って確認すればいいだろう。何かあったとしても、俺ならば多少の無茶は可能だ」スタスタ

木場「あ、ちょっと……!」

蓮「…………」スタスタ

真司「蓮?」

蓮「あいつ1人では不安だ。俺も行く」スタスタ

真司「あっ、じゃあ俺も!」タタタッ

木場「……彼等だけ行かせて、いいのかな」

チェイス「なら、俺も行こう」スッ

巧「……もういっそ全員で行っちまおうぜ。ここに何か罠を仕掛けるくらいなら、最初から俺達を襲うなりしてるだろ」

木場「まぁ……確かに」

音也「だとよ。行くぞハジメちゃん!」

始「……何なんだその呼び方は……」

巧「……金○一か?」

音也「? なんで耕助が出てくる?」

巧「あぁ……そっちしか知らないのか……」

木場「?」

287 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:08:58.39 ID:LcOHqeCL0


◇ドーム内・通路◇



戒斗「…………なんだ……これは……」

戒斗(……売店があるのに店員が誰もいないのは、まぁいい……だが……)

戒斗「……『これ』は……なんの、人形だ……?」

戒斗(等身大の……アーマドライダーのような人形が、上下左右からライトを当てられて立っている……)

戒斗(隣には1台のバイクもある。こっちは本物の二輪車のようだが……)

戒斗(……触った感触は、ただのマネキン等のそれだな……特に目立って怪しいところも無いが……)

戒斗(同じように、これとは違うデザインの人形とバイクがセットになって、いくつも通路に並んでいる……)

戒斗「……! これは……碑文? この人形の説明文……なのか?」




真司「おーい! 戒斗ー!」

戒斗「!」

蓮「……何か見つけたのか?」

戒斗「お前達、結局ついて来たのか……」

蓮「あぁ。それで……これはいったい何だ?」

戒斗「さぁな……今その説明文らしいものをこいつの隣に見つけた」

真司「人形……だよな?」

戒斗「そうらしい。ただのオブジェ……この通路の飾りとして置かれているようだ」

真司「……黄色い目に、黒い体……赤い線がちょっと入ってて、メタリックな感じ……」

真司「なんかかっこいいなぁ……! 俺達が変身してたのとちょっと通ずるところあるよな!」

戒斗「! ……変身、だと?」

真司「ん? 蓮から何も聞いてないのか?」

戒斗「……そいつとはお互い、身の上話をするような関係じゃないからな……だが、変身とはどういう事だ」

戒斗「貴様らもアーマードライダーなのか」

真司「アーマード……? 『ライダー』の部分は合ってるけど、俺達のは仮面ライダーっていうんだよ」

戒斗「……また、仮面ライダーか。あのチェイスとかいう男もそう言っていたが……」

蓮「……城戸……あいつも、俺達と同じなのか? 俺達が出会わなかっただけの……」

真司「いや、チェイスの言うライダーと、俺達が知ってるのとは全然違うよ。変身して戦うのは同じだけどな」



音也「おーい、なんかあったかー?」

チェイス「……そこにあるのは、人形か?」

真司「あれ、チェイスに音也、皆まで?」

始「俺の警戒も駆紋の様子見も、意味は無かったようだな……取り越し苦労か」

音也「んん? 何だこりゃ。妙にメカメカしいデザインの人形だな」

288 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:09:43.11 ID:LcOHqeCL0


木場「……えっ……!?」

巧「!! こいつは……!!」

戒斗「……貴様ら、これを知ってるのか?」

木場「し、知ってるもなにも、これは……!!」







ファイズ人形『』






巧「ファイズ……!?」


289 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:10:45.33 ID:LcOHqeCL0


チェイス「!! まさかこれは……お前が話していた、オルフェノクと戦うための戦士……ファイズなのか?」

真司「え!? そ、そうなの!? これがファイズ!?」

巧「あぁ、そうだ……!! 俺はこいつに何度も変身した! 俺だけじゃない、木場が使った事だってある……!!」

木場「だけど……どうしてファイズの人形が、こんな所に飾って……!?」

音也「…………」

戒斗「……どうやらこの世界は……貴様らのような、他人のために戦って死んだ戦士のための空間……のようだな……」

木場「ど、どういう……?」

戒斗「この世界の支配者か何かかは知らんが、それに準ずる存在の言う、既に死んでいる『仮面ライダー』に当てはまる人物の受け皿……」

戒斗「それが、『この場所』なんだろう」

始「!! 仮面ライダーだと……?」

音也「……やっぱりお前も、何かと戦ってたクチか?」

始「……俺の知っている仮面ライダーは……アンデッドという、人間を襲う不死身の生命体を封印する事を仕事にした戦士の事だ……」

始「だが、ここが仮面ライダーのための世界ならば、俺がここに居るのはおかしい! 俺は……仮面ライダーではない……!」

音也「それを言うなら、俺だってそんな名前で呼ばれたことは無いぞ。っていうか、生きてた頃にそんな言葉を聞いた事すらないんだが」

巧「俺だってそうだ! 仮面ライダーって何なんだよ……!? 俺はそんなフレーズ一度も……」

戒斗「本人がどう思っていようが、ここの支配者がそうだと判断した死人はここへ来る……そんな所だろう」

戒斗「木場、それから、乾巧と言ったな。こいつを見ろ」

巧「……?」

木場「……『仮面ライダーファイズ』…………『乾 巧(18)』……!!?」

290 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:11:57.41 ID:LcOHqeCL0


巧「俺の名前……! って、何で、俺にだけ限定されてるんだ……? 木場や他の奴等も、何人も使ってたのに……」

音也「お前が一番、そのファイズのベルトってのを使っていたって事もそうだろうが……」

音也「何よりも、お前がその力を何のために使っていたか……そこが重要なポイントになってるんだろうな」

始「! お前、何か察しがついているのか……!?」

音也「……あぁ。多分だがここは……俺達にとっての天国であり、墓であり、弔いの地……って感じか。少なくとも、ここを用意した誰かにとっては」

蓮「……その碑文には、何が書いてある?」

戒斗「…………『元々は人間が死亡した後、超低確率で蘇生し、進化した新しい生命体、オルフェノクのための専用武装である』」

戒斗「『オルフェノクによって構成された巨大企業、スマートブレインによって製造された』」

戒斗「『いずれオルフェノクの中に出てくるであろう反乱因子を、確実に抹殺するための武器を求めた結果作成される』」

戒斗「『オルフェノクのみが使用し、装着・変身が可能なファイズギアは、その全ての武装が、オルフェノクを死に至らしめるための力を有している』……」

戒斗「……このファイズギアとか言う物のシステムについての説明は、合っているのか?」

巧「…………あぁ……完全に合ってる……」

木場「その後は、何て……?」

戒斗「……機能についての説明は少し飛ばすぞ。……しかし……こいつは相当お前を知っているようだぞ。乾」

巧「知って、いる……?」






戒斗「……『主だった使用者は、乾巧18歳。幼いころに火事に遭ったことで一度は死亡するものの、それがオルフェノクへの覚醒の引き金となった』」

戒斗「『オルフェノクである自分自身を恐れるあまり、以降他人との交流を極力避け、孤独な毎日を送る』」

巧「ッ!?」


291 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:13:37.40 ID:LcOHqeCL0


戒斗「『普通の人間ではないという事実から、夢や希望を抱く事が無かったため、どんな仕事も長続きせず、住所を転々としていたが』」

戒斗「『ある時ファイズギアを所持した普通の人間の少女、園田真理と出会い、流されるままにファイズへと変身し、彼女を襲うオルフェノクを撃破する』」

戒斗「『それ以降、なし崩し的にファイズの変身者として、オルフェノクと戦う事になる』……」

戒斗「……何か相違点は?」

巧「……な、無い……」

木場「これはいったい……何がどうなって……」

戒斗「この後も、お前がどうして、園田とかいう女と行動する事を決めたか、人間のために戦う事を覚悟したのか……そんな事が綴られている」

戒斗「……最後のくだりだ……『同じ人間だと信じるオルフェノクを、それでも人間のため、自分がその手を汚して殺める事を選び、罪を背負う事を覚悟した男、乾巧』……」

戒斗「『心許せる友や背中を預けた戦友を失い、戦う事の罪を背負い続け、命と心をすり減らしながらも、人間のためにその身を犠牲にし続け散った彼の生き様は』……」

戒斗「…………『間違いなく英雄のそれであり、仮面ライダーの名に相応しい』……」

戒斗「……だ、そうだ」

巧「……!!」





◇————◇


真司『だってさ、仮面ライダーなんて、同じ名前の変身する奴が2人もいて、変身して戦うのに限れば、巧君もファイズに変身するでしょ?』

真司『んでもって、皆人を襲う悪い奴と戦ってて、これって偶然?』

チェイス『……偶然、とするには……あまりに共通しすぎているな』

巧『……偶然じゃないのかもな。ひょっとすると、そういう奴らのための、あの世だったりしてな』

真司『ってことは……巧君は差し詰め……仮面ライダーファイズってわけだなっ!』


◇————◇





巧(あの時話してた事が……まさか本当に……!?)

292 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:15:03.24 ID:LcOHqeCL0


巧「……なんなんだよ……わけわかんねぇよ……!」

木場「これを作った人物は……何をどこまで知っているんだ……?」

蓮(『仮面ライダーの名に相応しい』……? 城戸は俺達の知るライダーとは違うと言っていたが、ここで意味する仮面ライダーとは……)

チェイス「……! それでは、ここに並んでいるのは全て、ここに来た……死んだライダーの……!!」

真司「じゃ、じゃあもしかして、俺のもあったりするの!?」

音也「だろうなぁ。おい、木場……でいいよな? これ、お前のじゃないか? 名前があるぞ」

木場「え? ……こ、これが……?」

音也「なになにー? あー、『仮面ライダーオーガ』……変わった見た目だが、こうして見ると、ファイズと同系統だってのが分かるな」

木場「本当だ、俺の名前が……! で、でも、俺はこんな物知らない! 変身した事が無いどころか、スマートブレインでもこんなもの開発してないはず……!」

音也「? そりゃおかしいな。しかしこうしてお前の名が刻まれんだぞ? ここの説明見てみろよ?」

木場(……『主な変身者は木場勇治21歳……ファイズギアと同じく、対オルフェノク用兵器として作られた、別名【帝王のベルト】……)

木場(基本世界では存在しないシステムであり、基本世界から派生した分岐世界においてその力を振るった』……?)

木場(……【基本世界】って……何だ? 【分岐世界】……? 何のことを————)ズキッ

木場「痛っ……!? えっ……?」ズキンズキン

蓮「……木場?」

木場(何、だ? 急に頭痛が……?)ズキズキッ




ビキイィッッ!!




木場「っがッ!! づあぁあぁ!!?」

チェイス・始「「ッ!!?」」

巧「!? 木場!?」

木場「ぐ、がぁぁあぁ……!!!」ギリギリギリ

蓮「木場!! おい!!」

戒斗「いったい何事だ!!」

真司「ちょ、え!? 木、木場さん!?」

音也「な、なんだおい、どうした急に?」

巧「木場!! おい木場!! しっかりしろ!!」

木場「ぐうぅぅ……!?」


293 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:16:10.41 ID:LcOHqeCL0



———————何を……考えてるんですか?



木場(!? 長田さん……!? 何だ……頭の中で、映像が浮かび上がって……!!)



———————もう一人……俺達と同じ夢を持っていた人間の事を……



木場(!! 俺の声……!? まさかこれは、俺の記憶なのか……!?)





結花『……ファイズ……乾さんの事ですか?』

木場『あぁ……不思議な男だった……彼が生きていてくれれば早く夢に近づけるのに……』










真理『もしかしたら私……嘘つきかもしれない……』

真理『私……人間もオルフェノクも関係ないって言ったけど……水原が言ってたでしょ? 巧がオルフェノクかもしれないって……』

真理『あの時……凄く嫌な気分だった……だから、嘘つきかもしれない……』


木場『………ッ………』





木場(何なんだ……!? こんな事……俺は知らない!! 知らないのに……!!)

木場(……本当に、こんな事があったような、気がしてきた……! 凄く、しっくりくるっていうか……)

木場(実際に経験した……忘れようがない、重要な思い出のような……!?)

294 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:17:16.89 ID:LcOHqeCL0








海堂『…………結花……』



バリッ!! バリバキバギョッ!!



木場『っ!!! 海堂おおおぉぉぉーーッ!!!』

村上『君たちは人間にもオルフェノクにもなりきることができなかった。そして……』

村上『……人間に裏切られたのだ!』

真理『…………』

木場『真理さん……!? どういうことだ!?』

真理『ごめんねぇ、木場さん。でも、どうしようも無かったんだぁ』

木場『嘘だっ……!! 君が俺達を……裏切ったっていうのか!?』

真理『だって、信用できないから。あなたたちの事。いつ人間の敵になるかもしれないし』

真理『……だから、早く死んでよ』









木場『うう……っぅうう……!! あ゛あ゛ぁァッッ!!!』


ガシャアァンッ!!


木場『……海堂っ……!! 結花ぁ……!!』

木場『俺は…………俺は今まで何をやってきたんだぁァッ!!?』

木場『うああああぁあぁぁあっぁぁ……!!!』




木場(……なんだよこれ……園田さんが……俺達を裏切って……?)

木場(…………そんな訳ないじゃないか……どうしてその場所に、園田さんが居るんだ……!)

木場(奴等と彼女が繋がっているとして……スマートブレインと、どう繋がる事が出来るって言うんだよ……)

木場(何で、疑問に思わないんだ……『この俺』は、そんな事も気づかなかったのか……!)



295 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:18:06.36 ID:LcOHqeCL0









観客『オーーガ!! オーーガ!! オーーガ!!』

木場『…………』

ファイズ『木場……!?』

真理『木場さん……!』




————0・0・0————

————ENTER————



【STANDING BY……】




木場『…………変身……』




【COMPLETE……】



ギュウゥオオォォオオォォ……!!!



オーガ『…………』

ファイズ『……!!』

真理『何で……? 何で木場さんが……!?』

オーガ『……漸く分かったんだよ…………俺が生きていく道は一つしかない……』

オーガ『俺はオルフェノクとして生きていく!!!』




木場(馬鹿な……事をっ……!!)









巧『木場……!! お前本気か!? 本当に理想を捨てたのか!?』

木場『そうだ!! その証拠に俺はお前を倒す!! 例えお前がオルフェノクであっても……!!』

巧『……いいぜ……! お前がやれなかった事を俺がやる!! お前の理想は俺が継ぐッ!!』




木場(…………乾君……君は本当に……どこまでも……)

296 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:19:15.77 ID:LcOHqeCL0



ファイズ『!! 真理……!!』

エラスモテリウム『グルルルル……!!』

真理『ひっ……!』

オーガ『!!!』ダッ




【EXCEED CHARGE……】




ギャギィン!! ググググ……!!



オーガ『っ……!!』

真理『……!?』

ファイズ『木場……!!』









巧『……木場……お前っ……』

木場『……約束、して…………俺の……俺の、できなかった事……君が……!』




木場(…………そうか、これは……俺じゃない俺の記憶……)

木場(理屈じゃなく、本能としてっていうか……理解させられた……)

木場(違う世界の俺……違う世界の皆……)

木場(……世界が変わっても……皆、やってる事は変わらないんだなぁ……)

木場(乾君は、人間を守るために……そんな乾君を、園田さんは、真っ直ぐ信じ続けて……)

木場(長田さんは……何も言わずに、俺や海堂の傍に居てくれて……)

木場(海堂も、やっぱり変わらず繊細な癖に、素直じゃなくて……)

木場(そして俺は…………)

木場(勝手に信じて……勝手に幻滅して……簡単に騙されて……怒りを、憎しみを振り撒いて……)

木場(最後には……勝手に希望を押し付けて死んで……残った人たちを悲しませた……)


297 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:20:39.14 ID:LcOHqeCL0


木場(…………馬鹿だよなぁ……本当に……)ユラリ



巧「き、木場……!! 大丈夫か!?」

木場「……うん……平気だよ……」

真司「立って大丈夫なのかよ!? なんかすごい苦しみ方だったけど……!」

音也「お前、なんか複雑な病気でもあんのか……?」

蓮「死後の世界に病まで引き継がれるのか?」

音也「……そりゃそうか」

木場「本当に、大丈夫……ただ、記憶が……頭の中に雪崩れこんできて……」

チェイス「記憶が……?」

始「何の事を言っているんだ?」

木場「……俺は……今ここに居る俺自身は、このオーガと言うシステムを知らない……知らなかった」

木場「知らなくて当然なんだ……これは俺が変身したんじゃなく、俺が経験した人生とは、違う道筋を歩んだ俺が変身したもので……」

戒斗「……何を言っている。訳が分からんぞ。ショックで錯乱でもしたか?」

木場「本当なんだ……! このオーガを見た瞬間、違う世界の、別の俺の記憶が頭の中に……」

巧「違う世界……?」

真司「! もしかして、昨日巧が話してた……パラソルワールドってやつじゃない!?」

始「……パラソル?」

蓮「…………お前、パラレルワールドの事を言っているのか?」

真司「パラレル……うん、多分それだ!」

戒斗「…………」

蓮「……平行世界、か。その別の世界でのお前が使ったのが、これだと……?」

木場「…………えぇ。そういう事みたいです……」

始「……その世界でも、お前は死んだのか」

木場「……どっちの死に様も、かっこ悪いですけど、ね……」

木場「乾君は……何も思い出さないかな? これを見て……」

巧「思い出すって、言われても……別に何も……?」

木場「……そうか……」




木場(どうして俺だけに、別世界の記憶が入ってきたんだろう……?)


298 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:22:16.38 ID:LcOHqeCL0


音也「あー、良くわからんがとにかく、別に体に問題は無いんだな?」

木場「……はい。すみまんせん、心配かけて……」

音也「ん。まぁそれはそれとして……これには、お前の事何て書いてあったんだ?」

木場「……まだ、最初の部分しか読んでないけど……」

木場「…………もう、いいです。俺は……あまり見たくない……」

巧「木場……?」

戒斗「どうした。何か思い出したくない過去でもあるような言いぶりだな」

木場「…………」




戒斗「……自分の犯した罪が書かれていそうで恐ろしい。そんな所か」

木場「っ! ……」

巧「おい、何だよ急に……」

戒斗「フン、図星か。貴様は自分のしでかした事の罪深さを自分で理解している」

真司「か、戒斗?」

蓮「…………」

戒斗「故に、貴様は自分の生きた短い人生に、自信が無い。誰にも誇れる部分が無い……汚点ばかりが目について、自分ですら忘れてしまいたいと、そう考えている」

木場「ッ……!! お、俺は……」

巧「お前……! いきなり何言ってんだよ!? お前に木場の事をとやかく言う権利はねぇだろ!!」

巧「そんな、どこの誰とも知らない奴が書いた文章読んだくらいで、こいつの何が分かるってん——」

戒斗「勘違いするな。俺はそいつの歩んだ人生になど、欠片も興味は無い」

戒斗「こいつの分の説明など、最初の名前と年齢の部分を見ただけで、後は一文字たりとも、視界に映してもいない」

巧「なん、だと……! お前っ……!!」

真司「おい戒斗やめろよ……! 何でそんな事を言う必要が……!」アセアセ

チェイス「ダチのダチはダチ……と言う言葉を聞いたことがある。巧は俺のダチで、木場は巧のダチ……」

チェイス「ダチのダチを侮辱されるのは、聞いていて不快だ。理由のない暴言は慎んでほしいが」ジロリ

戒斗「誰が貴様らとお喋りがしたいと言った。黙っていろ」

チェイス「…………」

真司「お前なぁ……!」

戒斗「……言う必要があると思っているから言っている。俺が理由も無く、憂さ晴らしに貶していると思うのは構わんが、邪魔をするな」

戒斗「不快だと言うなら後ろを向いて耳を塞ぐなりしておけ」

チェイス「! 必要がある……?」

真司(……イライラして八つ当たりしだしたわけじゃないって事か……?)


299 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:24:46.12 ID:LcOHqeCL0



戒斗「……木場。この際はっきりと言っておくが……貴様は……」

戒斗「虫唾が走るほどに…… 哀 れ な 弱 者だ !!」

木場「ッ!? ……っ……」

巧「お前!! いい加減にしろ!! 木場がお前に何をしたん……!!」

音也「待て巧」スッ

巧「!? 音也……!」

音也「今は聞いておけ。全部聞いて、それでも気に食わなかったら、言い返すなりぶん殴るなりすればいい」

巧「な、なんでそんな……!」

音也「いいから! ほれこっち来い!」

巧「おい、離せよ!! 何だよおい……!!」





戒斗「貴様が犯した罪とやらがどんな事かは知らん。知りたいとも思わん」

戒斗「だが、貴様が何をしたにせよ……今のお前の在り方は……不愉快極まりない!!」

木場「…………」

戒斗「……お前は今まで、自分自身で事を決め、それを最後まで貫き通した事があるか」

木場「え……?」

戒斗「生きる事とは、即ち選択し続ける事だ。日常の些細な事から、その後の人生を左右する大きな事柄……全ては己の選択で決まる」

戒斗「そこにいる、貴様の友だと言う乾巧……ここに書かれている事が事実だとするなら、そいつはまさに、大きな決断を迫られ続けた人生だったのだろう」

戒斗「そして決断を迫られるたび……自分の意志で選択し、選んだ道を歩み続けた」

戒斗「その道が、どんなに茨の道であろうと、途中で途切れている道であろうと……そいつは、ただ歩き続けた」

戒斗「選んだ道が正しかったのかそうでなかったのか……そんな事は俺は知らんし、乾自身、理解できん事だろう」

戒斗「しかし……どれだけ茨で傷つこうと、我武者羅に前に進み続け、途切れた道の行き止まりに着いても尚、その先に足を踏み出したそいつは……」

戒斗「お前とは比べ物にならんほどに、強い人間だった筈だ」

巧(……!? こいつ、何言って……?)


300 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:25:43.85 ID:LcOHqeCL0


木場「……あぁ……そうだね……俺も、本当にそう思う…………」

戒斗「だが貴様は何だ? 最初に会った時から……貴様は事あるごとに俺と秋山、そして相川をまとめようとしていた」

木場「それは……! こんな謎しかない場所で1人になったら、皆危ないと思って……!」

戒斗「あぁそうだな。確かに、貴様のその想い自体は本当だろう」

戒斗「…………だが、それだけではなかっただろう」

木場「……!?」

戒斗「貴様は、ただ純粋に……1人になるのが怖かった。見知らぬ人間であろうと、誰かが傍に居なければ、不安だったからだ!」

木場「!! 俺は!! ……俺は、ただ………」

戒斗「だから貴様は俺達をバラバラにさせたくなかった! 自分1人でこの世界を生きていける自信が無かった!」

木場「……っ……悪いのか……! 1人が怖くなるのが、悪いっていうのか!? 怖くなって当たり前じゃないか!」

木場「確実に死んだはずの自分が、こんな見た事も無い場所で1人取り残されたら、誰だって怖いんじゃないのかい!?」

木場「俺は怖かった!! これから何が起こるのか、何をすればいいのかも分からなくて……!!」

戒斗「そうだ。貴様は自分1人では、どこへ進めばいいのか、どう進めばいいのか、判断できなかった」

戒斗「選択できなかった……!」

木場「……!?」

戒斗「だから俺達に……他人に選択を任せようとした……」

戒斗「貴様が弱い理由の3つの内の1つがそれだ。自分で自分の道を選択できない……!」



チェイス「…………」


301 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:27:08.38 ID:LcOHqeCL0



木場「……俺、は……!」

戒斗「だが、どんな人間であろうと、与えられた選択だけを頼りに生きれるものではない。ましてや貴様は壮大な戦いに巻き込まれた身……」

戒斗「お前も、自分で道を選択した事は、何度もあっただろう」

木場「…………」

戒斗「……では、その選んだ道の行く先で、貴様はどうした?」

木場「道の……行く先……?」

戒斗「…………その道を進むのが怖くなった……或いは周りの環境による影響や、他人に余計な事を吹き込まれ、馬鹿正直にそれを鵜呑みにし……」

戒斗「すぐに別の道を進もうとした事は……無いのか?」

木場「!!!」

戒斗「これが2つ目の理由……選んだ道に自信が持てず、進み続けられない事!」




蓮「…………チッ……」

真司「…………」




巧「ちょっと待てよ!! そんなの、人間なら誰でも似たようなもんだろ!! 俺だって強い人間なんかじゃねぇ!!」

巧「色んな事が重なって、自分じゃどうにもならない事だってあんだろ……!!」






戒斗「そうだ、乾巧……その通りだ」

巧「……!?」

始(肯定した……?)

音也「…………」


302 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:28:20.29 ID:LcOHqeCL0



戒斗「今上げたのはあくまでも、俺が今まで目にしてきた、ただの弱者に限らず、やがて強者となる者……あらゆる人間たちがよく抱えていた物だ」

戒斗「正直に言えば、俺にはそれも不愉快なモノではあるが、そこまで非難するつもりも無い……」

戒斗「何故なら……これらは決して、『救いようのない弱さ』ではないからだ」

戒斗「どうにもならない事……確かにあるだろう。俺には縁の少ない事だが、人は迷い、不安を抱く生き物だ」

戒斗「自分を取り囲む状況が悪く、それを打破する術を持たなければ、恐怖に足がすくみ、歩みを止めてしまう者もいる」

戒斗「だが、そういう意志の弱い弱者は、弱者である自分自信を憎み、許せずにいる人間も、決して少なくない」

戒斗「そうであるならば、そういう連中は救いがある。実際に弱さを克服できるかできないかはともかく……」

戒斗「己の弱さを憎むという事は、それは即ち、本心では強くなりたいと願っているからだ」




巧「……!」




戒斗「それらは自分で殻を破り、強くなるために歩み出し始める可能性がある。だから俺は、そういう弱さを全面的に否定する気はない」

戒斗「……それと……これはある女からの受け売りで、俺自身はあまりそうとも思っていないが……」

戒斗「今言った事とは逆に、抱えた弱さを、強くなることで否定するのではなく、その弱さと向き合い……」

戒斗「受け入れ、弱さを含めての自分なのだと、自分自身を肯定し、折り合いを付けて生きる」

戒斗「……それもまた、ある種の強さでもある、らしい」




真司(……ちょっと、意外……戒斗がそんな事も言う奴だったとは……)




戒斗「今言った2つの強さの共通点は、自分が弱い存在である事を、認識できている事だ。これがあるだけで、人は誰しも強くなる可能性を秘めている」

戒斗「……だがな……最後の3つめ……これがある者は、もう救えない……!」

戒斗「こいつをいつまでも捨てられない奴だけは、どんな人間であろうと、俺は絶対に認める気はないッ……!!」

チェイス「……それは、一体……」






戒斗「…………己の弱さを認めず、弱さから目を背けようとする者だッ!!」

木場「ッッ……!!!」

303 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:30:23.11 ID:LcOHqeCL0


戒斗「今弱いのは構わん!! 何かを成すだけの力を持たないのも、何かを恐れ逃げ腰になってしまう事も、この際良しとしよう!!」

戒斗「だが……その力を持たない理由を! 逃げようとする理由を! 自分が弱いせいである事実そのものから逃げようとする、卑怯極まりない思想!!」

戒斗「これだけは……強くなる余地など無い、最悪の弱者たる所以だ!!」

戒斗「貴様はこの自分の人生が綴られた碑文を、『見たくない』と言った!」

戒斗「弱さ故に犯した罪から、目を背けようとしている! 即ち、己が弱さから逃げている!!」

戒斗「自分がやった事の重大さを理解できているくせに、それと向き合うのを恐れ、記憶に蓋をして自分を騙そうとしている!!」

木場「……っ……、……!」

戒斗「……そして貴様は……起きた事柄に関し、自分に責任があるのを分かっていながら、心の何処かで、同時にこうも考えているだろう……!」




戒斗「『周りの皆が、環境が、運が良くなかったから、こうなってしまった部分もある』!! 『だから自分は悪くない』と!!」

木場「!!!?」




戒斗「弱さを認めないばかりか、弱さの理由すらも他の何かのせいにしている時点で、そんな人間は絶対成長しないッ!!」

戒斗「どうせ貴様の犯した罪など、現実から逃げ続けていたツケが回った結果の物だろう!!」

戒斗「そんな最悪の弱者の貴様が……確かな強さを持つ乾と友だなどと……」

戒斗「つまらん冗談も大概にしろ!! 反吐が出るッ!!」

木場「……っく……ぅ……」

304 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:32:12.70 ID:LcOHqeCL0


木場(……そうだ……俺は…………最低だ……!)




————こんな形でも……こうしてお前にまた会えて……すげぇ、嬉しいよ……木場————




木場(俺には……乾君に、あんな言葉を、かけてもらえるような……資格なんてっ……!!)







————バキイィッ!!



木場「……!?」

戒斗「ぐっ……!!」ドサッ!




始「!!」

蓮「…………」

真司「た、巧……!」




巧「っ……ハァ……! ハァ……!」ブルブル

木場「乾、君……」

戒斗「……フンッ」ペッ

巧「……オイ……もういっぺん言ってみろよ……!! つまらん冗談だって……!?」

巧「オイ……!! 誰が俺とダチだと、反吐が出るってんだよぉッ!!?」グワァッ!!

音也「ストーップ、そこまでだ巧。一旦落ち着け。どうどう」ガシッ

巧「落ち着けるか!! こいつ!! こいつ何もッ!! 何も知らねぇ癖に、この野郎ッ!!」ジタバタ!

戒斗「……お前も大概……強さを持っている割に、もの好きな男だな。甘える事しか知らん弱者のために怒るなど……」グシグシ

巧「うるっせぇ!! 木場は弱者なんかじゃねぇ!! こいつはただ優しかっただけだッ!! あんな事に巻き込まれなきゃ、きっと普通に、ずっと優しく生きれたはずなんだ!!」

巧「目を背けるのがそんなに悪いかよ!? 見たくねぇ現実を見据えたら、その現実が変わんのかよッ!!」

チェイス「! ……巧……」

巧「俺は変わらなかったぞ!? 来る日も来る日も……傍で笑ってくれる奴等を守るために、本当は同じ人間な筈の奴等を何人も殺して!」

巧「罪を背負って……守ろうとしたのに……!! 最後に守れたのは一握りだった!!」

巧「木場はこうしてここに来ちまった……! 長田も、草加も!! 皆死んでった!!」

巧「終いにゃ自分まで死んで……!! 真理も啓太郎もバカだから……俺が居なくなって、今頃必死に探し回ってんのかも知れねぇ!!」

巧「あいつ等が、笑顔でいられるために戦ったのに……今頃あいつ等……泣いてるかもしれねぇって思ったら……!!」

巧「結局、俺が守れた物が何だったのか……分からなくなりそうなんだよ……!!」ヘタッ…

音也「……自分を追いつめるような考えはするな。お前には難しい事なんだろうが……」

巧「…………悪い……でも、やっぱり……どうしても思えない……!」


305 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:33:54.29 ID:LcOHqeCL0


戒斗「…………」ジッ…

巧「……俺には、お前が俺の何を見て、俺が強いって言ってんのか、全然わからねぇよ……」

巧「そこに書いてあった事といい……俺は自分が強いなんて……これぽっちも思えないんだ……!」

巧「本当に俺が強かったら……もっとマシな結果になってるだろうがっ……」

巧「【強い】って事が、誰かの命を奪っておいて! 本当に守りたいものは守れないなんていう……見たくもない現実を見て死ぬ事なら!! 俺はそんな強さいらねぇ!!」

蓮「…………」

真司「……巧っ……」

巧「木場が、現実から逃げてるから弱いってんなら……! 俺は……!!」

巧「弱くたっていいからっ……逃げれるもんなら、逃げてほしかったよ……!!」

音也「…………」




戒斗(……周囲に降りかかる災厄を、己の身一つで抱え込み、自分を除く全ての者を守らんとする……)

戒斗(そこに強弱の区別は無く……ただ自分にとって大切だという理由で、己が全てを投げ打ち悪意と戦う……)

戒斗(…………つくづく似ている……あの馬鹿に……)




戒斗「…………やはり……お前は強い。俺が、最も強いと認めた男と、お前は勝るとも劣らん程だ」

巧「…………」

戒斗「だから余計に癪に障る。お前の強さに甘えてばかりの、そいつの弱さにだ」

巧「まだ言うかてめぇ……!!」

木場「いいんだ乾君!!」

巧「! 木場……!?」

306 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:35:23.82 ID:LcOHqeCL0


木場「……駆紋君の言う事は……正しい……俺は……ずっと自分に言い訳してた……!」

巧「…………」

木場「周りの人たちに甘えてばかりで……! 俺がもっと、強い人間だったら……!」

木場「誰に何を言われようと、何が起ころうと……! 仲間を……人間を信じ続ける事が出来るくらい……強い人間だったら!」

木場「君にあんな仕打ちをっ……皆を悲しませる事を、しなくてよかったかも、しれないのにっ……!!」

木場「自分が傷つく事ばかり怖れて、傷ついた時の事ばかり覚えていて……!」

木場「傷つけられた事ばかりじゃ、なかった筈なのに……! 君も皆も、沢山傷ついてた筈なのに……そしてそれに、耐えていたのにッ!!」

木場「駆紋君に言われて、今更気が付いた……! 俺はずっと逃げてたんだ!!」

木場「オルフェノクになって、俺はその事実と戦ってるんだって……人間であろうとする事で、戦ってるんだと思ってた……」

木場「でも違ったんだ……! 俺は戦ってたんじゃない!! 現実から逃げたくて……皆と一緒に戦ってるつもりになって、オルフェノクである自分の運命から、逃げ続けていただけなんだ!!」

巧「……違う……!! 違うだろ木場!? お前はお前なりに、必死に戦っ——」

木場「やめてくれッ!!」

巧「ッ……!?」

木場「…………ごめん……君が俺を思ってくれている事は……凄く嬉しい……本当に感謝してる……」

木場「でも違うんだよ……! 俺は乾君が思ってるような真っ当な人間じゃない!!」

木場「俺は必死に戦ってなんていない!! 本当に俺が……人間として生きようと、死に物狂いで自分の人生と戦えていたら……!」

木場「オルフェノクに着いて人間を滅ぼそうとなんて、きっとしなかった……!!」

木場「俺は、いつもギリギリの所で、運命と戦ってる皆を置いて、自分だけ楽な方に逃げだすような奴なんだ……!!」

巧「!! そんな事!!」

木場「だけど……もう嫌なんだ!! ずっと誰かに甘え続けて、人から、運命から……自分で描いた夢からすら逃げ続けて……!」

木場「自分の不幸を理由に、同じ不幸を誰かに負わせて……!! 挙句に死んだ後まで君に甘えようとしてる!!」

木場「もう、嫌だ……!! こんな俺でいたくない……いや……」

木場「この期に及んで今の俺のままで居たら、ここで君と一緒に居る資格なんて……俺には無いッ……!!」

木場「何のしがらみも無いこの場所でくらい……君とは、仲間として、友達として……!! 隣にいる資格が欲しい!!」

巧「資格なんて……! 俺達はとっくに————」

木場「何も言わないでくれっ、乾君……! 今更遅いけど、それでも、俺は強くなりたいんだ!!君みたいに……!!」

巧「……木場……」


307 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:37:21.91 ID:LcOHqeCL0




————まだ俺にはわからない……何が正しいのか……その答を……君が俺に教えてくれ……!!




木場「あの時……敵も仲間も、正しいことも悪い事も、何も信じられなくなっていた俺が……」

木場「最後の最後にもう一度信じることができたのは、君だった……!」

木場「俺が信じたのはきっと……君の中にある、人間が本当に持つべき、大切な何かだったんだ……!」

木場「だから、俺はここで変わりたい……! でなきゃ、俺はその大切な何かを、ずっと失ったままな気がする……!!」

木場「何よりっ……!!」








木場「あの時、誰かを信じて死ねた自分に嘘を吐きたくないんだッ!!!」





巧「ッ……!!!」

木場「……っ……」スクッ

巧「! 木場……!?」




戒斗「…………」

木場「……駆紋君……君が教えてくれなかったら……俺は、同じ過ちを繰り返してたかもしれない……」

木場「……ありがとう。気付かせてくれて」

戒斗「……勘違いするな。俺は貴様の辛気臭い態度と、弱者の匂いが鬱陶しかっただけだ」

木場「……うん……でも、ありがとう」

戒斗「…………貴様が最悪の弱者でないと証明したいなら、まずはするべき事があるだろう」

木場「……わかってる。ちゃんと、この目に焼き付ける……」

戒斗「…………フン」スタスタ


308 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:38:51.61 ID:LcOHqeCL0



巧「…………」

音也「……あいつ木場の事を、本気で最悪の弱者だとは、思ってなかったんだろうよ」

音也「もしそうなら、そんな人間のためにわざわざ時間を割いて、お前に殴られてまであんな事言わんだろう」

巧「…………あいつが言ってた事が本当でも……俺は、木場を弱いなんて、思わねぇし、思えねぇ」

音也「それはそれで別にいいだろう。あいつが言った事が正しくたって、お前の思う事が正しくないわけじゃない」

音也「お前が木場を強いと思うなら、それはちゃんと木場の中で、本当に強さとして残るさ」

巧「…………」

音也「ほら、行けよ」

巧「は……?」

巧「一緒に見てこいよ。木場がなったライダーの、その記憶ってのを」

巧「いや、でも……」

音也「変わろうとしてるあいつの邪魔になるってか? 一大決心したあいつが、隣に友達が居るくらいでそれに甘えちまうほど、お前の中の木場は弱いのか?」

巧「別にそういわけじゃ……!」

音也「なら行って来い。木場の事を思うなら、あいつが犯した罪ってやつも、ちゃんと解っておいてやれ」

巧「…………」

音也「さーて、俺は俺のイクサ人形を見つけに行くとするか! 俺の英雄譚がどう書かれてるのか楽しみだぜっ!」ハハハ!

巧「…………ったく……」

巧(…………木場……)





真司「……えっと、丸く収まった……って事で、いいのかな?」

チェイス「……そのようだな」

真司「……ふひ〜〜……一時はどうなる事かとひやひやしたよ……」

真司「……木場君、大丈夫かな……戒斗の奴、あそこまでボロクソに言わなくたって……」

チェイス「…………不器用、なのだろう。あれが、駆紋なりの優しさ……なのかもしれない」

蓮「……行くぞ城戸」

真司「へ? どこへ?」

蓮「さぁな。龍騎の人形でも探しに行くか。さぞお前の馬鹿っぷりが沢山書かれてそうだ」

真司「なぁにをー!? ……って、何言ってんだよ! バラバラに行動したら危ないんじゃ……!」

蓮「1人にならなければいいんだ。木場は乾に任せて、俺達は別行動だ。同じところに全員で留まってていたら、調べるのに効率が悪い」

真司「そりゃあ、そうかもしんないけど……木場君の事も気がかりだしさぁ!」

蓮「……いいから来い!」グイッ

真司「うわっ!? な、なんだよ! ぐぇ、ちょっと、首が、苦し!」グググ

蓮「気が利かん奴め……! だから馬鹿だと言うんだっ」ズルズル


309 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:39:59.34 ID:LcOHqeCL0



チェイス「…………」

始「…………」

チェイス「……行ってしまったな」

始「……あぁ」

チェイス「……追いかけなくていいのか?」

始「……別に、俺が秋山を追う理由が無い。寧ろ反対側へ行ってしまった紅の方が気がかりだな。面倒事を増やして戻ってきそうだ……」

始「……お前の方こそどうなんだ?」

チェイス「……多少心配ではあるが、真司もようやくダチと会えたわけだからな。積もる話もあるだろう」

チェイス「今はそっとして置こうと思う」

始「……そうか」

戒斗「…………」スタスタ

始「…………」

チェイス「…………」

戒斗「…………」スタスタ

チェイス「……どこへ行くのだ、駆紋」

戒斗「取りあえずドームの中央へ行ってみる。他の連中は左右の通路に別れて進んだようだからな」

チェイス「俺も同行していいか?」

戒斗「…………断ったところでついてくる気だろうに……」

チェイス「その通りだ」フンス

戒斗「…………好きにしろ」ハァ…

310 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:41:14.66 ID:LcOHqeCL0


チェイス「うむ……では、ハジメちゃん」

始「その呼び方はやめろ」

チェイス「……他人と早く打ち解けるには、あだ名で呼び合うのが良いと聞いたのだが」

始「……俺と打ち解けたいと思うのは構わないが、本人の了承も無くあだ名で呼ぶな」

チェイス「……では、ハジメちゃんと呼んでも構わないか?」

始「たった今『やめろ』と言ったんだが……?」プルプル

チェイス「…………なら……相川」

始「……何だ? (心なしか急に落ち込んだような……)」

チェイス「向こうに1人で行った音也の事を、頼めないだろうか。流石に単独行動はまずい」

始「……、……俺がか」

戒斗(……今一瞬、露骨に嫌そうな顔をしたな)

チェイス「…………無理だろうか」

始「っ…………分かった、行ってくる……行くからお前も早く行け」

チェイス「……すまない、感謝する」

始「……ハァ……」スタスタ




始(剣崎……お前ならこんな状況、すぐに他人と打ち解けて、纏めてあげてしまうんだろうな……)

始(初対面の相手にあだ名で呼ばれても、嬉しそうに笑うお前の顔が思い浮かぶ……)

始(…………会いたいよ……お前達に……橘……北条……遥香さん……)

始「……天音ちゃん……」


311 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:42:29.35 ID:LcOHqeCL0


チェイス「…………」

戒斗「……何をぼさっとしている。俺と行くんじゃないのか」

チェイス「……駆紋」

戒斗「……?」

チェイス「俺は相川を怒らせてしまったのだろうか……」ショボーン

戒斗「……知らん」

チェイス「嫌われてしまっただろうか……」ショボーン

戒斗「知らん!」

チェイス「……他人とうまくダチになるには、どうするのが一番良いのだろうな」ムゥ

戒斗「だから知らん……! 貴様で考えろ!」

チェイス「お前はダチはいたか?」

戒斗「居ないし俺には必要ない! ……下らん事を話してないでさっさと行くぞ」

チェイス「では俺とダチになってくれないか」

戒斗「『では』の意味が分からんぞ……!」

チェイス「ダチはいいモノだ。ダチを知らないのは勿体ない事だ。俺はお前ともダチになりたいし、お前もダチが増えれば、もっと笑顔になれるかm——」

戒斗「わかった。貴様はここに置いていく」ズンズン

チェイス「何故だ。置いていくな」テクテク


312 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:43:52.84 ID:LcOHqeCL0



木場「………………」

巧「…………木場」

木場「…………これを書いた人は……」

巧「……?」

木場「きっと、本当に優しい人……なのかもしれないね……俺なんかより……ずっと」

巧「……何が書いてあった?」

木場「…………『基本世界では存在しないシステムであり、基本世界から派生した分岐世界においてその力を振るった』」

木場「『木場勇治は、交通事故による2年に渡る昏睡状態から死に至り、オルフェノクに覚醒したが』……」

木場「『眠っていた2年の間に変わり果てた環境に絶望し、2度目の死を選ぼうとするが、オルフェノクになった体で簡単に死ぬことはできず、その後スマートブレインに目を付けられる』」

木場「……この後は、スマートブレインに人間を殺せって脅迫されてた事や、長田さんや海堂、乾君達と出会った経緯が書かれてる」

木場「その次が、これ……俺がスマートブレインの側に着いたきっかけになった、長田さんの件に、君と戦って、助けられた事……」

木場「そして……俺が王を道連れにして、死んだ事……」

巧「…………確かに、そのまんまだな……」

木場「……それで、ここ、この辺りから、平行世界……俺が見た別の記憶、ここで言う派生世界の話になってる……」

木場「この派生世界では、スマートブレインの策略で人類が圧倒されて、僅かに生き乗った2000人余りの人間以外は、全部、オルフェノクになってしまったらしい……」

巧「なっ……!!? ど、どうして!!」

木場「分からない……頭に入ってきた記憶は、最後に近い辺りから以前のものは、断片的にしか無くて……青い薔薇がどう、とか……」

巧「ば、薔薇……?」

木場「何にせよ、俺達が経験した事の途中から、未来の流れが変わったのが、派生世界なんだと思う」

木場「……この別世界の運が悪かったのか……それとも、俺達の世界の運が良かったのかは、分からないけど……」

木場「……『絶望的状況下の中、生き残りの人間達に怖れられ、蔑まれながらも、人間のためにレジスタンスとして、オルフェノクの力を使いスマートブレインに抵抗した』」

木場「『しかし、1人の心無い人間の愚かな行為がきっかけで、人間達の信用を失った彼とその友人であるオルフェノク、長田結花、海堂直也の3人は』……」

木場「『信用を取り戻すため、スマートブレインが所持していると噂される、ファイズのベルトを超える【帝王のベルト】を奪うため、たった3人で敵地に潜り込むが』……」

木場「『事前に計画を傍受していたスマートブレインの罠にかかり』…………」

木場「……っ……『結花と直也は戦死してしまう』……」

巧「っ……!!!」

巧(……クソッ……そっちの世界じゃ、長田が生き残るどころか、海堂まで……)ギュウ…


313 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:45:45.72 ID:LcOHqeCL0


木場「……『さらに、計画が漏れた原因が』…………」

木場「『「オルフェノクだから信用していなかった」、という園田真理の裏切りによるためである、と嘘を刷り込まれ』……」

巧「!!」

木場「『これを信じてしまった勇治は、数少ない同じ境遇の仲間を殺された事と、信頼していた相手に裏切られた事のショックで、オルフェノクとして生きる事を決意』……」

木場「『結果、自らが人類のために奪おうとした帝王のベルト、オーガギアを使用し、人類の味方であるファイズ、乾巧と敵対する』……」

巧「…………」

木場「…………『最終的に、自らもオルフェノクである事を明かした巧のファイズに力負けするが』……」

木場「『人質にされた真理が別のオルフェノクに襲われそうになった瞬間、反射的に真理を庇い致命傷を負う』」

木場「……『死を悟った彼は、駆け寄ってきた巧に対し、人間とオルフェノクが共存できる世界を創るという夢を託し、巧の力強い頷きを見て、笑顔で息を引き取った』」

巧「…………」

木場「……ごめんね」

巧「……何がだよ?」

木場「俺は違う世界でも、君や皆に迷惑をかけてた……だから……」

巧「アホッ」ペシッ

木場「痛っ!」

巧「……別の世界で起きた事で、俺に謝ったってしょうがねぇだろ。大体、お前はそこでも、最後には俺達の方を信じて戦ってくれたんだろ?」

巧「いんんだよそれで。次にそういうつまんねーことで謝ったら、デコピンじゃ済まさないからなっ」

木場「…………ハハ、はい。気を付けます……」

巧「……それで、続きは?」

木場「…………それがさ、なんとも奇妙っていうか……不思議な気分になるんだ……まるで……」

木場「今の俺の気持ちを、見透かしてから書いたみたいだ……」

巧「……読んでもいいか?」

木場「あぁ……」


314 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:47:13.17 ID:LcOHqeCL0



巧(……『怪物になってしまった事への悲しみと、心だけでも人間として生きたいという願いの狭間で苦悩し続け』)

巧(『様々な人の悲しみや怒り、痛みや憎悪に触れ、悪意に満ちた策略や自らの運命に翻弄され続けた、木場勇治』)

巧(『彼が人を捨てて怪物へと堕ちてしまったとして、それを「どうしようもない、弱い人間だ」と、本当に非難できる人間が、果たして存在するだろうか』)

巧(『迷いに迷って、壁にぶつかりズタズタになりながら、時に闇に染まりかけても、最後の最後に、彼は人を守る事を選んだ。その命を捨ててまでも』……)

巧(『それは結局、木場勇治と言う人間が、どこまでも優しく、純粋だからこその結末だったのだろう』)

巧(『純粋が故に揺れやすく、脆く儚い。それでも、確かに誰かを想って戦っていた彼には』……)

巧(『どうかこの名を送らせてほしい。そしてどうか、自らも、この名を名乗って欲しいと願う』)




巧「…………【仮面ライダーオーガ】……」


315 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:48:27.14 ID:LcOHqeCL0



木場「…………読んでいて気づいたんだ……この内容、俺がしでかした肝心な事は、あやふやというか……ぼかして書いてあるんだよ……」

木場「……君を実験材料に使って、君の寿命を縮めた事も、あの子を王に覚醒させようとした事も……」

木場「…………俺が初めてオルフェノクになった時に、怒りに任せて……人を殺してしまった事も……!」

巧「! ……そうか……」

木場「誰だかは知らないけど……やっぱり俺は、この人にも、君にも誰にも……こんな風に肯定してもらっていいような人間じゃないと、思う……」

巧「お前……」

木場「でも」

巧「!」

木場「何か、これを見たら……そんな風に考える事自体が、この人や、君や残してきた皆……駆紋君の想いを、軽んじる事になるのかなって……今思った」

木場「こんな風に俺を……こんなダメな俺を、認めてくれる……励ましてくれる誰かが居るなら……俺は今度こそ、それに応えたい」

木場「例え今の自分が、死人だったとしても……皆が認めてくれた俺のまま……この場所で変わるんだ」

木場「…………乾君」

巧「……ん」

木場「……俺、もう、逃げないから」

巧「…………ハリキリすぎんなよ、程ほどにな」

木場「……うん!」


316 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:50:15.62 ID:LcOHqeCL0



巧「……で、どうする? なんか皆、俺達に気つかっていなくなっちまったけど」

木場「あー……じゃあ、二手に別れようか? 通路を真っ直ぐ行っただけなら、走って行けばすぐ追いつくんじゃないかな」

巧「そうすっか。んじゃ、俺は音也と、えっと……相川? が行った方に行くわ」

木場「なら、俺は秋山さんと城戸さんの方だね」

巧「おう、後でな」タッタッタ

木場「うん、また!」タッタッタ





巧(……木場の奴……吹っ切れた顔してたな。戒斗の奴はまだちょっとムカつくけど、いい方に転がったなら、良しとするか)タッタッタ

巧(……またあいつと、一緒に笑える日が来るなんてなぁ……)フフッ

巧「しっかし音也の奴どこまで行ったんだ? ってか、このまま進めば、先に相川に会う事になるんだよな……」タッタッタ

巧(どーすっかな……あいつ、なんか俺と似てる気がすんだよな……『できれば話しかけんな』的なオーラっつーか……)タッタッタ

巧「…………」チラリ

巧「それにしても、色々あんな、この人形……これが全部、謎の誰かさんの言う、仮面ライダーなんだな……」タッタッタ

巧「……誰かのために戦って死んだ戦士……か————ッ!!?」ビタッ





巧「……こ、これ……は……!!」



巧(そうだ、何で思いつかなかった!?木場がいるんだ……一番コイツを使ってたあいつが、来てないわけねぇ!!)






カイザ人形『』





巧「草加……!!」

巧「『仮面ライダーカイザ』、『草加雅人(21)』……! やっぱりだ、間違いない!」

巧(……そうか、あいつも、来てるんだな! ……会ったら会ったで面倒そうだけど)

巧(……居たらなんて話しかけりゃいいんだ? 何を言っても嫌味が返ってくるよな……)

巧(いや、真理に会えなくなった分余計に荒れてそうだし、下手に関わると理不尽にキレられるかも……)

巧「……ま、それはそれで俺達らしいか。あいつもここで暮らしいく事になる以上、色々割り切らなきゃやってけねぇし、多少は落ち着くかも……」

巧「……ん……?」

巧(…………待てよ、草加が死んだ、直接の原因って……)





巧「!!!」

巧「や、やべぇ!! 木場と草加を鉢合わせるわけには……!? 少なくとも俺が一緒にいないと碌な事にならねぇぞ!!」ダッ!!

317 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:52:54.22 ID:LcOHqeCL0



音也「……うーむ、中々見つからんな。数はそう多くはないようだが、少々大きい間隔で置かれてるから、目当ての人形を探すのも一苦労だ」

音也「しかしこの仮面ライダーとやら……存在した世界も生まれた経緯も違うからか、デザインもそれぞれ全く違うな」

音也「…………これに至っては俺のイクサとは似ても似つかんな。どこか和風っぽい感じっていうか……」

音也「ただ、それにしては……何でギター持ってんだコイツ。バンドマンだったのか?」

音也「何々……? 『仮面ライダー斬鬼』……『ザンキ(32)』? ライダーの名前と本名が同じなのか?」

音也「……『変身者はザンキ32歳』……『【ザンキ】とは彼の仕事上の名義、コードネームのようなものであり』……」

音也「『本名は【財津原蔵王丸(ざいつはら・ざおうまる)】という』……」

音也「……すんげぇ仰仰しい名前だなオイ……素顔はどんな顔してんだろうな」

音也「ま、他人の話は後でいい。それより俺のイクサはどこに……ん?」





白い帽子の男「…………」





音也「おっ、人発見。ライダー人形を眺めてるとこからして、同じ死人か」

音也「おーい! そこの俺様程じゃないがダンディなおっさん!」

白い帽子の男「ッ!」ザッ

音也「ん? あぁ……まぁ、そう警戒するな。俺はあんたと同じ立場の人間だ、危害は加えん」

音也「俺の名は紅音也。100年に一度の天才音楽家だ……!」

白い帽子の男「…………」ジッ…

音也「さぁ、俺は名乗ったぞ? そっちの事も教えてほしいんだが?」









荘吉「……鳴海荘吉、探偵だ」



319 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/06/16(木) 19:59:37.83 ID:LcOHqeCL0


今回はここまでです。

木場さんへの戒斗さんによる強者理論SEKKYOには思うところもあるかもしれませんが
今後の展開上、同じ屋根の下で暮らすことになる木場、戒斗、蓮、始の4人もちゃんとした繋がりを持たせたかったので
少々強引な展開になってるかもしれません。

そして今回から登場のおやっさん、ザンキさん、そして我らが草加雅人が追加されました。

人が増えてさばききるのが大変ですが、頑張るぜ……!
348 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/20(水) 20:18:00.12 ID:gzh0yfWQ0

初めて購入したPC洋ゲーに嵌りまくって作業どころか生存報告すら怠ってしまったのも
全部スカイリムって奴の仕業なんだ……

MODぶっこみまくったせいで、先日クラッシュ確定から復帰できなくなり、ようやく目が覚めました……
これからは次回までの進行状況と合わせて、少なくとも週に一回は報告に来ます。

現在の進行度は大体1/3位で、来週の金曜までには更新します。

何度もご心配おかけしてすみません。
358 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:02:50.91 ID:nVmI0uud0

水曜には投下しようとか思ってたのに、結局期日になってしまった。
前回の文量に比べると短いですが、行きます。

それと今回、一気に人増えます。

359 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:06:29.21 ID:nVmI0uud0


音也「探偵? 珍しい仕事してんだな」

荘吉「……お前、俺と同じ立場の人間……と言ったな」

音也「ん? ひょっとして、まだ自分の状況が分かってなかったりすんのか?」

荘吉「いや、俺が死んだのは覚えている。ここに来たときに、同じ状況の人間とも接触している。ここが死後の世界だって事は理解している」

荘吉「……お前は、どうして死ぬようなことになった」

音也「いきなりプライベートな事を聞く奴だな……まぁいい! 俺は懐の広い男だ! いいだろう話してやろうじゃないか!」

音也「俺はある1人の愛する女のために……その女を苦しめる悪の親玉と、命がけの————」

荘吉「ファンガイアのクイーンと、キングの事、か?」

音也「ッ!? お前なんでソレを……!」

荘吉「……どうやら本人で間違いないようだな、紅音也」

荘吉「向こうにお前の名前が記された碑文と、ライダーの人形があった。そこに書いてあった内容を覚えていただけだ」

荘吉「本当にお前が、紅音也という男なのか確認したかった。他人の名を騙って危害を加えてくる輩が居ないとも限らんのでな」

荘吉「気を悪くしたなら謝ろう」

音也「あー、そういう事かい。別にいいさ」

音也「……ん!? おい、その俺の……イクサの人形はどこだ!! どこで見た!?」

荘吉「……向こうだ。ここから少し離れたところで見た。歩いて4・5分程度だが……」

音也「成程!! 礼を言うぞ探偵のおっさん!! フハハハ!!」ドダダダー!

荘吉「おい、待て! お前に聞きたい事が……!」

荘吉「……いっちまった、か……やれやれ、騒がしい奴だ」





荘吉(……紅音也……1987に若くして死亡した、昭和生まれの男……)

荘吉(普通に生きてさえいれば、俺と同じ程度の年齢にはなっていただろうに……)

荘吉(……ここでいう、仮面ライダーと呼ばれる人間達は、俺のような一部を除いて殆どが若者ばかり)

荘吉(……俺のスカルの碑文に書かれてあった事は紛れもない事実……紅音也の物も、今の反応からして、ほぼ確実に全てが本当の事……)

荘吉(この事を踏まえれば、ここまで見てきたライダーの碑文に書かれていた事にも、嘘は無い……)

荘吉(……どいつもこいつも、あの馬鹿弟子と大差無い若さで……なんともやりきれん話だな……)

360 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:07:47.90 ID:nVmI0uud0


荘吉「! 仮面ライダー、斬鬼……」

荘吉「……これがザンキの言っていた鬼の姿か……成程、見た目は、スマートめなデザインのドーパント……と言った所だな」

荘吉「……この白いライダー——?」

荘吉(……こいつ、この胸と両腕に付けられているのは……)

荘吉「……!! これは、俺と同じ、ロストドライバー……!?」

荘吉(そうか……! 通りで見覚えがあるわけだ……この胸と腕にある無数の黒いのは、マキシマムスロットか……!!)







荘吉「……【仮面ライダーエタナール】……だと……?」


361 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:09:55.92 ID:nVmI0uud0



始「……紅の奴、一体どこまで行ったんだ……」

始(思わず言われた通りに探しに来てしまったが……どうもあの男は相手にするのが面倒だ……)

始(……引き返したい……)




ガチャリッ……




始「!!」

赤いジャケットの男「……!」

始「……誰だお前は」

男「……北に進んでまず一人……占い通りだな」

始「占い……?」

男「お前も死人だろう? 俺は手塚海之。しがない占い師だ。大きな建物に向かい、しばらく待っていれば進展があると、最初の占いに出ていてな」

手塚「こっちでできた仲間と共に、このドームにやって来た」

始「……お前も、生前はライダーだったのか」

手塚「……やはり、ここにいるのは全員仮面ライダーなんだな」

手塚「俺は、神崎士郎という男が仕組んだ、ライダー同士の戦いに巻き込まれ、仮面ライダーライアとして戦っていた」

手塚「ライダーバトルや、神崎士郎という名に聞き覚えは無いか?」

始「……いや、何も」

手塚「そうか……となると、お前と俺が元いた世界は別モノだな」

手塚「それなら、城戸真司や、秋山蓮という男達を知らないか? こっちに来ているはずなんだが」

始「! ……それならさっき別行動を取ったばかりだ。2人で俺が来た道と逆の方へ行った」

手塚「! そうか……! ありがとう。助かる」

手塚(『最初に出会った男が目的の居所を知っている』……やはり占い通りだ)フッ

362 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:11:58.72 ID:nVmI0uud0



始「用が済んだなら、もう行っても構わないか? はぐれた知り合いを探さなければならない」

手塚「いや、待ってくれ。今俺と仲間が、ここに居る死人を探して、見つけ次第休憩ロビーに連れてくる算段になっている」

手塚「この世界に、どんなライダーが何人居るのか、顔合わせも兼ねて確認しておきたくてな」

始「……成程な」

手塚「できれば、そのお前の知り合いという人物にも知らせたい」

手塚「だが俺は城戸と秋山を探しに行かなくてはならないから、お前は知り合いを見つけたら、そいつを連れてロビーに来てほしい」

始(……俺だけで行ってはマズいだろうか……)

手塚「……どうした?」

始「いや、何でもない……できるだけ大勢に伝えよう」

手塚「そうしてくれ。12時に集合する予定だ。忘れないでくれ」

始「分かった」

手塚「……ん、そういえば、まだ名前を聞いていなかったな」

始「……相川始だ」

手塚「! ……そうか、覚えておこう。それじゃあ、また後で」

始「……あぁ……」スタスタ





手塚(……相川始……確か、仮面ライダーカリス……だったか)

手塚(全ての生物の始祖、アンデッド……その中でも特に異質な存在であるジョーカー……)

手塚(人と出会い、心を知り、人のために戦い散った異形の者……)

手塚(人間でなかろうと、種族が別だろうと……分かり合う事ができる者たちが居るというのに……)

手塚(俺達は……同じ人間同士で……)

手塚(……いや、ここではもうその足枷も無い。色々あったが、これからは、笑いあえる時間も増えていく事だろう)

手塚「そのためには、まず本人たちに会わないとな」スタスタ


363 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:13:14.26 ID:nVmI0uud0


◇——◇



真司「なーー蓮ーー」

蓮「なんだ」

真司「龍騎の人形どこだよー! 見つからねーぞー!」

蓮「俺が知るわけないだろう。道沿いに進んでればその内見つかるだろ」

蓮「それよりも人を探せ。これだけ見た事ないライダーが並んでるんだ。他にも何人かここに居るはずだ」

真司「あーあー、なんか腹減って来たなー……売店はいっぱいあるのに、店員が居ないから買えないし、っていうかお金ないし……」

蓮「朝は喰わなかったのか?」

真司「いや食べたけどさ……こうも色々食べ物屋さんのメニューとか、食品サンプル見せられるとさー、分かるだろ?」グゥ〜

真司「あ……ハンバーガーだ……いーなー、食べたいなー……」ジュルリ

蓮「サンプルでも齧っていろ」

真司「食えるか!! あーーもう!! 本当に誰もいないのかなぁ!?」ダッ

蓮「おい、城戸……」

真司「誰かーー!! いませんかー!! あ、これ呼び鈴だ……!」

真司「おーい!! 店員さーん!! いないのー!! お腹減ったぞー! テリヤキバーガーとポテトLサイズーー!!」チリンチリンチリーン!!

蓮「おい、やめろ城戸……!」

蓮(こいつが騒ぐと俺まで腹が空いてくる……今朝はまともに調理するような空気でもなかったから、パンと水だけだったしな……)グゥ…



ブゥン……ガシャンッ!



蓮「!? 何だ……!!」





サソード人形『』ガシャンガシャン




蓮「なっ……!?」

蓮(こいつ、ただの人形じゃなかったのか!?)

蓮「チッ……!! 城戸ォ!!」

真司「オラー店長働けー!! 仕事サボんな給料泥棒ーー!!」チリンチリンチリン!!



サソード人形『』ガシャッ!ガシャッ!



蓮(こいつ、城戸の方に向かって……!!)

364 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:15:30.73 ID:nVmI0uud0


蓮「おい城戸!! そこから離れれろ!!」

真司「は? ……うおぉ!? 何コイツ!?」

サソード人形『』ガシャッガシャッ

真司「やば、うわあぁーー!!」

サソード人形『』ガシャッガシャッ

真司「あぁーー……!! ……あ?」

サソード人形『』ガシャッガシャッ

真司「……あ、あれ? 素通り……?」

蓮「……!?」



サソード人形『』ガションッ!




真司「……え……」

蓮(……カウンターに、立った?)





サソード人形『イラッシャイマセコンニチハ』

真司「うおっ!? って、え?」

サソード人形『ゴ注文ヲドウゾ』

真司「あ、はい。あの、テリヤキバーガー、と、ポテト、L……で……」

サソード人形『オ飲物ハイカガデスカ?』

真司「えっ……じゃ、じゃあ……オレンジジュース……М……」

サソード人形『カシコマリマシタ。少々オマチクダサイ』ガシャガシャ

真司「…………」

蓮「…………」



真司・蓮(そういうシステムだったのか……!!)



サソード人形『オマタセイタシマシタ』ガション

真司「早っ! ……本物、だよな? 湯気立ってるし……」

サソード人形『マタノゴ来店オマチシテオリマス』ペコリ

真司「え、あの、支払は……?」

サソード人形『会場内デノ販売物ハ、初回ノミ、ライダーポイント無シデ購入デキマス』

真司「あ、そうですか……あの、ライダーポイントって……?」

サソード人形『…………』ガショガションッ

真司「あ、あれ? ちょっと? おーい?」



サソード人形『』ガションッ



蓮「……元の位置に……戻った……」

真司「えー……」

365 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:17:23.04 ID:nVmI0uud0


蓮「……随分と、シュールな……光景だったな……」

真司「変身してた本人が見たらどう思うんだろな……」

蓮「…………お前、それどうする気だ」

真司「……トレイで出されちゃったからなぁ……これ持って探索ってわけには……」

真司「……そこにテーブルあるし、食べるよ。勿体ないしな」

蓮「……ハァ……」

真司「……蓮も頼めば?」ガサガサ

蓮「…………」

真司「……んぐ、むぐ……あ、普通に美味いぞこれ!」ホクホク

蓮「…………」

蓮「…………」チリンチリン

サソード人形『』ガションッ



ガシャガシャ……ガションッ



サソード人形『イラッシャイマセコンニチハ。ゴ注文ヲドウゾ』

蓮「…………ダブルチーズと、チキンフィレオを……」

???「あの、俺も一緒に頼んでいいですか?」

蓮「!」

木場「どうも、さっきぶりです」

真司「ングング……あ! 木場君! ……もう、いいの?」

木場「はいっ。もう大丈夫です。恥ずかしい所見せちゃいましたね」

真司「気にすんなって! それより木場君、戒斗と一緒の家だろ? これからあいつになんか酷い事されたら、俺に言えよ!」モグモグ

木場「いやいや、酷い事ってそんな……駆紋君は、俺の事を思って言ってくれたわけだし……」

真司「そうかもしんないけどさぁ! 言い方ってもんがあると思うのよ俺は! もし俺があんなキツイものの言い方されたら絶対傷つくよ! 1日凹む自信があるね!」モグモグ

蓮「自分で言っていて悲しくならないのか?」

真司「うるへー!」モグモグ

366 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:17:52.61 ID:nVmI0uud0


木場「……あの! 秋山さん……」

蓮「?」

木場「さっきはすいません……気を使わせちゃって……」

蓮「……俺は同じ場所にいつまでも留まっていても仕方ないと思っただけだ。気を使ってなんていない」

木場「……フフッ」

蓮「……何がおかしい」

木場「あ、いや、ごめんなさい……ただ……フフフッ」

木場「……俺が、あの家で最初に会ったあなた達は……本当は皆、凄くいい人なんだろうなって……」

木場「いい人だからこそ……きっと、ここに居るんだろうなって……そう思ったんです」

蓮「……俺がいい人だと思うのか」

木場「えぇ。とても」ニコリ

蓮(……俺がいい人なら、城戸はもう菩薩か何かだな)

蓮「……それはともかく、注文するならさっさとしろ。こいつがさっきから固まってるぞ」

サソード人形『』シーン

木場「あっ……」

367 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:19:41.77 ID:nVmI0uud0



◇ドーム中央・観客席付近◇




チェイス「やはり広いな」

戒斗「東京ドーム並みだからな」

チェイス「これだけ広いと、野球というスポーツもやりがいがありそうだな」

戒斗「……お前、野球をやった事があるのか?」

チェイス「いや、全くない。バスケットなら、少しやった覚えがある」

チェイス「駆紋は何か得意なスポーツがあるか?」

戒斗「……サッカーなら、少し」

チェイス「成程、サッカーか」

戒斗「球技に限らないのであれば、一番はダンスだがな」

チェイス「ダンスを踊れるのか?」

戒斗「あぁ。それだけは誰にも負けんと自負している」

チェイス「相手はどんな人だったのだ?」

戒斗「……はぁ?」

チェイス「ダンスは、共に踊るパートナーが必要だと、聞いた事があるが」

戒斗「それは社交ダンスだろう! 俺がやっていたのはストーリトダンスだッ!」

戒斗「俺が誰かと手をつないでクルクル回る踊りをするように見えるのか貴様は……!」

チェイス「……それはそれでいいと思うが?」

戒斗「……お前と話していると調子が狂うな……」ハァ

チェイス「……む?」

戒斗「! 何だ?」

チェイス「向こうで誰かの話声がする」

戒斗「……行くぞ」

チェイス「あぁ」






コートの女性「だ・か・ら! 何でアンタみたいなイカレた奴と一緒に行かなきゃならないわけ!?」

白い服の青年「なっ……貴様! 我が兄に向かってイカレたとは何事だ!」

黒スーツの女性「まぁ……その恰好は確かに変よね」

痛い服の青年「……あんた達はいいよなぁ……片やバリバリのキャリアウーマンって感じの恰好で……」

痛い服の青年「もう一方は小奇麗なブランド物っぽい服着てさー……」

痛い服の青年「光の住人って雰囲気が漂って……あぁ、闇の住人の俺には眩し過ぎるよ……」

368 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:20:50.48 ID:nVmI0uud0


白い服の青年「しっかりするんだお兄ちゃん! 俺達は皆死人……ならばここは天国か地獄かのどちらか!」

白い服の青年「俺が天国に行けるはずがない……という事はつまりここは地獄!! 目の前の彼女らも、我々地獄兄弟と同じく相応の闇を持っているはずだ!」

コートの女性「や、闇って……アンタ初対面の人間相手に……!」

黒スーツの女性「…………」

痛い服の青年「そ、そうか……! 確かにその通り——って待て! 俺は今のお前を地獄兄弟だなんて認めないって言ってるだろ!」

白い服の青年「何故だ! どうしてだお兄ちゃん! 俺程の闇を抱えた男はそうはいないぞ! 俺の目を見てくれ……! 深い闇が見えるだろう!?」

痛い服の青年「…………」ジッ

白い服の青年「…………」ドキドキ

痛い服の青年「……駄目だね」

白い服の青年「なっ!?」ガーン

痛い服の青年「お前の目には光が見えるんだよ……! 捨てきれない鬱陶しい光が輝いてる! ……タブン」

白い服の青年「そ、そんな……!? 俺にまだ光が残ってるなんて……一体どんな光なんだ!?」

痛い服の青年「う、そ、それはその……あー……あ、愛だ!! 愛の光が……見え、る……」

白い服の青年「ッ……!! そう、か……はは……愛の光か……成程、俺が捨てきれない訳だ……」

痛い服の青年「そ、そうさ! だからお前を地獄兄弟の一員とは認められないんだ!」

痛い服の青年「仮にもし俺が認めたって、兄貴だったら絶対認めないなっ!」

痛い服の青年「…………兄貴……今頃、どうしてるのかなぁ……」

白い服の青年「……唯一残った兄さえも失った……! もう、俺には何もないんだぁ……」ヘタリ

痛い服の青年「兄貴……うぅ……!」グスッ

コートの女性「……地獄兄弟……って、何?」

黒スーツの女性「……さぁ……?」


369 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:23:01.24 ID:nVmI0uud0



チェイス「……若い男2人に、女性が2人か。何やら揉めていたようだが……駆紋、どうす————」

戒斗「ッ————!!!」ダッ!!

チェイス「! 駆紋!?」





コートの女性「ッ! ちょっと、また誰か来るんだけど!?」

痛い服の青年「……兄貴……俺こんな所でどうしたらいいんだよぉ……兄貴ぃ……」メソメソ

白い服の青年「ふ、ふふ……やはり、怪物の俺に、居場所などあるわけ無いんだ……! うぅぅ……!」メソメソ

コートの女性「聞けよ!」

黒スーツの女性「……ッ!!? あ、あなた……!!」






戒斗「……湊ッ……」

湊「……戒、斗……な、なんで……どうしてっ……!?」

戒斗「……お前も、こちらに来ていたのか……」

戒斗「…………悪いな。あいつの方が、強かった」

湊「っ……!! 戒斗っ……!!」タタタッ





コートの女性「え……嘘、知り合い?」

チェイス「どうやらそのようだな」

コートの女性「ひゃあぁあぁ!? な、何だよアンタ!?」

チェイス「俺はチェイスだ。ちなみに人間ではなく、ロボットだ」

コートの女性「いや、いきなり背後から現れて何言い出してんの……!?」

チェイス「できれば、そちらの名前も聞きたいのだが」

コートの女性「…………美穂だよ。霧島美穂」

370 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:25:12.13 ID:nVmI0uud0


チェイス「そうか。よろしく頼む。ところで、お前達はここが何なのか、もう知っているか?」

美穂「……仮面ライダーのあの世でしょ? ……あたしの知ってる仮面ライダーと、随分違う奴等が多いみたいだけど……」

チェイス「……そうか。では、今戒斗と共にいる女性も……」

美穂「もう分かってるよ。自分のライダーの人形見つけて、書かれてた事も読んだって……」

美穂「……あたしも、自分の人形の説明見たけど……正直なんか、複雑だよ」

チェイス「……それは、どうしてだ?」

美穂「……さーね。知りたきゃ人形探せばいいんじゃない? あんだけでかでかと目立つ置き方されてちゃ、隠したくても隠せないし……」

チェイス「隠したいのか?」

美穂「誰が自分の人生を事細かに書かれた物を人目のつくとこに置かれて喜ぶのさ……あれを見て、わざわざあたしと仲よくしたがる人なんて、湊さん位だよ」

チェイス「……それで、その2人は……?」

美穂「……知らないって。あたし達がここに居たら、2人揃って話しかけてきて、一緒に行動しようって言われたんだけど……」

美穂「白い方はともかく、黒い方はなんか色々ヤバそうな雰囲気だったから拒否ったんだよ……恰好といい顔の傷といい、明らかに不審者じゃん!」

チェイス「人を見た目で判断するのは良くない。ちゃんと心を見て判断するのが人間のルールではないのか?」

チェイス「……俺の名はチェイスだ。お前の名を聞かせてくれないか」

白い服の青年「うぅ……グスッ……俺は……神に代わり、剣を……振るう男……神代、剣だ……」グスグス

剣「……いや、俺は所詮まがい物……神の代わりにもなれなければ、振るう剣も、初めから無い様な男だぁ〜……!」ズビーッ

美穂「…………」イラッ

チェイス「……何があったのかは知らないが、神代剣……いい名だと思うぞ」

チェイス「そっちのお前も、名前を……」

痛い服の青年「これから俺どうすればいいんだよ……兄貴のいないここで、何をすれば……」

チェイス「すまないが、名前を……」

痛い服の青年「あの時、馬鹿正直にあんな物持っていかなければ……!! あぁあぁぁ〜〜!!」グシャグシャッ

美穂「…………」イライラ


371 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:26:22.32 ID:nVmI0uud0


チェイス「……わかった。後でもう一度聞かせてくれ」

剣「爺や……ミサキーヌぅぅ……!」

痛い服の青年「寂しいよ……会いたいよぉ兄貴ぃ……!!」エッグエグ

美穂「」プツン








美穂「グジュグジュメソメソうるっさいんだよこのモヤシ共ォ!!!」グワッ!!

痛い服の青年「ッ!?」ビクゥッ

チェイス「!?……霧島……?」

剣「うぅ……ヒック……うぅ……?」

美穂「挙動不審気味に勝手に話しかけてきておいて勝手に泣き出すな!!」

美穂「大の男が恥も外聞もなく女の前でピーピーピーピー……見てるこっちが恥ずかしいっつうの!!」

美穂「特にアンタ!!」ビシッ!

痛い服の青年「っ、な、何だよ……」

美穂「黙って聞いてれば光だ闇だって訳のわからない事ばっか言って……! 死んで悲しいのは皆一緒なんだよ!!」

美穂「自分だけが不幸だとでも思ってんの!? 甘えんなヘタレ!!」

チェイス「…………」

剣「…………」ポカーン

372 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:28:33.22 ID:nVmI0uud0


美穂「大体何? 地獄兄弟? もう名前からしてダッサいんだけど!」

痛い服の青年「なっ……!?」

美穂「光の住人とか闇の住人とかって勝手に人を区別して、自分に無い物を誰かが持ってたら、『光の住人だから持ってるもので、闇の住人の自分は無くても仕方ない〜』……」

美穂「……って、言い訳するのが目的のグループか何か? それが地獄兄弟? へーすごいねー! そのとことん腐った根性の情けなさが!!」

痛い服の青年「う、うるさい!! お前なんかに地獄兄弟の何がわかるんだよ!!」

美穂「知らないし知りたくもないね! アンタの言う兄貴って奴も、きっと碌でもない男だったんだろうね〜!」

痛い服の青年「!!」

美穂「毎日ウジウジ人を呪って世間を呪って、自分に言い訳し続けて一日を終える……うわぁーヤダヤダ! 絶対知り合いになりたく————」







痛い服装の青年「————笑ったな」




美穂「!」

チェイス「ッ……!」

剣「…………」

痛い服の青年「今……俺の兄貴を……笑ったな……!!」

痛い服の青年「俺の事はいくらでも馬鹿にすればいい……けど、俺の兄貴を笑うのは……! 絶対に許さないぞッ……!!」

美穂「……ふーん、そういう顔もできるんじゃん。だったらさ、大好きな兄貴の顔に泥塗るようなみっともない真似、しない方がいいんじゃない?」

美穂「名前聞かれてんだから、はっきり答えなよ!」

痛い服の青年「……影山だ……!」

影山「闇の住人にして、兄貴の……矢車想の唯一無二の弟分! 影山瞬だ!!」

美穂「はいはい、影山瞬ね。……さ、これでいいでしょ?」

チェイス「……あぁ、助かった」

影山「おいお前! 顔覚えたからな! 地獄兄弟をバカにした事、絶対後悔させてやるぞ! 覚えてろよ!!」

美穂「んん〜〜? あたしそんな事言ったっけかな〜?」シレッ

影山「本当に後悔させてやるからな……!?」ピキピキ


373 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:29:53.51 ID:nVmI0uud0


剣「…………」ポケー

美穂「……何? あたしの顔になんか付いてる?」

剣「……ハッ! い、いや別に! 何も!」

美穂「あっそ。とにかくアンタ達、男なら男らしく、もっと芯のある生き方心がけなよ!」

美穂「最低でも女の前で泣き出したりしないように! 分かった!?」

剣「あ、あぁ……! 分かった! 約束しよう!」

影山「!? おい!」

美穂「なら良し! ……で、何だっけ、あたしらと行動したいんだっけ?」

剣「? ……あぁ! そうだった! いや、正確には、ここで会ったある男に言われて、人を見つけ次第、休憩ロビーに連れてくるよう言われていたんだ!」

剣「できればその、い、一緒に来てほしいが……嫌だと言うならせめて! 皆、12時に休憩ロビーに集まるという事だけ覚えておいてくれ!」

美穂「……まぁ、今はもう、別にそこまで嫌ってわけじゃないし、湊さんがいいなら、あたしは平気だよ」

剣「!! そ、そうか! それは良かった! ハハハハ!」

美穂「?」

影山「……おい剣!」

剣「! な、なんだ?」




影山(何こいつの言う事を素直に聞いてるんだよ!)ヒソヒソ

剣(それは……彼女の言う事が正しいと思ったからだ!)ヒソヒソ

影山(こんな乱暴で口うるさい女の言う事なんか聞く必要ないだろ! 何よりこいつは俺達地獄兄弟を馬鹿にしたんだぞッ!)

剣(えっ……いや、だってさっきは、もう俺は地獄兄弟ではないと……)

影山(あ……う、な、なら! 今からもう一度お前にチャンスをやる! お前が地獄兄弟に入った記念に、あの女を俺達2人で懲らしめるんだ!!)

剣(!? 一体何をしようというんだ!?)

影山(それをこれから考えるんだよ!)

剣(し、しかし……)


374 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:30:47.08 ID:nVmI0uud0


影山(何も痛めつけようとかそういう事じゃない。地獄兄弟の闇の凄さを思い知らせてやれればそれでいいんだ! 軽いお仕置きだよ!)

影山(ここで一番信頼できるのはお前しかいないからな……頼りにしてるぞ弟!!)

剣(!! ……正直、心苦しいが……お兄ちゃんが言うなら仕方ない! 俺はお仕置きにおいても頂点に立つ男だ……!!)

影山「良し! 今ここに、新生地獄兄弟、結成の狼煙を上げるぞ!!」スッ

剣「うむ!!」ガシッ





剣(……だが……やはり少々、気が引けるな……あまり迷惑にならなそうな事で、尚且つお兄ちゃんの機嫌を取れる何かを考えなくては……)

剣(……というか、なぜ俺は初対面の女性相手に、こんなにも気を使ってるんだ?)

剣(…………まさか……)







————剣君っ♪






剣(……馬鹿な! 彼女はミサキーヌではない! ミサキーヌにだって、姉さんと自分を重ねて見るなと言われたじゃないか!)

剣(この神代剣! 同じ過ちを犯す事は絶対に無いッ!)

剣(…………しかし……)




美穂「……チェイスだっけ? あんたのどの辺がロボットなんだよ」

チェイス「…………映像出力」ピカーッ

美穂「!!? え……う、嘘……マジで!?」

チェイス「これが証拠だ」

美穂「ちょ、ちょちょ待って待って! もっかい! もう一回やって!!」




剣(…………この胸を刺すような痛みと、僅かに熱を持った心臓の感覚は……)ボー…


375 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:32:51.09 ID:nVmI0uud0



戒斗「…………話は聞いていたが、本当にロボットだったのか」

チェイス「む、戻って来たか……そちらの女性は、知り合いか?」

戒斗「……あぁ。湊燿子、俺の……仲間だ」

湊「………………」

美穂「……湊さん? どうしたの? 顔色悪いよ……? 大丈夫なの?」

湊「! ……えぇ……気にしないで……平気だから……」

戒斗「…………」

影山「……あんた達も、ライダーなのか?」

剣「違う世界のライダー、か……最初の家で会った2人も、俺達とはまるで違うライダーだったようだが……」

戒斗「……誰だ、貴様ら」

チェイス「白い服を着ている方が、神代剣、その隣の変わった服を着ているのが、影山瞬というらしい」

戒斗「そっちの女は?」

湊「……彼女は、霧島美穂。昨日の夜、目が覚めたら私と彼女で同じ家に閉じこめられていて……ここまで、私と一緒に行動していたのよ」

戒斗「……そうか」

美穂「で? そういうあんたは何者? 仲間って言ったけど、湊さんとどういう関係?」

戒斗「駆紋戒斗だ。湊との関係は言った通りだ。生きていた頃は共に戦っていた。最初は敵だったが」

美穂「……ふーん。何だ、つまんないの。てっきり湊さんの年下の彼氏かと思ったのになー」

戒斗「…………」

湊「か、彼氏って……! 別に戒斗とはっ、そんなのじゃないわ! 戒斗にも迷惑だから、そういう冗談はやめて!」

美穂「……んー……?」

湊「ごめんなさい戒斗! この子結構思った事ズバズバ行っちゃう子で! 余り気にしないであげてっ」

戒斗「…………」

美穂「……あーあーあー。へ〜、そうなんだぁ……湊さん、そういう事か〜」ニヤニヤ

湊「……何が、そういう事なのかしら……?」

376 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:34:29.18 ID:nVmI0uud0


チェイス「……話はまた後にしよう。神代、12時に休憩ロビーへ集合、だったな?」

剣「そうだ。お前達、他にここで会った奴は居るのか?」

戒斗「……俺とこの男を含めて8人だ。残りの6人はどこへ行ったかわからんな」

剣「ふむ……できればその6人にも伝えたいが……」

湊「……今は何時なのかしら?」

チェイス「……11時45分……後15分だな」

美穂「どうする? あたし達だけで行っちゃう?」

チェイス「俺としては合流してから向かいたいが……」

影山「いやでも、もしかしたらもう、他の奴が教えてるかもしれないぞ?」

戒斗「どっちでもいい。多少遅れたところで何か問題があるわけでもあるまい」

戒斗「ここへ来た人間が集まると言うのなら、人数は多ければ多いほどいい。それだけ得られる情報も多くなる……」

戒斗「俺達は残りの6人を見つけてから行く。先に行きたい奴は行けばいい。湊、ついて来い」

湊「! えぇ、わかったわ」

美穂「え? 湊さん、あたし達と一緒に行かないの?」

湊「……ごめんなさい、後で合流しましょう」

美穂「えー! 湊さんが行かないならあたしもそっちについて行こー!」

剣「何!? 行ってしまうのか!?」

美穂「だって流石にあんた達と3人だけっていうのは……嫌だし……」

剣「い、嫌……」

影山「あぁ……今日は胸に闇が溢れてくる日だなぁ……!」グギギ

377 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/07/29(金) 19:39:40.31 ID:nVmI0uud0


ここまでです。



今回で登場確定したのは

龍騎から……手塚海之、霧島美穂。

カブトから……影山、ぼっちゃま。

Wから……克己ちゃん。

鎧武から……湊さん。


の、計6人でした。


とはいえ、まだ話に実際に出てきてない人がいるので、次回にはお披露目したい所。

388 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:38:35.45 ID:DI66KYoI0

投稿しようとした今日まで素で忘れていた生存報告の約束。そして仮面ライダーエタナールとか言うこれ以上ない位の大ポカ。
もう( >>1の頭が)駄目かもわからんね。


投下します。
389 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:40:26.66 ID:DI66KYoI0



◇———その頃の音也———◇




音也「……【仮面ライダーファム】……【仮面ライダースカル】……【仮面ライダーイクサ】……仮面ラ……」

音也「!! イクサ!! あったー!! 俺のイクサだ! まったく、探したぞ! フッ、やっぱいつ見ても完成されたフォルムだなぁ!」

音也「……うん、他のライダーも色々見たが、全く負けとらんな。イクサが一番イカしてる!」

音也「さーて、俺の碑文には何が書かれてるかなー?」ワクワク

???「すまない、そこの人」

音也「『ライフエナジーと呼ばれる、人間の生命エネルギーを喰らって生きる怪人、ファンガイアに対抗するため、対ファンガイア組織である【素晴らしき青空の会】が開発したパワードスーツ、それがこの【イクサシステム】である』……」

???「……聞こえてるか? 話があるんだが」

音也「『この武装は様々な者の手に渡り、何度も所有者が入れ替わっていたが、最後に行き着いたイクサの所有者は、元は唯の一般人にすぎない、紅音也だった』……うんうんその通りだ」

???「……オホン……悪いが、話があるから、こっちを向いてくれないか?」

音也「『彼はとにかく自由奔放である。その場その時の気分で行動し、周囲を掻き乱すだけ掻き乱して、その責任を取るでもなく立ち去る、嵐のような存在だ』……余計なお世話だトンチキ!」

???「……驚いたな……結構大きな声で言ったと思ったが、まるで無反応とは」

音也「分かったからちょっと待ってろっての!今俺は自分の人生を振り返ってるんだ邪魔をするな!」

???「聴こえてるんじゃないか……せめてこっちを向く程度の事はしてもいだろうに」

音也「『特に女性に対しだらしない傾向があり、女と見るや取りあえず口説かずにはいられない性分もあって、彼に対し良い印象を持つ人間はそう多くない』!?」

音也「何だコノヤロー!! 俺のだけ何か書いてある事が酷いぞ!? どうなってんだお前、おい!」

???「いや、俺に言わんでくれ……それといい加減こっちを見ろ」

???「というか、いいのか? 自分の事が書かれてる物をわざわざ朗読しなくてもいいんじゃないか?」

音也「馬鹿だなーお前。わざわざお前に聞かせてやってるんだろうが! この俺の儚くも強く輝き散る花火の如く美しい人生を!!」

???「……色々突っ込みたい事があるが、俺の存在に気づいていて、こうして声をかけられて尚無視するのは、大人の男として、礼儀がなっていないと思うぞ?」

音也「『しかし、それはあくまでも紅音也と言う男をあまり知らない人間の評価だ』……お?」

???「ここまで言ってまだ俺に見向きもしないのか……」

390 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:41:40.01 ID:DI66KYoI0


音也「『自由であるという事は即ち、何物にも流されず、何者にも屈しない強く固い芯がある事の表れであり、その点では、彼は良くも悪くも他の追随を許さなかった』……ハハハ、だろうなぁ!」

???「おい……」

音也「『本人の性格上、彼を真に理解できる人間は少ないが、紅音也の奥底にある本質は、人の奏でる音楽と女性を心から愛し、尊敬し』……」

音也「『それらを奪ったり、傷つける者を何よりも憎み、それらを守るためならば、己の命を投げ打つことすらも厭わない、どこか高潔さすら感じる、彼自身の正義なのだ』……!」

音也「フハハハ! いいぞいいぞ! 良く分かってるじゃないか! 落すと見せかけて褒めるとは、こやつ、やりおるなっ!」

???「……ハァ……おい!」

音也「だぁー!! んもううるせーなぁ! せっかく面白くなってきた……」

音也「とこ、ろ……ッ!!?」








ザンキ「まったく……最近の若者に常識が無くなって来たとは聞くが、それでもまだ少しはしっかりしてると思ってたんだがな」

ザンキ「イブキやトドロキが特別だっただけなのかねぇ……」


391 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:43:16.36 ID:DI66KYoI0


音也「…………お前……何で……」

ザンキ「……? どうした、急に鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」

音也「…………あ……当たり前だろぉッ!!」

ザンキ「うおっ……何だ一体?」

音也「お前っ!! なんだってお前が……!? 何死んでんだ馬鹿野郎ッ!! 俺との約束はどうしたんだ!!」ガシッ!

ザンキ「? ……???」

音也「お前だから、任せられると思ったんだぞ……!! 渡を、守れるって……!!」

ザンキ「ワ、ワタル……?」

音也「クソ……ハジメちゃんの言った通りだなこりゃ……! まさか、こんな所でお前と再会する事になるなんて……!!」

ザンキ「…………」

音也「お前……俺が居なくなった後、何があったってんだよ……次郎……!!」

ザンキ「…………そういう事か」

音也「……?」

ザンキ「俺の名前はザンキだ。と言っても、これは仕事の名義で本名はまた違うんだが……そっちもジロウなんて名前じゃない」

音也「は……? ……何言ってんだお前?」

ザンキ「俺はお前さんを知らない。今初めて会ったんだよ。ジロウってのが誰で、お前さんとどんな関係かは知らないが、俺はそのジロウってのじゃない。別人だって事だ」

ザンキ「顔が似てるのか? 俺と、そのジロウって人は」

音也「…………別、人?」

ザンキ「そうだ」

音也「……他人の空似?」

ザンキ「そういう事だな」

音也「…………なんじゃああそりゃあぁぁッ!! こっちは心臓止まるかと思ったわ!!」

ザンキ「それは、まぁ……何というか、すまんな。こっちも悪気があって似てたわけじゃないんでな……勘弁してくれ」

音也「……あぁ、いや……こっちこそ悪かった。ダチが死んじまったのかと思って取り乱した……」

音也「…………しかし、似てるってレベルじゃないな……生き別れの双子かってくらいだぞ」

ザンキ「そんなにか?」

音也「あぁ。ドッペルゲンガーか何かかな?」

393 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:46:26.66 ID:DI66KYoI0




◇——更にその頃の真司達——◇




真司「ふぅ〜……美味かったー! こういうジャンクフードって、体に悪いって分かってても、ついつい食べたくなるんだよなぁ」

木場「カップラーメンとかも、見かけると買いたくなっちゃいますよね」ハハ

蓮「…………」チュー



パタパタパタパタ……!



蓮「……! 誰か走ってくるぞ」

真司「ん? あ、あれ巧だ! おーい巧ー!」

木場「え?」



巧「ハァ、ハァ……! 木場ッ!」

木場「乾君、どうしたんだい……? あの人を探しに行ったんじゃ……」

巧「それどころじゃねぇんだよ!! あいつは……! まだ居ないか……!?」

木場「あいつ……?」

巧「……木場、落ち着いて聞いてくれ……! 実は、こっちに草k」




ガチャリッ!



巧「!!」

蓮「む……」

真司「?」


394 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:47:51.77 ID:DI66KYoI0


???(A)「待ってよ、どこに行くんだよ……あの人にだって、1人になるなって言われたのに」

???(B)「あいつがそう言ったら、俺がそれに従わなければならない理由があるのかなぁ?」

???(A)「そんな……」

???(B)「俺は足手まといの君のお守りをしながら行動するのはまっぴらなん————!!!」

木場「!!?」

巧(クソッ……!? なんつータイミングで……!!)





巧「……草加っ……」

草加「…………ここに、居たか……乾ぃ……!」




???(A)「……草加……?」

真司「……巧達の、知り合い?」

木場「……ッ……!!」

蓮「…………」
395 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:49:50.75 ID:DI66KYoI0


巧「……草加、落ち着いて話がしたい……!」

草加「君が俺に話……? 一体何を話してくれるんだ? そこの屑と一緒に、薄汚い化け物らしく無様に死ぬまでの経緯……とかかなぁ……?」

巧「っ、草加……!!」

真司(……お、おい蓮! あいつ、いきなり表れてかなり酷い事言ってるんだけど……本当に巧達の知り合いなのか!?)ヒソヒソ

蓮(……いい意味での知り合いじゃなそうだな……)ヒソヒソ

草加「……まぁいい。今は君にはこれと言って用は無いさ……」

草加「それよりも……俺が今、一番話したいのは…………貴様だ……」プルプル…






————ダッ!!



巧「!?」










草加「木いいぃぃぃいいぃぃ場ああぁぁあぁぁああぁあ!!!!」グワァッ!!





ガシャアァァンッ!!




木場「がっ……!!」




蓮「ッ!!」

真司「えっ……!?」

巧「き、木場ッ!!」

???(A)「え……え?」

396 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:51:17.04 ID:DI66KYoI0


木場「う、ぐっ……! ゲホッ……!!」



ドカッ!!



木場「ぐ、あッ……!?」

草加「……会いたかったよ木場ぁ……!! 凄く、凄く会いたかった……!!」

草加「本当に……よくも……やってくれたなああぁぁあぁッ!!?」ブンッ!



バキィッ!!



木場「ぐっ……!!」

真司「お、おい!! やめろ!! やめろよッ!! 何だよお前!? 何してんだよッ!!」ガシッ!

草加「触るなぁ!!」バキッ!

真司「ぐあ!?」

蓮「! 城戸!」

巧「止せ草加!! もういいだろ!? 木場の話も聞いてやってくれ!!」

草加「黙れぇ!! 薄汚れた、人間の皮を被った怪物どもが!! 話を聞く!? 聞いてどうなる!? 聞けば俺は生き返るれれるのか!?」

草加「貴様等が……貴様等オルフェノクが存在したからッ!! 俺達は、真理はッ!! あんな目に遭ったんだぞ!!」

草加「そして、木場ぁ……!! 貴様が……!! 貴様が俺をッ!! 俺を殺したんだろうがぁッッ!!」

蓮(! 何だと?)

木場「……ッ……」

真司「えっ……あ……!!」




真司(そうだ……昨日、巧が話していた……! もう1人の、死んだ仲間のライダーの話!)

真司(いけ好かない奴だけど、戦いでは信頼できた、木場さんが殺してしまったって言う……! 名前は……確か草加雅人!!)

397 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:53:04.97 ID:DI66KYoI0



草加「貴様のせいだ……!! 貴様が俺をこんな所に追いやったんだッ!! 真理のいない、空虚な世界にぃぃ!!」

木場「…………か、った……」

草加「……!」

木場「……すま……な、かった……!」

草加「…………ぐ、が……ぎいぃいぃ……!!」ビキビキ



バキャッ!!



木場「がッ……グ……!」

草加「『すまなかった』……!? すまなかっただとッ!? なんだそれは……!? ふざけるなァ!! そんな薄っぺらい一言で、許すとでも————!!」

木場「許さなく、て……いい……!」

草加「……何……?」

木場「俺が、君にした、仕打ちは……俺の弱さが招いた……俺の罪だ……」

木場「本当に……申し訳ない事を……したと、思ってる……」

木場「許してほしいから……言ってるんじゃない……本当に、悔いているんだ……」

草加「…………」

木場「君の怒りと憎しみは、当然のもので……俺は、それを全部……受け止める義務がある……!」

木場「それが……罪を犯した俺の、受けるべき……罰だから……」

巧「木場、お前……!?」

木場「乾君……止めないで、ね……これは、俺の問題だ……!」

木場「……俺は、一切抵抗しない……殴りたいだけ、殴ってくれ……!」
398 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:55:14.46 ID:DI66KYoI0


草加「…………いいねぇ。君は凄いよ……自分から進んで罰を受けるって事か……」

草加「素晴らしい贖罪の精神だよ…………まるで人間みたいだ……」

真司「『みたい』って、木場君は……!」

草加「だからこそ!! 油断ならないんだよ……!! オルフェノクってのはなッ!!」ギロッ

草加「そうやって人間のふりをして……油断させて……最後には人間を裏切って、人間を滅ぼそうとするんだもんなぁ……!!」

蓮「…………」

草加「何が『悔いている』……だ……貴様がどんなに悔いたところで……俺はもう、二度と真理には……!!」

木場「…………」

草加「……でもまぁ、殴りたいだけ殴ってくれって言うんだから……」

草加「ご希望に応えてやるよ……!!」グッ

木場「っ…………」ギュッ



パシッ!



巧「!!」

木場「……!?」

真司「蓮!」

草加「……何の真似かなぁ……? これは……」

蓮「その辺にしておけ……今この場において、傍から見て異常なのはお前だ」

草加「部外者が知ったように言うじゃないか……! これは俺達の問題だ。関係ない人間が邪魔をするな!!」

蓮「関係ならある。こいつは一応、この世界で俺と同じ屋根の下で暮らす事になる奴だ」

蓮「別に仲がいいわけでもないが、悪いわけでもない。顔見知りが無抵抗に殴られるのを黙って見ているのは、流石に気分が悪い」

草加「…………」

蓮「これ以上やると言うなら、俺が代わりに相手をしよう。……もっとも、俺の場合は、黙って殴られてやる気も無いがな」

蓮「……さっさとこいつから離れろ。痛い目を見たくなかったらな」

木場「秋山……さん……」

草加「…………」

巧「…………草加……!」

399 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:57:17.22 ID:DI66KYoI0


草加「…………そうか。痛い目を見たくなかったら……か」スクッ…

草加「……その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!!」ビュンッ!



バキャッ!!



蓮「ぐっ……!?」

真司「!? 蓮!? お前っ、マジでいい加減にしとけよ!!」

草加「邪魔なんだよ……俺の思い通りにならないモノは……全てぇッ!!」ダッ

巧「おい、草加!?」

蓮「……いいだろう。こっちが態々譲歩してやったのを突き返したんだ……覚悟はできるな……!!」ポキポキッ

真司「蓮も落ち着けって!! 気持ちはすげぇ分かるし俺も殴ってやりたいけど! ここで喧嘩なんかしてどうすんだよ!?」

木場「そ、そうですよ! 元はと言えば俺が悪いんだ! あなたがそんな事する必要は……!」

蓮「お前達はどいてろ……それに城戸、俺が負けず嫌いな性格なのは、知ってるだろう……!」ズンズン!

巧「草加やめろ!! そいつは関係ないだろ!!」

草加「ハンッ、いい子ぶるなよ乾……!! 薄汚い化け物が、人間の俺に命令するなッ!!」ギロッ



ドガッ!!



草加「うぐぉ!?」

巧「!!」

蓮「余所見とは、随分余裕だな……!」

草加「……貴っ様ぁ……!!」ガバッ



ガンッ!! バキッ!! ゴッ!! パァン!! ……

400 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 20:59:48.00 ID:DI66KYoI0


???(A)「く、草加……!」オロオロ

真司「おい蓮!? 蓮ってば!! ど、どうすんだよこれ……!? おいあんた! コイツと一緒に来ただろう!? 黙って見てないで止めてくれよ!!」

???(A)「……でも、僕、草加とは昨日会ったばかりで、僕の事嫌いみたいだから……邪魔するとこっちまで巻き込まれそうだし……」オロオロ

真司「そんな……た、巧ぃ〜!」

巧「わからない……! どうやって落ち着かせれば……!?」

巧(こいつがこんなに見境なく怒り散らすのなんて初めて見た……普段のこいつだったら、赤の他人が居るところで、自分の印象を悪くするような事はしねぇだろうに……!!)

巧(余りにも頭に来すぎて、自分でもどうにもできなくなってんのか!?)

木場「や、やめてくれ……! やめてくれ2人ともッ!!」




???(C)「やはり、こうなってしまったか」

巧「! だ、誰だあんた……」

???(C)「……相手側に非があるとはいえ、暴力に暴力で対抗していては、ライダーバトルと何ら変わらないぞ、秋山」

蓮「……!!」

草加「貴様……!」

真司「……あ、あぁ……お前っ……!?」

???(A)「手塚さん!」

手塚「また会ったな……城戸、秋山」フッ

真司「て、手塚ぁ!!」ダッ

秋山「手塚……!!」

草加「……口出しする気かよ……手塚ッ……!!」

秋山「! お前、手塚を知って……」

手塚「そこの男は昨夜からの付き合いだ。……草加、そいつは俺の知り合いだ。手を放してやってくれ」

草加「なぜ俺が君の指示に従う義理がある……? 君まで俺の邪魔をしようって言うのかなぁ!?」

手塚「……お前がどうしても自分の感情を優先したいというなら仕方ないが、お前のためにもその辺りでやめておいた方がいい」

草加「……それはどういう意味かな……」

手塚「ここはあらゆる世界の死んだライダーの行き着く世界。こう言えば沢山の人間が居るように感じるが、実際にはそう多くは無い」

手塚「ここにあるライダーの人形を大体見て回ったが、数は全部で20程だ。つまりこの世界に居る者は、精々がその程度の人数と言う事……」

草加「何が言いたい……? はっきり言えよ……!!」





荘吉「その少ない人数で、恐らくはこれから共にここで過ごしていくことになる。お前がここで良からぬ事をすれば、それだけ他の人間がお前に抱く印象は悪くなる」

一同『!!』

402 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:02:21.76 ID:DI66KYoI0


荘吉「人数が少ない分、情報が伝わりきるのも早い……そういう事だ」

手塚「……その通りだ」

草加「何なのかなぁッ……次から次へと……!」

荘吉「俺の事は後でいいだろう。それより、まだ言いたい事があるんじゃないのか。手塚海之」

手塚「! ……お前は、俺の事も天道の事も、信用も信頼もしていないだろうが、それでも俺達にとっては同じ家で一夜明かした仲だ」

手塚「お前がここで孤立してしまうのは、俺としてはあまり気持ちのいいものではない……今は抑えてくれ」

草加「…………チッ」パッ

蓮「…………」

真司「おい、蓮……! お前も手離せって……」

蓮「……フン」パッ

草加「…………」グイッ

巧「……草加」

草加「……忘れるなよ、木場……俺は絶対に、貴様を許しはしない……!!」

木場「……あぁ……」

???(A)「! どこに行くんだよ草加!」

草加「12時にロビーに集まれと言い出したのは俺達だろう。言い出しっぺが誰もいないなんて事は良くないんじゃないかなぁ?」

???(A)「じゃあ、僕も……」

草加「君は後からこいつらと来ればいいだろう。一々俺に着いてこないでくれよ。 迷惑 だからさ」スタスタ

???(A)「…………」





巧「……木場、大丈夫か?」

木場「…………平気だよ……俺が彼にした事を考えれば、まだ甘い位さ」

木場「……秋山さん、本当にすみません……俺のせいで……」

蓮「俺はただ奴が気に食わなかっただけだ。奴が俺に喧嘩を売った。だから買った。それだけだ」

木場「…………」

手塚「相変わらず素直じゃないな。お前は」

蓮「……煩い」


403 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:04:48.85 ID:DI66KYoI0


真司「手塚、お前もこっちに来てたんだなぁ……!」

手塚「……城戸……またお前と会えるとは思っていなかった。元気か?」

真司「おう! もうばっちし! いい奴等とも沢山会えたしな!」

手塚「フッ、そうか……ところで、あんたは誰だ? 俺の名を知っているようだが……」

荘吉「俺の名は鳴海宗吉。私立探偵をやっている。お前の名前はたった今会話に出ていたのを聞いただけだ。まぁ、ライダーの人形で事前に情報を得ていた、というのもあるが」

手塚「……あれには変身者の名は刻まれていても、顔写真のような物は無かったはずだが」

荘吉「俺はここに置いてある人形と、そこに書かれていた内容全てを記憶してある」

真司「えぇ!? あ、あれを全部!?」

荘吉「お前の口から『ライダーバトル』と言う単語と、その存在に否定的な言葉が出た時点で、城戸真司か手塚海之である可能性を睨んでいた」

荘吉「神崎士郎のライダーバトルを止めようとしていたのは、その2人だけらしいからな……」

荘吉「直後に、そこの黒髪の坊主が、お前を『手塚』と呼んだことで、確信した」

蓮(……情報収集の早さと、記憶力の良さ……得た情報を元に観察し、洞察する能力……探偵の肩書は伊達じゃないようだな)

手塚「……そういう事、か。無駄勘繰ってしまったな。すまない」

荘吉「構わんさ……俺のような探偵が来る事は、占いじゃ予測できなかったか?」

手塚「……俺が占ったのは、俺を含む最初の家に居た3人の近い運命を見たのと、今日ここで、どうすれば城戸と秋山に合流できるかを占った、その2つだけだったからな」

手塚「全ての細かな運命も占おうとすればできないでもないが、時間がかかりすぎるし、何より、些細なことまで知りすぎてしまっても、面白くないだろう?」

荘吉「……成程」

木場「……占い……?」

巧「あんた占い師なのか? ……まさか、最初に来たとき言ってた、『やはりこなってしまったか』って……」

手塚「あぁ。昨日占った内容に、大きな建物で仲間と再会できる事と、その際草加がトラブルを起こすと出ていたんだ」

巧「……なんだよそれ……随分ピンポイントな占いだなぁ。本当かよ」

真司「巧、手塚の占い馬鹿にしゃちゃ駄目だぜ……! 本当に当たるんだから!」エヘン!

蓮「お前が威張ってどうする、馬鹿」

真司「馬鹿って言うな!」


406 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:07:32.63 ID:DI66KYoI0


蓮「……鳴海。あんたは俺達の事をどこまで知った?」

荘吉「碑文に書かれている以上の事は何も知らん……だがあれは、それなりに深いとこまで、その人間の性格や経歴を書いてあるからな」

荘吉「お前達にとっての重要な事は大体知っている。もっとも、あの碑文がある限り、俺でなくとも、お前達の事はここに居る誰もが知ることになるだろう……」

荘吉「そして、逆にお前達が他の連中の事を知るのも容易い……勿論、俺の事もな」

蓮「……チッ、有難迷惑な事をしてくれるな……ここの管理人は……」

木場「でも……俺はあれ、嫌いじゃないな……少なくとも、悪意があって作った物とは思えない……」

木場「正直、他の皆について書かれている事も、ちゃんと読んでみたいな、って……」

蓮「…………」

木場「あっ、いや、興味本位で言ってるんじゃないんです! ただ、あれって……俺達がお互いに歩み寄るのに、いい切っ掛けになってくれる気がして……」

蓮「…………どこ誰とも知らん奴に、勝手な見解で書かれた物を鵜呑みされても癪だ」

木場「す……すいません……でも……!」

蓮「……だから、知りたいなら俺に直接聞けばいい。答えられる範囲で答えてやる」

木場「!! いいんですか……?」

蓮「その方がマシだと思っただけだ。代わりに、お前の事も聞かせてもらうぞ。特に、あの草加とか言う奴と、何があったのか」

木場「……はい……!」

巧「……本当に素直じゃねーな」

真司「だろー!? ほんっと厄介な奴だよ!」ハハハ!

蓮「……お前の馬鹿さ加減の厄介さに比べればずっとマシな筈だがな」

真司「こ、の、やろう……!」

蓮「……それはそうと手塚、お前……奴と同じ家なのか」

手塚「……草加の事か?」

真司「! そ、そうだ! あいつ、とんでもない奴だよ!! 巧や木場君に酷い事言うし、いきなり殴りかかるし、止めに入った蓮にまで……!」

巧「……仲間の俺が言うのも何だけどさ……あんた、あいつと一緒にいて、大丈夫か……?」

手塚「問題ない。別に俺と草加の2人きりというわけじゃないしな」

木場「……そのもう一人の住人って、もしかして、そこにいる彼が?」


???(A)「……えっと……」


407 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:08:41.40 ID:DI66KYoI0


手塚「あぁ、そうだ。どこか気弱なところがあるようなので、少し心配ではあるんだが……どうだ、何人か伝えられたか?」

???(A)「……草加が殆ど1人で……あ、でも、ザンキって人には僕が……」

手塚「十分だ。今ここに居る彼等には?」

???(A)「あ……まだだった。あのね……手塚さんの提案なんだけど、12時に、休憩ロビーに、ここに来ている皆で集合しようって……」

木場「休憩ロビー?」

手塚「ここからは少し離れてるな……今時間は?」

真司「……11時56分なんだけど……」

巧「ギリギリじゃねーか!!」

???(A)「ご、ごめんっ……もっと早く言っていれば……!」ビクッ

巧「え? い、いや、別にお前を責めてるわけじゃねーって……お前、名前は?」

???(A)「……僕は……」

手塚「名前は天道総司というらしい。俺が目覚めた家と同じ家に居た、もう一人のライダーだ」

天道「……こんにちは」

真司「天道君、ね! 俺城戸真司! よろしく! 天道って苗字かっこいいなぁ!」

天道「…………そう、だね……」

蓮「そんな事言ってる場合か! 草加の奴は先に行っている! もう勝手に場を仕切って、俺達についてある事無い事言いふらしてるかもしれんぞ……!」

真司「そ、そこまであいつが腐ってるってのか!? そんな奴いるの!? 幾らなんでもそれは……」

巧(……悪い、真司さん……どんぴしゃだよ……)

木場(その光景が容易に想像できてしまう……)


408 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:10:12.44 ID:DI66KYoI0


天道「……急いだ方がいい、よね?」

手塚「だな。皆、少し走るぞ」ダッ

蓮「まったく……!」ダッ

真司「あっ、待てよ蓮! 巧、木場君! 行こう! 天道君も!」ダッ

天道「……うん……」タタタ

木場「は、はいっ」タタタ

巧「俺はさっき向こうから走ってきたってのに……」ハァ

荘吉「…………」ダッ



パタパタパタパタ……




荘吉「……お前、ザンキと会ったのか」

天道「えっ?」

荘吉「ザンキとはこの世界で同じ家から来た。あいつとはどの辺りで会った?」

天道「……ビデオレンタル店があったとこ……ここからは正反対だけど……」

荘吉「あそこか……そうか、わかった」

荘吉「…………ところで、お前の名前だが……」

天道「……何?」






荘吉「何故……ここへ来てまで、コピーした男の名を名乗っている?」





天道「!!!!」ビタッ

天道「な……何で……」

荘吉「……そう驚く必要も無いだろう。言った筈だ、俺はここにあるライダーの人形と、碑文の内容を覚えていると」

荘吉「天道総司というのは、ネイティブワームに改造されたお前が擬態した男の名だ。その顔も、元はその男の顔……」




擬態天道「……ひ……ぅ……!」

409 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:13:15.30 ID:DI66KYoI0



荘吉「…………」

擬態天道「…………だ……だってっ……だって僕は……!!」

荘吉「…………悪かった、今言う必要も無い事だったな……」ポン

擬態天道「……え……?」

荘吉「……お前がここで、どんな名前で、どんな風に生きるか……それはお前の自由だ。お前の好きにしろ」

荘吉「俺はこの事を誰かに言うつもりは無い。だが、碑文の存在がある以上、いずれは誰もが、お前が何者かを知る……」

擬態天道「……!!」



巧「おーい! 何やってんだあんたら!」タッタッタッ

真司「置いてっちゃうぞー!」タッタッタッ



荘吉「……また後で話そう。行くぞ、坊主」ダッ

擬態天道「…………」パタパタ…






擬態天道(…………どうしよう……どうしようっ……! ここで、天道総司じゃないって皆に知れたら……)

擬態天道(僕はもう……誰でもなくなっちゃうよ……!!)

411 : ◆23kuydWW26 [saga]:2016/08/17(水) 21:18:32.35 ID:DI66KYoI0

ここまでです。

亀執筆とはいえ、もうちょっと文字量増やしたいな……


ところで仮面ライダーマッハ/ハート予告来ましたねヤッター!
そしてまさかのチェイスのガチ復活フラグ来たねやだぁぁぁーー!

いや、ファンとしてはチェイスがまた剛と会えるのは凄く嬉しいんだけどね。
まぁスレに組み込めそうな内容だったら組み込んで、無理そうだったらもうパラレルって事で(思考停止)




転載元:

【仮面ライダー】乾巧「どこだよ、ここ……」チェイス「あの世、ではないのか」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1459061989/